近所の喫茶店に出かけた。
紅茶とショートケーキのイチゴを頼んで持参したモバイルパソコンを広げる。
たまにはブログの記事を違う場所で書くのもいい気分だとキーボードをゆっくりと押した。
前方に中年の女性
が座る。
テーブルはひとつ違うがたまたま向かい合わせとなった。
しばらくして気がついたのだがその女性がボクの方を見ている。
まぁちょっと見ているだけかなと思って何気なく顔を上げたらやっぱり見ている。
あまり見るのでひょっとしたら知り合いかと思ったが、見覚えのある顔ではない。
だが、やはりその女性はボクが何気なく目を合わせるとにこやかに視線をそらす。
まぁこれもキムタク並みにモテるボクの宿命かとナルシストで放っておいた。
この日ボクの格好はしゃれたボタンダウンのシャツ。
ボタンダウンはかっこいいが襟元が立って実際窮屈だ。
俯くと頬にまで当たる襟を何度も下げながらブログの記事を考えた。
やがて席を立つ彼女。
気にとめるほどの事でもない日常。
その女性の微笑みの謎は帰宅して判明した。
家に帰ったら家内がボクの方をじっと見る。
こいつに今更見られても仕方がない。
と思っていると、家内が首を突き出してボクのある一点に目をとめながら近寄ってくる。
「あんたどっか行ってたん」
と家内。
「ああ、近くの喫茶店よ」
「ぶっ、その格好で」
「な、なんよ」
とボクは自分の服を見下ろした。
別に変わったところはない。
「ふーん」
と言ってにたつく家内。
「な、なんよ」
「鏡見てみなさいよ」
げっ
鏡台の前に立ったらシャツのボタンが一段ずれていた
苦笑する家内の横で、なんだか自分がすごく間抜けに思えた。
キ、キムタクのつもりが、キムタコになってしまっていた
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紅茶とショートケーキのイチゴを頼んで持参したモバイルパソコンを広げる。
たまにはブログの記事を違う場所で書くのもいい気分だとキーボードをゆっくりと押した。
前方に中年の女性
が座る。テーブルはひとつ違うがたまたま向かい合わせとなった。
しばらくして気がついたのだがその女性がボクの方を見ている。
まぁちょっと見ているだけかなと思って何気なく顔を上げたらやっぱり見ている。
あまり見るのでひょっとしたら知り合いかと思ったが、見覚えのある顔ではない。
だが、やはりその女性はボクが何気なく目を合わせるとにこやかに視線をそらす。
まぁこれもキムタク並みにモテるボクの宿命かとナルシストで放っておいた。
この日ボクの格好はしゃれたボタンダウンのシャツ。
ボタンダウンはかっこいいが襟元が立って実際窮屈だ。
俯くと頬にまで当たる襟を何度も下げながらブログの記事を考えた。
やがて席を立つ彼女。
気にとめるほどの事でもない日常。
その女性の微笑みの謎は帰宅して判明した。
家に帰ったら家内がボクの方をじっと見る。
こいつに今更見られても仕方がない。
と思っていると、家内が首を突き出してボクのある一点に目をとめながら近寄ってくる。
「あんたどっか行ってたん」
と家内。
「ああ、近くの喫茶店よ」
「ぶっ、その格好で」

「な、なんよ」

とボクは自分の服を見下ろした。
別に変わったところはない。
「ふーん」
と言ってにたつく家内。
「な、なんよ」

「鏡見てみなさいよ」

げっ
鏡台の前に立ったらシャツのボタンが一段ずれていた

苦笑する家内の横で、なんだか自分がすごく間抜けに思えた。
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03の着信表示
-
- カテゴリ:
- ガバチャのエッセイ
ケータイの03の着信表示に誰かと思って出たら日本文学館の者ですとのこと。
「中川ガバチャさんでございますね」
「あはい」
「おめでとうございます。今回応募いただいたエッセイが一次選考を通過しました」
「あはい」
「今回730点の中からみごと50点の中に選ばれました。審査員から非常にユニークな作品だと評価されています」
「あ、どーもありがとごんす」
昨年末、随筆春秋社では「大きくなったら」が十傑には入ったものの賞金は逃してしまった。
また、文芸思潮のは「紀ノ川の鮎」が二次選考まで通過して惜敗した。
今回の「夕食の団らんで」がどこまで行くのか楽しみなところ、だがやっぱ途中でコケるかな
いずれの作品も鮎釣り師のひとり言の過去記事。
だから、鮎釣りのかたわらひとり言をつぶやくのもバカにはならないなぁと思う今日この頃です

