体質なのか、南本友子の美しい黒髪や体型は四十になっても殆ど変わらない。
女手ひとつで浩也を育ててきた苦労は、どこにもにじみ出ていないようだ。
化粧をして身繕いした母を、浩也は横目でちらりと見た。
おでんつくってあるから暖めて食べてね、と友子は浩也に優しい目を投げかけると玄関を出て行った。
浩也は高校二年になってテニスクラブを辞めた。大学受験に備え勉強に専念するためだ。 浩也は母に負担をかけまいと、高校を出たら直ぐに働こうと思っていた。
だが、母は大学に行かせるだけの蓄えはある、絶対に大学に行けと言い張る。
そして、人間働ける内に働いておくもんやと言って、昼間のクリーニング店だけではなく、夜のスナック勤めまでするようになった。
浩也は母のスナック勤めを嫌い何度か止めて欲しいと頼んだが、母は稼ぎがいいからと言って言うことを聞いてくれない。
母のスナックに出かける時の衣装は日毎に派手になっていった。
一月ほど経つと、タクシーで見知らぬ男の人に送ってもらったり、時々酔っぱらって玄関に倒れ込むこともあった。帰宅時間も徐々に遅くなり、特に土曜日の夜は明け方近くになることもしばしばあった。
浩也はそんな母が心配でもあり嫌でたまらなかった。が、一方で母が生き生きとしてきたのも事実だった。
半年ばかり経つと、一人の男とばかり帰ってくるようになった。
貴志隆三と言う男だ。
白髪交じりの短髪、赤銅色の顔、大柄な体格。どうかすると若い母とでは親子ほどにも見える。
浩也は、こんな男のどこが良いのかと疎ましく隆三を思った。
やがて、隆三は我がもの顔で家の中に上がり込みだした。
そんな時、浩也は部屋に閉じこもって飯も食べずに無言の抵抗をした。母は複雑な表情で浩也の部屋に夕食を運んだ。
浩也の我慢は限界に達していた。母に対してスナック勤めを止めることと、隆三との付き合いを止めることを切り出すことにした。
もしそれがかなわなければ、自分は高校をやめて家を出て行く決意までした。友人が大阪に出て住み込みで新聞配達をしている話を聞き、いざとなったら自分もそうしようというもくろみだった。
土曜日の深夜、酔っぱらって帰宅した玄関先から二人の会話が聞こえた。
「なぁ、友ちゃん頼むから一緒になってくれっしょ」
「隆さん、またそんなこと言うて」
「ワイもお前も一人もん同士や。なんの支障もないやして。金かてなんぼでもある。生活で不自由なんかさせへんからよ。なっ、友ちゃん明日にでもワイの家に来てや」
「そんな急には無理やわ」
隆三は酔ってはいるが真剣な口調だ。
「ワイにも息子で勇一がおる。お前んとこの息子と似たような年や。絶対ええ兄弟になるって。なんなら三人でワイの船乗ってもええっしょ」
「うちの浩也は乗りませんよ」
母の小さな笑い声が響く。
浩也は、冗談もいい加減にしてほしいと思った。
何で自分が漁師なんかにならないといけないんだ。それに見も知らぬ奴といきなり兄弟だなんて。浩也は二人が一緒になることが絶対嫌だった。
翌朝、浩也は遅く起きてきた母に不満をぶつけた。
「僕絶対船なんか乗れへんから」
虚を突かれた母は、口をポカンと開けたが直ぐに薄笑いを浮かべた。
「お母ちゃんなあ、再婚なんかするつもりないわよ」
意外なほど明朗な答えが返ってきた。
「ほんまやな」
「ああ、ほんまや。お前にはしっかりと勉強してもろうてちゃんとした大学に行ってほしいんや。そのためにはお母ちゃん昼も夜もあれへん。働ける時に働いときたいただその一心や」
友子はしっかりと浩也の目を見た。
「お母ちゃん、僕大学入ったらバイトするからその時はスナック辞めてよ」
母は視線を逸らさず頷いた。
「それより、今度の日曜日おじいちゃんらとの焼き肉いいわね」
「うんわかってるよ」
もっと深刻なやり取りになると思っていた浩也は、拍子抜けした。
母の口から、隆三と一緒になるつもりのないことを聞いた浩也は、とりあえずは安心した。不安が完全に払拭されたわけではないが、母の言葉を信じるほかなかった。
ガバチャのひとり言
写真は和歌山市を流れる紀ノ川の河口で、右岸(北)から左岸(南)を望んでます。カメラを持って立っている場所は住友金属の埋め立て地の付け根で魚釣り公園の入り口になります。
川は写真の左から右に流れており直ぐに海デス。
海は紀伊水道で対岸は四国の徳島県となりその南側には太平洋が広がります。
この位置から北側に西庄と言う地域があり、ボクのウサギ小屋・・・いや、トリ小屋のような自宅があります。
和歌山県と大阪府の県境にあたり和泉山地の自然がしっかりと残っている地域で、ちょうど今頃の季節にウグイスの雛が山から下りてきてホーホケキョの鳴く練習をします。
ホー・ホケッ・・ホケッとなかなか最初うまく鳴けないのがおもしろくて毎年の楽しみになってます。
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