鮎釣り師ガバチャのひとり言

釣りあげた鮎で仲間と酒を飲む   これ人生のユートピア!


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     まだ携帯電話が珍しい頃、スナックなんかで見せるとよくモテた。
     ある日のスナック帰りに、ジャンパーを忘れたことに気がつきヨシッと運転手に見せるように大げさに携帯を取り出しママに連絡。

    「あーママ、ママ」
     ママは眠そうにウンといった後「どいたがぞね夜中に」と、いきなり土佐弁を返してきた。

     はて? ママさん高知県出身やったっけ、と思った瞬間気がついた。声の主は自分の母に違いない。午前1時、短縮ダイヤルの押し間違い。スナックではなく実家につながっていた叫び

     「間違いでしたか。いやー私もよくありましてねぇ」と運転手。
     ちっともフォローになってねえって。そんじょそこらの間違いじゃねえもの、と顔面火だるまのボクメラメラ

     翌日、母から電話で夜遊びが過ぎるとしこたま叱られ、そばにいた家内に笑い転げられた。恥ずかしげもなく田舎のおかあちゃんを「ママ」などと呼んだのは後にも先にもこのとき限りである
    ガーン




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     15年ほど前、徳島市の津田と言うところで4年間暮らしたことがある。
     木造平屋の古い社宅だった。

     入居した数日後、夜中犬の鳴き声がするので見たら軒下で野良犬が子供を生んでいた。その数日後、今度は倉庫で猫が鳴くので見たら子供が生まれていた。すごいところだと思った。

     家族四人で夕食を食べていたら家内が突然悲鳴を上げる。見たらボクらの周りをネズミが走り回っていた。
     ある日、買ってきたばかりのまんじゅうと食パンが忽然と消えていた。それが押し入れの中でかじられて発見された。

     ぼくはただごとではないと、ホームセンターに行き超音波式ネズミ撃退機を買った。だが、いっちょも効いた感じではない。コードが抜けてないか確かめに行ったらコードがかじられて切断されていた。屋根裏は連日ネズミの運動会である。子供は二人やんちゃな盛りで、ボクは賑やかでよかろうとむしろこんな生活を楽しんでいた。

     共働きをしていたのでボクが子供の迎えに保育園に行くことがあった。
     七夕が近く笹の葉に綺麗な飾り付けがしてあって、お迎えの奥さん方が談笑している。笹の葉の短冊には、子供が大きくなったときになりたいものを子供から訊いて先生が書き留めてものが結ばれていた。

     ケーキ屋さん、野球選手、ウルトラマンなどと子供らしいことが書かれている。
     ボクは息子の短冊を探した。あった、と見つけて絶句した

    「大きくなったら大きなネズミになりたい」
     と書かれてある叫び 先生が苦笑しながら、何度聞いても大きなネズミになりたいと言ってきかなかったという。そばにいた奥さん方も大爆笑だ。

     ボクは赤面したまま背中を丸めて息子の手を引いた。

     それから一年たってまた同じ七夕の季節がやってきた。
     迎えに行ったボクに昨年のワンシーンが去来する。

     またなんかへんなこと書いてんじゃないのかと思っても見ないわけにはいかない。
     と、若い先生が寄ってきて「今年は良かったですよ」と笑顔で笹の中から息子の短冊を見せてくれた。

     そこには「大きくなったら大きなおさるになりたい」と書かれてあった。
     うぇ~と声を上げると、そばにいた奥さん方がまた笑う。

     だが、よくよく考えてみると、一年でネズミから直立二足歩行のお猿さんにまで進化したのだ。
     この速度だったら来年はきっと人間になってるぞ、と頼もしく息子の手をひいて胸を張って保育園を後にした。

     ボクにとっては宝物のような想い出である。
    音譜



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