鮎釣り師ガバチャのひとり言

釣りあげた鮎で仲間と酒を飲む   これ人生のユートピア!


    2009年12月

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     ファッションにはTPOがある。天才バカボンのように浴衣に運動靴を履いていたら笑われるだろう。

     だが、去年の冬その天才バカボンのパパにしてやられた。ドンキホーテで買ったバカボンパパのジャージにだ。

     インフルエンザ並みにきついウイルス性腸炎でうなされ、意識もうろう状態でそこいらにあるものを着て医者に向かった。体温を計ると39度メラメラ うわーと顔をしかめる看護婦さん。ふらつくボクにお年寄りたちも驚いている。

     が、なんとなく。なんとなくだが、ちょっと笑ってるような気配を感じる。お年寄り達もヒョエヒョエとボクを見て。診察の女医先生もクスクスッと。
     帰り、看護婦さんから薬をもらって背を向けたら「ガバチャさんお大事に~」の語尾がヒョエッとしゃくっている。

     なんだよ人の不幸を、と思っても怒る元気もない。
     ふらふらと家に帰り着き洗面所でうがいをしていて気がついた。

     「あ、なんやこれぇ」よりによってバカボンパパのジャージ着て行ったんかえっ

     写真のとおり、背中にはデッカク「これでいいのだ」と書かれてある。いいわけはない。39度でゆでだこみたいにふらふらしてんのに、これでいいわけないんだよ! と、ジャージを脱ぎ捨てたが、やっぱり「これでいいのだ」と広がってしまった。

     ガバチャも天才一家にはかなわない。バァーカボンボン音譜







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     指折り数えたらわずか7年前のことだ。
     若いのに調べ物をさせたらネットで探したと言う。ネットってなに? と訊くとパソコンですと答える。なんだ、最近はパソコンのことをネットと言うのか、とその若者に速攻レクしてもらい幹部会議に走り込んだ。

     渡された印刷どおりに説明。
     なかなか詳しいじゃないか、と皆から言われエッヘン状態。
     で、何で調べたのかね? と訊かれ、YAHOO!を・・・・・・ヤッホーです、と読んだ。

    「ヤッホー? なんだねそれは」と幹部。
    「ソフトの、あ、いやプログラムの名前です。あのヤッホ~(口に手を添えて)みたいな感じで調べたら直ぐに返ってきます。打てば響くみたいに。へへ」とボク。

    「な、なるほど」と幹部。
    「別名、検索・・サッチーとも言います」(確かさっきあいつがそんなこと言ってたな)
    「検索サッチー?」
    「ええ」
     と言いつつも、森田健作とサッチーが一緒になったみたいな変な名前で、やっぱ検索サーチンだったか? と思い直したが、そっちの方がもっと変だと思い、まぁだいたい当たっていればいいかと言語明瞭意味不明で突っ走った。

     ネットのサッチーのヤッホーでと、口角泡を飛ばし会議は終わった。
     ボクの株は上がった、かに見えた。

     職場に戻ってありがとう、と同じことを言ったら若い連中が爆笑する
    にひひ マジッすか? と、すかがついたら敬語らしい。マジも魔女もあるか、あたりき車力のヤッホーよ。とやったら、ヤフーですよと笑うにひひ
     覆水盆に返らず。

    「や・やぁふぅ~って・・・・・・そんな間の抜けた呼び方はないっ。ヤッホーでいい。歩くグローバルスタンダードとはこのオレだ!」と啖呵を切ったが、世界が許してくれなかった。
     YAHOO! はやっぱりヤフーだむっ

     くしょー、ヤッフ~でどうだ、と折衷案を模索した。が、これ以上意地を張ると職場の隠居部屋にぶち込まれるので観念した。

     後日、ヤッホーよりグルグルGoogleの方がくわしいぞぉ! と息巻く同輩を見て、上には上がいるものだと思った。




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     若い頃はクロコダエルなど胸にブランドマークのある服をよく着ていた。結婚したらどうでもよくなって、スーパーの980円トレーナーなどにしていた。
     子育てで目の回る毎日、子供がザリガニをほしがったので飼うことにした。小さな水槽に2、3匹だったと思うが、子供がうれしがって割り箸などでつっついていたのは覚えている。

