鮎釣り師ガバチャのひとり言

釣りあげた鮎で仲間と酒を飲む   これ人生のユートピア!


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     二年前の冬。
     出勤時にローソンに寄ったら写真の雛メジロがドアの前にうずくまっていた目

     触っても動かない。出てきた店員さんも「寒すぎるからかな」と心配顔。
     思案の途にいつか見たドラ猫が思い浮かんだ。おまえ食われるぞ、と車にあったタオルを取り出しメジロをくるんだ。

    「どこか暖かいところに放してあげるわ」と店員さんに言ってメジロを助手席に乗せた。 ヒーター全開、怒鳴るようなケツメイシの音量を絞る。

     でっかい布団から頭だけ出したメジロに「メジ郎」でいいか、と見つめると首をチョイとひねった。

     職場につくと段ボールで巣をこしらえ、コンビニ弁当の具を溶いて離乳食をつくると、陽当たりのよい休養室にメジ郎をおさめ仕事についた。

     やっと昼休み。

     だが、メジ郎はいなかった。
     清掃のおばちゃんに訊くと、メジ郎は元気よく空に舞い上がったとのことだった。

     戸を開けると日向の植木で野鳥らが群れ遊んでいる。まあここならドラ猫もいまい、とメジ郎にお裾分けしたコンビニ弁当を広げた。

     メジ郎、世の中厳しいけど元気でな。


    鮎釣り師のひとり言


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     盛夏、和歌山県有田川の前川橋上流で恍惚の人を見たことがある。

     その人はボクの少し上の瀬で釣っていた。鮎にはよく釣れ出す時合いという時間帯がある。その時合いがきたかという時、突然大声がした。

     振り向くとその人が荒瀬でもがき流されている。
     慌ててボクら数人が救出に入った。何とか浅瀬に到達し運良く竿も回収。見るとけっこうなご老人だ。
     水を飲んだのか何度も咳き込む。が、直ぐに礼を言うとスタコラともとの場所に戻っていった。

     皆が驚いたのはその後だ。老人は全裸になると濡れた着衣を木に干し、麦わら帽子だけかぶった。
     まっ、まさかガーン

     皆が注目する中、釣り竿を伸ばしさっそうと石に飛び乗ると丸裸で前のめりに竿をかまえた。その足腰には、さっきのアザがすみれ色に浮き上がっているではないか。
     とがめようと釣り人のひとりが老人に近づいた。

    「今が時合いじゃて!」と老人一喝ドンッ
     ボクはとがめようとした人の手を引いて首を横に振った。それは俗人が近づくなど許されぬ恍惚の人なのだよと。

     筋張った赤銅裸体、その躍動が炸裂した太陽に黒びかりする。恍惚とは美なり、と異様なオーラが周囲を包んだ瞬間だった。

    「ほりゃ鮎が掛かっちゃ~!」
     と老人の奇声。

     竿がブン曲がる。前川橋から大きな笑い声。
     老人はかまうことなく股をおもいっきり割って竿を繰る。

     これぞセクシャル・バイオレット・ナンバーワン!
     おしりについたすみれ色のアザが水滴をはじくのを見てボクはプーと吹き出すとヒクヒクッと腹を抱えてうずくまってしまった。

     鮎釣り、それは時として人に魔性の趣を引き合わせることがある。
     ボクもとくと肝に銘じておこう。





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