鮎釣り師ガバチャのひとり言

釣りあげた鮎で仲間と酒を飲む   これ人生のユートピア!


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     雨で冷え切った体を、西日本最大の露天風呂、渡瀬(わたらせ)温泉で温めた。
     露天風呂を渡り歩くと、垣根の向こうから黄色い女性の声が聞こえる。

     塀の向こうは女風呂か。
     と、前を歩く年配のおじさんが何を思ったか立ち止まる。

     すると塀に近寄り、口笛でホーホケキョとウグイスの鳴き真似を始めた。
     ははぁん、塀の向こうの女性らにウグイスが来たのかと思わせて、小窓を開けさせる魂胆だな。

     お尻のたるみからしてかなりの年配。
     七十にして矩(のり)をこえず、は高齢化社会の到来で死語になったようだ。

     おじさんは小雨が舞ってもウグイスを止めない。
     丸裸なんで早く進んでもらわないと寒いのですが、とおじさんを見ていると。

     ホーホケキョ、ホーホケ、ホケ・ホェ・・ホェックショーン!!
     と大きなくしゃみ。

     ど、どんなウグイスやねんガーン
     塀の向こうの女性らはどう思われたのでしょう、かね。

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     さて、どこに泊まるか。
     と考えて思い浮かんだのが、マドンナさんのおとり屋に張ってあったこれ。

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     行ってみると黎明期とは思えない賑やかさの中華料理屋さん。
     二階に和室があり宿泊所になってます。

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     さっそくすきっ腹に餃子とビールをかきこむ。
     おー、五臓六腑がグルメのリズムに沸き踊るにひひ

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     本日のおすすめメニュー、鳥の唐揚げ。
    ホワホワにおいしくて、羽が生えて飛んでいきそう合格

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     マドンナさんのおすすめの焼きそば。
     目の前に置かれた瞬間、食指がピクリ動いた。

     連動してパクリと空いた口に細麺をかきこむ。
     う、旨・・・人類ならず麺類のDNAが目を覚まし類人麺になっちまいましたにひひ

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     日本酒も入って酩酊寸前。
     リミッターのはずれる前にと、わずかに残った自律的思考回路を駆使し、二階への階段を獣(けもの)のように這い上る。

     部屋についたらそっこう爆睡。
     朝起きると、こめかみが痛い。

     ありゃりゃ、めがねをかけたままどしたぁ。
     にゃっ、こめかみに彫刻刀で彫ったような跡がついているド叫び

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     こめかみをさすりさすり、さて、今日はどこでリベンジするか。
     と谷口おとり店に行ってマドンナさんに教えを請う。

     「ガバチャ~ン、あそこ・・あそこ攻めたらぁ~ん」
     と、マドンナさんの耳元での甘い囁きにドキンッドキドキ

     なぬ、昨日昼から三十数匹もかかったってぇ。

     「ガバチャ~ン、なんでもテクニックじゃなくてポイントよ~ん」
     ドキンッドキドキ ポッ、ポイントって。

     うーんどこどこ。
     と、ズキズキうずく好奇心を思いっきりアクセルに任せて愛車をぶっ飛ばかした爆弾

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     瞬きもせず到着。
     わぉ・・・、ス、ストレートすぎるぜ!!

     マドンナさんから妖しく耳打ちされた釣りポイントが「耳打橋」なんて目

     果たして、バッファローのごとく土草を蹴り上げ、河原への小道を駆け下りるガバチャに爆釣の女神は微笑むのか・・・。

     あたーっ、滑りコケたガーン

     で、明日につづく。

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     ガバチャの泊まった中華黎明はこちらダウン

    より大きな地図で 古道の宿  中華黎明(れいめい) を表示

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     古来より熊野詣として親しまれてきた和歌山最果ての地に、鮎釣り師の心をつかんでやまないマドンナさんという女神がいる。
     ボクの自宅から130キロメートルもの遠方。