鮎釣り大会の予選突破みたいな感じ
惜しいところでコケた文芸思潮の惜敗をリベンジしたいよな
「夕食の団らんで」
長男が小学校三年生ぐらいの頃の話だ。
家族四人で夕食のカレーライスを食べていた。
「ねえねえ、お母さんどうしてお父さんと結婚したの?」
と長男がスプーンを忙しく動かしながら訊いてくる。
家内との馴れ初めを訊くなんてこのガキもうませてきやがったのか、とボクは口元を緩めた。
家内も少し気恥ずかしそうに気の利いた返事を探している様子だ。
だが、次の長男の言葉にボクらは絶句した。
「趣味わるいで」
えっ!
「お父さんと結婚するなんて、お母さんメッチャ趣味悪いで」
なっ・・・・・・、ボクはスプーンをカチャリと皿に置いた。
「ねえねえ、シュミィって何ぃ?」
と小学校一年の次男まで訊いてくる。
「そ、そんなんまだ知らんでええわいっ」
とボクは憮然と返した。
家内が食べていたものを吹き出しそうになって慌てて口に手を当てる。
相手は子供だ、おさえておさえてと心のハト派がボクをなだめた。
一方で、てめえに言う権利はねぇ! と心のタカ派が捨て台詞を言って消え去った。
長男は何食わぬ顔でカレーをカチャカチャ食べ続けている。
家内は口元を押さえたまま体をしゃくって笑い続けた。
ボクは瓶詰めのらっきょうを空けると二つ三つ口に放り込んだ。
その時の鼻を刺すような甘酸っぱい味が、思い出すたびに今でも口に広がる。
こんどはこれで書いてみようか
へへへ、ある方からいただいたペンでした。
ちびまるこちゃんの作者がデザインしたウサギとのことです。
これで書いたら楽しい作品に仕上がるかもね
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「中川ガバチャさんでございますね」
「あはい」
「おめでとうございます。今回応募いただいたエッセイが一次選考を通過しました」
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「今回730点の中からみごと50点の中に選ばれました。審査員から非常にユニークな作品だと評価されています」
「あ、どーもありがとごんす」

昨年末、随筆春秋社では「大きくなったら」が十傑には入ったものの賞金は逃してしまった。
また、文芸思潮のは「紀ノ川の鮎」が二次選考まで通過して惜敗した。
今回の「夕食の団らんで」がどこまで行くのか楽しみなところ、だがやっぱ途中でコケるかな

いずれの作品も鮎釣り師のひとり言の過去記事。
だから、鮎釣りのかたわらひとり言をつぶやくのもバカにはならないなぁと思う今日この頃です


鮎釣り大会の予選突破みたいな感じ

惜しいところでコケた文芸思潮の惜敗をリベンジしたいよな

「夕食の団らんで」
長男が小学校三年生ぐらいの頃の話だ。
家族四人で夕食のカレーライスを食べていた。
「ねえねえ、お母さんどうしてお父さんと結婚したの?」
と長男がスプーンを忙しく動かしながら訊いてくる。
家内との馴れ初めを訊くなんてこのガキもうませてきやがったのか、とボクは口元を緩めた。
家内も少し気恥ずかしそうに気の利いた返事を探している様子だ。
だが、次の長男の言葉にボクらは絶句した。
「趣味わるいで」
えっ!
「お父さんと結婚するなんて、お母さんメッチャ趣味悪いで」
なっ・・・・・・、ボクはスプーンをカチャリと皿に置いた。
「ねえねえ、シュミィって何ぃ?」
と小学校一年の次男まで訊いてくる。
「そ、そんなんまだ知らんでええわいっ」
とボクは憮然と返した。
家内が食べていたものを吹き出しそうになって慌てて口に手を当てる。
相手は子供だ、おさえておさえてと心のハト派がボクをなだめた。
一方で、てめえに言う権利はねぇ! と心のタカ派が捨て台詞を言って消え去った。
長男は何食わぬ顔でカレーをカチャカチャ食べ続けている。
家内は口元を押さえたまま体をしゃくって笑い続けた。
ボクは瓶詰めのらっきょうを空けると二つ三つ口に放り込んだ。
その時の鼻を刺すような甘酸っぱい味が、思い出すたびに今でも口に広がる。
こんどはこれで書いてみようか