     その出来事のあった朝もボクは子供二人を自転車の前後に乗せて保育所に向かった。いつもどおり先生が笑顔で子供を迎えてくれる。
     子供の肩に手を置いてしゃがむ先生。その笑顔がスーッと消える。視線がボクの左胸のところでピタリととまった。

    「あらぁ、それなんですのん?」
     といぶかしげに先生。やおら鼻先を近づけるなりビッ、ビェ~と悲鳴を上げた。

    「な、なんすか」とボクも胸元に視線を落とした。
    変なものがトレーナーの胸ついている目

     手のひらで鼻を押さえて顔をゆがめる先生。
     よく見るとハサミを上げたエビがついている。立体なのでブランドマークではない。

    「ははっ、最近エビ食べたっけぇ」
     とひとり言を言って、ボクはその殻をピンッと指ではじき飛ばした。ら先生、キャアと短い悲鳴をあげて逃げていった走る人


     晩、帰宅したらザリガニがいない!えっ

     現場検証の結果、朝はじき飛ばしたブツはザリガニさまと判明。
     水槽から割り箸をつたって逃亡したザリガニは床に投げ散らかされた洗濯物に潜伏。その後洗濯機にかけられ乾燥機にかけられ、翌朝980円トレーナーのブランドマークになったのである。

     哀れザリガニさま。

     その後ザリガニのいなくなった水槽には小亀が入れられたのだが、小亀のブランドマークだけは絶対にほしくないと思った。





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     地名は伏せよう。
     二十年ほど前、和歌山県のとある岬に友人4人でクエ鍋旅行に行った時のことだ。

     開宴に唇のぶ厚いクエかと思われる中年仲居が現れた。
     鍋も煮たり宴もたけなわ、小皿もチントテ鳴りやまぬ頃。頬赤らめた仲居が、「実はあたし妾の子なんよ」とポツリ言った。一同クエさま、いや、仲居さまの方を振り向く。

     仲居は時折声を詰まらせながら、不遇な身の上をつむぎ語った。ゴーゴーと岬に立つ鄙びた宿を風が打つ。お父さんに会いたい、その一心なリアリズムが4人を圧倒する。母から聞かされた父の具体的な仕事の話に及んだ時、首をしきりにひねっていたYさんが顔を上げた。

    「そ、それって○○さんとちゃうんか」
    「ええっ! 知ってはんのん」
     と、仲居のクエぐちがパックリと開いた。

     まさか・・・・・・。
     世間は狭い。

     後日、Yさんからその話を聞かされた○○さんは、はばからず嗚咽したという。よわい七十の○○さんに、彼女との想い出が深々と去来したのだろう。

     ボクは思った。
     結ばれた絆とは、ただ結ばれているだけでなくいつかたぐり寄せるためにあるのではないのかと。





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     早春に桃の花を見ると思い出す。
     小学校の卒業式を。
     
     桃の花、匂う三月、おなごりはつきません・・・・・・。
     ボクの小学校では卒業式で六年生を送る言葉を、下級生が台詞をつないでやっていた。
     
     ボクの台詞は「おなごりはつきません」のところだった。
     練習の時ちゃんと聞いていなくて、どんなんやったっけーと「おらげりはつきません」とか適当に言ったら、ブー教頭から「こらぁオナゴリ、ちゃんと言わんかぁ!」とドス声で叱られたガーン
     ボクはオナゴリと呼ばれ何度も練習させられた。

    「声が小さーい」と言われたので、快活に「おなごりはつきませーん!」と大声でやったら「そんなに元気に言う言葉じゃなーい」とブー教頭がまた怒鳴る。
     ボクはブー教頭に恐る恐る聞いてみた。

    「あのぉオナゴリってどんな意味ですか?」
     ブー教頭は目を剥いて「ええ、意味ぃ、ん~意味はなぁ・・・・・・おい、誰か教えたったれ」と周りにいた先生に振った。

     先生の1人が「えーと、別れは悲しいけど悲しそうに別れないことだよ」とか言って自分で首をかしげていた。子供のボクにはやっぱりよく分からなかったが、コワイ上級生がいなくなって嬉しいだけなのになんだと思った。

     翌年、ボクたちが送られる時、オナゴリに当たった下級生がブー教頭に同じようにいじりたおされていた。

     あんなの、小学生の使う言葉じゃない。
     そんなあの頃に、おなごりはつきましぇ~ん
    べーっだ!




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