昨日貴志川で鮎を釣っていて、若いみっつんさんや鮎世界さん、Quarterさんから声を掛けられて

 ふと、私が初めて貴志川に鮎を釣りに行った時のことを思い出しました。

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 私はまだ20代前半でした。

 場所は真国橋の下手です。


 私は当時和歌山市内の雑賀崎の寮に住んでおり、よく近くのたこ焼き屋で先輩らとたむろしていて、その時に私が子供のころからやっている鮎の獲り方を話したら、友釣りをやっている先輩がそんなことができるはずはない、なんならその技を俺の前で見せてみろと言いました。



 でも近くにはそのようなことのできる川がないらしく、話を聞いていたたこ焼き屋の主人が貴志川の真国あたりなら監視員も回ってこないので大丈夫だろうと言います。


 そんなことで私は高知の実家からその道具を一式送ってもらうことにしました。

 2メートルの竿、箱メガネ、タモ網、三本いかりやオモリなど。


 私の漁法は高知の田舎では「フンドウじゃくり」と呼ばれるもので

 箱メガネで水中を泳いでいる鮎を覗きながらハリで掛けるという漁法でした。


 して貴志川の真国に行った当日、私は先輩たちの前で次々と鮎を掛けまくりました。

 驚いた先輩が俺にもちょっとやらせろ、というので替わってあげますが、全く掛けることができません。

 以来、私は職場で「鮎釣り名人」と呼ばれるようになりました。

 

 私が友釣りを始めるのはまだそれから10年以上後のことになります。


 なので、私が貴志川で最初に手にしたアユは友釣りではなくフンドウじゃくりという特殊な釣り方だったのです。


 そんな違法なことをよくもまあ・・・と今から思うと若気の至りとしか言えませんが、この時に実はちょっとしたエピソードがありました。

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 カブにまたがったまま私のフンドウじゃくりを道の上から物珍し気に見ていたおじさんがいました。


 やがておじさんは私のそばまで下りてくると感心そうに「あんた器用やなあ」と言います。


 私は高知の出身で子供のころからこんな釣りをずっとしていて・・・などとしばしこれこれしかじか話に花が咲きました。


 ひとしきり話をしておじさんがまたカブの方に戻ろうとしたその背中に「おじさん、ここって監視員まわってきますかね?」と私は尋ねました。


 おじさんは振り返るとちょっとだけ口をゆがめて「ワイが監視員じゃが何か?」と言います。

 私はもう慌てふためいて「ええっ? ご・ごめんなさい」と頭を下げました。

 おじさんは小道に立ち止まったまま高笑いをあげると


「今日の監視はこれで終わりじゃ!」

 とまたカブにまたがってどこかに行ってしまいました。

 

 私は肝を冷やしそれから釣りを止めてバーベキューの準備に取りかかりました。


 先輩らと楽しく肉や鮎を焼いてビールで乾杯をしていたら、かわいらしい男の子が道の上から顔を出しています。みんなが見上げたらすぐに引っ込みますが、また肉を食べ始めるとその子供はそっと顔をのぞかせています。


「ボクちゃん降りておいでよ」

 私が呼びかけるとその男の子は素直に降りて来ました。



 まぁ座れや、肉を食え、ジュースもあるぞ、と私たちの接待に男の子は喜びです。


 家はこの近くかい? との問いに男の子は肉を頬張りながら民家のある方を指さしました。

 と男の子が「おっちゃんこれなに?」と赤ウインナーを指さして訊くので「なんや君は赤ウインナーを知らんのか」というとこっくりと頭を下げます。


「おい、焼いてやれ」

 と先輩に言われ赤ウインナーを網に並べました。


 焼けたのをひとつ割りばしに刺して男の子に渡すと最初は恐る恐る口に運んだのだのですが、そのうちに「これうまーい!」と言って次々と箸をのばし始めました。


「そうか全部食え。おい、もう一袋あったやろが。そいつも焼いてやれ」

 と相好を崩す先輩たち。


 結局その男の子は一人で二袋のウィンナーを食べてしまいました。


 いつの間にか黒い雲が広がり大粒の雨が落ちてきます。

 大急ぎで片づけをして子供も家の方に走って帰りました。


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 その後何度か真国には行ったけれどその男の子とはそれっきり会うことはありませんでした。

 あれから40年近くが経っています。


 男の子も誰かからおっちゃんと呼ばれる年齢になっているのですが、あの赤ウインナーのバーベキューのことを今でも覚えているのでしょうか?

 

 今回出会った貴志川の若者たちの中には赤ウインナーの男の子の子供に当たるぐらいの年齢の方もいるのでしょう。

 そう思うとしみじみガバチャも歳を取ったものだと思います。


 あの頃からは世の中も自分を取り巻く人間関係や生活環境もずいぶんと変わりました。


 でも貴志川は変わっていません。

 一点のよどみもなく流れる清い水はあの頃のままです。


 そんなことを思いながら昨日は竿を伸ばしました。

 

 人生は出会いです。

 その一コマ一コマに感謝いたします。

 みんなありがとう・・・(*´ω`)

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鮎釣り師のひとり言 その7



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