へへへ、ある方からいただいたペンでした。
ちびまるこちゃんの作者がデザインしたウサギとのことです。
これで書いたら楽しい作品に仕上がるかもね

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お弁当の主役
-
- カテゴリ:
- ガバチャのエッセイ
小学生の遠足の時、弁当が惨めだったことがある。
空けてみると、白ご飯に卵焼きだった。
みんなワイワイと彩りのある巻き寿司や果物の入った弁当を広げて食べている。
ボクは一段高い岩場に腰を掛けると弁当箱を覆い隠すように持って口に思いっきり詰め込んだ。
おそらく母は日雇いの仕事疲れで寝込んでいたのだと思う。今から思うと相当無理をしてつくってくれたのだろう。
ボクの家は田舎でも貧しい方だったので、いつも遠足の弁当は湯鬱だった。
いつか上級生から「おまえの弁当、どかたの弁当」と冷やかされて傷ついたこともある。
唯一赤いウインナーがボクの気持ちを慰めてくれたのだが、この日は買い出しにも行けなかったとみて完全に大きな卵焼きが主役を張っていた。
と言うか、主役しかいなかったような気がする。
それでも、口いっぱいに詰め込んだ卵焼きがじわっとほぐれるとボクは落ち着いた。
甘い。
母の卵焼きはほんのり甘く柔らかく、そして暖かい。
ボクは杉林の稜線に囲まれた狭い空を見上げ、いつまでもモグモグとその味を楽しんだのを覚えている
それが、この日曜日にその味に匹敵するような卵焼きを発見した
メッサオークワ ガーデンシティ和歌山。
当社従業員が考えたお弁当、398円。
ひょっとしたらボクと同じような思い出を持つ従業員さんかもしれない。

このお弁当も卵焼きが完全に主役を張っており、鮭は脇役に追いやられている

これこれこの卵焼き~、ほんのりちょっぴり甘いのがノスタルジアを呼び覚ます

鮎釣りに来て食べるお弁当はまた最高

卵焼きで童心に帰ったガバチャ、無邪気にはじけて56匹掛けました
有田川中央大橋の真下で。
やはりこの鮎は、高知の母に送ってあげましょう。

当時、こんな歌が流行ってました
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空けてみると、白ご飯に卵焼きだった。
みんなワイワイと彩りのある巻き寿司や果物の入った弁当を広げて食べている。
ボクは一段高い岩場に腰を掛けると弁当箱を覆い隠すように持って口に思いっきり詰め込んだ。
おそらく母は日雇いの仕事疲れで寝込んでいたのだと思う。今から思うと相当無理をしてつくってくれたのだろう。
ボクの家は田舎でも貧しい方だったので、いつも遠足の弁当は湯鬱だった。
いつか上級生から「おまえの弁当、どかたの弁当」と冷やかされて傷ついたこともある。
唯一赤いウインナーがボクの気持ちを慰めてくれたのだが、この日は買い出しにも行けなかったとみて完全に大きな卵焼きが主役を張っていた。
と言うか、主役しかいなかったような気がする。
それでも、口いっぱいに詰め込んだ卵焼きがじわっとほぐれるとボクは落ち着いた。
甘い。
母の卵焼きはほんのり甘く柔らかく、そして暖かい。
ボクは杉林の稜線に囲まれた狭い空を見上げ、いつまでもモグモグとその味を楽しんだのを覚えている

