若い頃の話だ。
 和歌山県紀ノ川の支流に貴志川というきれいな川があって、そこのマス釣り場で職場レクをやった。

 ボクと年配のUさんが昼食カレーの係となり、みんながマス釣りをしている間に田んぼの石垣沿いに釜戸を作り火をおこした。
 にわかに風が強まり、風向きが変わる。

 あっ、稲わらに火が!
 と言う間にみるみる火は広がったメラメラ

 Uさん、米炊き用にくんできた水バケツを持ってウォ~と絶叫。
 が、なんとその勢いで入れ歯が発射えっ Uさんとっさにナイスキャッチ。

 入れ歯を持ったまま修羅となったUさん、燃え盛る火にバケツを振り回す。
 笑えもせず、ボクも必死で棒を振り回し火を叩き消した。

 何が何だか状態で八面六臂の二人。
 田んぼ半焼でまもなく鎮火。
 ぜーぜーと肩で息をしながらボクはUさんと向き合った。

 「ひえてよはっはな~」(消えて良かったなー)とUさん。
 言ってはたと両手を広げた。入れ歯が・・・ないっ!

 怖かったがボクも入れ歯捜索に加担。
 ギョギョ~ッ!叫び 焼け跡からついに入れ歯発見。

 Uさん笑顔でホコリを払って無事入れ歯と合体ぁ~ぃ。ニカッと笑うUさんだが、炭がまだ落ちてない。谷川で洗うしかないな、とUさん江戸時代のお歯黒状態でマス釣り場に直行。
 皆にはばからず入れ歯をグワァーっと外すと、谷川でごしごし入れ歯の洗浄開始だ。

 そんなUさんにマス釣りの子供はびびるし大人はドン引き。
 管理人のおじさんも目をむいて無言で立ちつくすしかなかったのレス。

 がぁ、まぁ、とにもかくにもUさん、ひえてよはっはな~(消えて良かったなー)




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