     ボロロンボロロ~ンとうなるダイハツムーブのエグゾーストノート(排気音)が、まるでマドンナさんを恋しがっているようでもある。
     てな感じで、二枚目のふりしてマドンナさんのもとに到着。

     別に三時間かけて散髪に来たんじゃない。
     ここが、谷口おとり店。

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     「あら、ガバチャ」
     と、さっそくマドンナさんのマシンガントークに射抜かれ、危うく鮎釣りに来たことを忘れかかっていた。
     ら、ガバッといけすの蓋が開いた。

     デ、デカッ、このいけす。
     ボクがそのまま泳げるって。

     おとり鮎のことを「友」という。
     これから、ガバチャに鼻カンを通され荒瀬で引き回される「友」は、この大きないけすの中で待っていた。

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     去年はマドンナさんの手の写真が掲載されただけでアクセス数が200アップした。
     今年はこの写真でアクセス数400アップは間違いなし。

    「たくさん釣ったらこの冷凍庫でカチンコチンにしてあげるから」
     とマドンナさんの妖艶な眼差し。

     なるへそ、一泊の釣り客にはありがたい冷凍スペシャルサービス。名付けて「マドンナのカチンコスペシャル」を受けたいおっちゃんは、嫁はんを・・イヤ、古着を質に入れても谷口おとり店に直行すべし。

     ただし一匹も釣れなかったら、散髪屋さんだけにバリカンで丸ボウズにされる可能性もありなのだが・・・。

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     日本昔話にでも出てきそうな、熊野川支流の四村川の風情。
    「ばっさま、おらぁー鮎が釣りてえだぁ」

     と、すかし声でひとりモノマネをやったら、突然たたきつけるようなスコールに打たれて退散~。

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     さらに上流に移動。
     眼下にアメ色の岩盤発見。

     おおっ、きらりきらりと良型が腹を返しているド。
     よだれ垂らして、突撃ラッパのパンパカパーン。

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     腰まで浸かって竿を伸ばし、グイグイッと岩盤におとり鮎をはわせたらいきなりゴン、ギューンッだ。
     鮎竿が一瞬で上弦の月に弧を描いた。

     腰を落として瀬を探る。
     ええいっ切れるがままよ、と強引に抜いたらドスンとタモ網の底に飛び込んできた。

     見ると、背びれの伸びたナイス美鮎。
     よーしっ、と大宇宙のどん底で全細胞が跳躍モードに突入だ。

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     ところが、その後アタリが続かずポロリポロリと涙鮎。
     最後は木の枝に絡んで仕掛けも鮎もボロボロに。

     結局昼から3時間も粘って5匹でした。

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     ずぶ濡れで川から上がると店のおばあちゃんが「どうでしたか」と訊く。
     ボクは「五匹でした」というかわりに「夕食にでもどうぞ」と釣った鮎を差し出した。

     「ええんですか、せっかく釣ったのにいただいて」
     と眼を細めるおばあちゃん。
     
     「あの、せめてお名前だけでも」
     「いや、自分はただの旅の通りすがりですから」

      と、高倉健さんのような渋いやりとりは・・・・、全くなかった。
      家の奥に消えたおばあちゃん、直ぐにニコニコ顔でお皿を持って現れる。

     ま、一日一善だよ。と、ちょいと清々しい気分になって店を後に。
     おなかが鳴ったので、また日本昔話調で「ばっさま、おらぁ腹がへっただぁ」とやったらたたきつけるようなスコールが落ちてきた。

     このモノマネは、天に受けが悪い。

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     さて、どうするか。
     疲労こんぱいで和歌山まで帰る気力もない。

     このままバスに乗ってどこか温泉にでも行きたい気分。
     う~ん、砕かれし夢のかけらを拾い集め、鮎釣り師はまた顔を上げる、と。

     よし、今日は泊まろう。
     マドンナさんの近くで宿をとって、明日リベンジして帰ろう。

     そう決めたら、なぜか突然雨が上がった。

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     マドンナさんのいる谷口おとり店はこちら。

    より大きな地図で 谷口おとり店 を表示

     で、明日につづく。
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