それが、この日曜日にその味に匹敵するような卵焼きを発見した

メッサオークワ ガーデンシティ和歌山。
当社従業員が考えたお弁当、398円。
ひょっとしたらボクと同じような思い出を持つ従業員さんかもしれない。

このお弁当も卵焼きが完全に主役を張っており、鮭は脇役に追いやられている


これこれこの卵焼き~、ほんのりちょっぴり甘いのがノスタルジアを呼び覚ます


鮎釣りに来て食べるお弁当はまた最高


卵焼きで童心に帰ったガバチャ、無邪気にはじけて56匹掛けました

有田川中央大橋の真下で。
やはりこの鮎は、高知の母に送ってあげましょう。

当時、こんな歌が流行ってました

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鮎釣り師のひとり言
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- カテゴリ:
- ガバチャのエッセイ
小学生の時におばあちゃんにイタズラをしたことがある。
妹と二人で、家にあった双眼鏡の目を当てるところに墨を塗った。
おばあちゃんにあの山の上にきれいな木があるからのぞいてと双眼鏡を渡す。
「どこに?」と双眼鏡をのぞくおばあちゃん。
「ちゃんとくっつけてないと見えんで」とボクは背伸びをして双眼鏡を手で押した。
おばあちゃんが双眼鏡をはずしたとき、ボクと妹はしてやったりと大笑いだ。
おばあちゃんの両目の周りに丸く墨の輪っかがついている。
笑い転げるボクらを不思議がるおばあちゃん。
手鏡を渡すと、あらっまぁ! ワハハーと自分の顔におばあちゃんも大笑い。
三人の腹を抱えた爆笑が続く。
おばあちゃんが涙まで流して笑っている。と、思ったのだがなんだか様子が違う。
よく見るとおばあちゃんはヒクヒクと泣いていた。
ボクと妹の笑いが止まる。
「孫にいじめられて悲しい」と家の外に駆けだすおばあちゃん。
ボクと妹は追いかけて謝ったがおばあちゃんは突っ伏したまま顔を上げない。
ボクらは母からこっぴどくしかられた。
あのように烈火のごとく怒った母は他に記憶がない。
今から思えば当然だ。
おばあちゃんからすればどんなにかわいい孫だったかしれない。
その時ボクは大人になってもずっとおばあちゃんを大事にします、とへたくそなひらがなで誓約書のようなものを書いておばあちゃんに渡した覚えがある。
そんなわけでもないが、大人になって就職先の和歌山から高知に帰郷するたびにおばあちゃんにわずかばかりのお小遣いをあげ、町までおいしいものを食べさせにいってあげた。
何より喜んだのがボクの釣った鮎だったに違いない。
鮎好きで、「名人の釣った鮎はうまいちや」と食べ終わったら皿の上に何も残さなかった。
そんなおばあちゃんが一昨年の早春、穏やかに眠るように逝ってしまった。
隠居部屋には、ボクの鮎釣りの写真が一枚飾りつけられていた。
昨日、有田川でピカピカのきれいな鮎を釣り上げた時にふとそんなことを思い出した。
この鮎をおばあさんに食べさせてあげたらさぞかし喜んだことだろう。
でも、なぜこんなことを急に思い出したのだろう、と見上げたら目映いばかりの新緑の山が競りたっている。
そうか、あのイタズラも確かこんな季節だったよな、と清流のど真ん中で腰まで浸かり、せせらぎを切っておとり鮎を早瀬にそっと送り込んだ。
有田川の鮎は焼くと淡泊な白身がほの甘く絶品です


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妹と二人で、家にあった双眼鏡の目を当てるところに墨を塗った。
おばあちゃんにあの山の上にきれいな木があるからのぞいてと双眼鏡を渡す。
「どこに?」と双眼鏡をのぞくおばあちゃん。
「ちゃんとくっつけてないと見えんで」とボクは背伸びをして双眼鏡を手で押した。
おばあちゃんが双眼鏡をはずしたとき、ボクと妹はしてやったりと大笑いだ。
おばあちゃんの両目の周りに丸く墨の輪っかがついている。
笑い転げるボクらを不思議がるおばあちゃん。
手鏡を渡すと、あらっまぁ! ワハハーと自分の顔におばあちゃんも大笑い。
三人の腹を抱えた爆笑が続く。
おばあちゃんが涙まで流して笑っている。と、思ったのだがなんだか様子が違う。
よく見るとおばあちゃんはヒクヒクと泣いていた。
ボクと妹の笑いが止まる。
「孫にいじめられて悲しい」と家の外に駆けだすおばあちゃん。
ボクと妹は追いかけて謝ったがおばあちゃんは突っ伏したまま顔を上げない。
ボクらは母からこっぴどくしかられた。
あのように烈火のごとく怒った母は他に記憶がない。
今から思えば当然だ。
おばあちゃんからすればどんなにかわいい孫だったかしれない。
その時ボクは大人になってもずっとおばあちゃんを大事にします、とへたくそなひらがなで誓約書のようなものを書いておばあちゃんに渡した覚えがある。
そんなわけでもないが、大人になって就職先の和歌山から高知に帰郷するたびにおばあちゃんにわずかばかりのお小遣いをあげ、町までおいしいものを食べさせにいってあげた。
何より喜んだのがボクの釣った鮎だったに違いない。
鮎好きで、「名人の釣った鮎はうまいちや」と食べ終わったら皿の上に何も残さなかった。
そんなおばあちゃんが一昨年の早春、穏やかに眠るように逝ってしまった。
隠居部屋には、ボクの鮎釣りの写真が一枚飾りつけられていた。
昨日、有田川でピカピカのきれいな鮎を釣り上げた時にふとそんなことを思い出した。
この鮎をおばあさんに食べさせてあげたらさぞかし喜んだことだろう。
でも、なぜこんなことを急に思い出したのだろう、と見上げたら目映いばかりの新緑の山が競りたっている。
そうか、あのイタズラも確かこんな季節だったよな、と清流のど真ん中で腰まで浸かり、せせらぎを切っておとり鮎を早瀬にそっと送り込んだ。
有田川の鮎は焼くと淡泊な白身がほの甘く絶品です



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通勤の彼女
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- カテゴリ:
- ガバチャのエッセイ
神戸に来てから、毎朝通勤で出会う女性がいる。
年の頃なら30前後。
彼女はいつも足早な通勤ラッシュの群れに飲まれ、そして一人ぽつんと置いて行かれる。
足が悪く、びっこを引いているのが原因だ。
ある日、ボクはいつもより早く社宅を出た。
ずいぶんと手前の信号で彼女の後ろ姿に追いついた。
彼女を追い越し横断歩道を半分ほど渡ったところで青の信号が点滅しはじめた。
まさか、と思って後ろを見たら彼女が血相を変えて向かってくる。
不自由そうに体を左右に動かしながら一生懸命歩いている。が、どう考えても渡りきるのはムリだ。
彼女は駆けることができない。
どんなにがんばっても、健常者の歩く速度の半分程度だ。
歩行信号が赤に変わる。
ボクは観念し、横断歩道の途中で立ち止まって彼女を待った。
車の方に大きく手を挙げ何度も頭を下げた。
ハンドルを握るおじさんの口がとんがる。
後続の車のクラクションが鳴り、通勤の群れが振り向く。
彼女は満身で息を切らせ、ボクに追いつくと一緒に何とか渡りきった。
一斉にエンジン音を上げて車が発車する。
彼女は俯くとはぁはぁと肩で息をした。
「大丈夫ですか」と声をかけると、彼女は息を整えながら「すいませんでした」と深く頭を下げた。
気をつけてくださいね、とやんわり返しボクはまた歩き始めた。
あの状態でなんであんなにムリをするのだろう、とボクは思った。
がしかし、よくよく考えるとボクだって似たようなことは何度もしていた。
彼女にどんな事情があったのかはわからないが、下手をすれば車いすや外出もままならないことになっていたのかもしれない。
外を歩けるって楽しいことだよな。
少しぐらい歩く速度が遅かったとしても、ボクと彼女の間にさほどの径庭もないよ。
そう思い直して振り返ると、彼女の不自由そうに歩く姿ががぜん生き生きとして見える思いがしてなぜだか嬉しくなった。
がんばれ彼女!!
君もガバチャもオンリーワンでいいぞ。
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年の頃なら30前後。
彼女はいつも足早な通勤ラッシュの群れに飲まれ、そして一人ぽつんと置いて行かれる。
足が悪く、びっこを引いているのが原因だ。
ある日、ボクはいつもより早く社宅を出た。
ずいぶんと手前の信号で彼女の後ろ姿に追いついた。
彼女を追い越し横断歩道を半分ほど渡ったところで青の信号が点滅しはじめた。
まさか、と思って後ろを見たら彼女が血相を変えて向かってくる。
不自由そうに体を左右に動かしながら一生懸命歩いている。が、どう考えても渡りきるのはムリだ。
彼女は駆けることができない。
どんなにがんばっても、健常者の歩く速度の半分程度だ。
歩行信号が赤に変わる。
ボクは観念し、横断歩道の途中で立ち止まって彼女を待った。
車の方に大きく手を挙げ何度も頭を下げた。
ハンドルを握るおじさんの口がとんがる。
後続の車のクラクションが鳴り、通勤の群れが振り向く。
彼女は満身で息を切らせ、ボクに追いつくと一緒に何とか渡りきった。
一斉にエンジン音を上げて車が発車する。
彼女は俯くとはぁはぁと肩で息をした。
「大丈夫ですか」と声をかけると、彼女は息を整えながら「すいませんでした」と深く頭を下げた。
気をつけてくださいね、とやんわり返しボクはまた歩き始めた。
あの状態でなんであんなにムリをするのだろう、とボクは思った。
がしかし、よくよく考えるとボクだって似たようなことは何度もしていた。
彼女にどんな事情があったのかはわからないが、下手をすれば車いすや外出もままならないことになっていたのかもしれない。
外を歩けるって楽しいことだよな。
少しぐらい歩く速度が遅かったとしても、ボクと彼女の間にさほどの径庭もないよ。
そう思い直して振り返ると、彼女の不自由そうに歩く姿ががぜん生き生きとして見える思いがしてなぜだか嬉しくなった。
がんばれ彼女!!
君もガバチャもオンリーワンでいいぞ。

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