鮎釣り師ガバチャのひとり言

釣りあげた鮎で仲間と酒を飲む   これ人生のユートピア!


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     早春に桃の花を見ると思い出す。
     小学校の卒業式を。
     
     桃の花、匂う三月、おなごりはつきません・・・・・・。
     ボクの小学校では卒業式で六年生を送る言葉を、下級生が台詞をつないでやっていた。
     
     ボクの台詞は「おなごりはつきません」のところだった。
     練習の時ちゃんと聞いていなくて、どんなんやったっけーと「おらげりはつきません」とか適当に言ったら、ブー教頭から「こらぁオナゴリ、ちゃんと言わんかぁ!」とドス声で叱られたガーン
     ボクはオナゴリと呼ばれ何度も練習させられた。

    「声が小さーい」と言われたので、快活に「おなごりはつきませーん!」と大声でやったら「そんなに元気に言う言葉じゃなーい」とブー教頭がまた怒鳴る。
     ボクはブー教頭に恐る恐る聞いてみた。

    「あのぉオナゴリってどんな意味ですか?」
     ブー教頭は目を剥いて「ええ、意味ぃ、ん~意味はなぁ・・・・・・おい、誰か教えたったれ」と周りにいた先生に振った。

     先生の1人が「えーと、別れは悲しいけど悲しそうに別れないことだよ」とか言って自分で首をかしげていた。子供のボクにはやっぱりよく分からなかったが、コワイ上級生がいなくなって嬉しいだけなのになんだと思った。

     翌年、ボクたちが送られる時、オナゴリに当たった下級生がブー教頭に同じようにいじりたおされていた。

     あんなの、小学生の使う言葉じゃない。
     そんなあの頃に、おなごりはつきましぇ~ん
    べーっだ!




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     鮎釣り師はオフになると暇ですることがない。
     家内は一人で買い物に行ってしまったし、たまにはひとりで映画でも行ってみるか。
     と、身支度をととのえた。

     映画館はすぐ暗くなるのでちょっとぐらい派手でもいいかと、息子のキャラクターグッズのセーターを拝借。ジーパンに赤い野球帽を被ってさっそうと家を出た。

     映画館に到着。
     受付嬢が一般でよろしいですかと微笑む。
     ええ、とうなずきながらもそこまで若く見られたかとムフフ状態。

     映画には一般と小人しかない。つまりボクが小人かもしれないと思われた証拠。
     先祖代々小型のDNAを受け継いできたガバチャ家。でもいくら小型だからって小人あつかいは若すぎるぜ。ま、我がハートには小型じゃなく大型(O型)の血が脈々と流れておるのじゃがな。などとくだらないことを考えていたら「会員様の場合お一人1400円となってございます」と受付嬢が言う。

    「あっ会員会員、会員様で~す」
     と財布から会員カードと1000円札を2枚取り出して渡した。

     受付嬢がレジみたいなのをぴぴぴと打って、おつり600円と会員カードとレシートを返してくる。
     ん? ふと見るとレシートには豚肉、ネギ、豆腐などと打たれているではないか。

     どんな映画だと思って「これってなんの映画よ? ボク沈まぬ太陽みたいんやけど」と豚肉などとうたれたレシートを受付嬢に返した。
     と、受付嬢ニッコリ。

    「それいただいた2000円にはさまっておりました」
    「へっ」えっ
     確かに、昨日豚鍋をするための食材をオークワに自分が買いに行った。
     そのレシートだったのか。

     とっさに「レシートいいです」と返そうとしたが、そんなやりとりをする窓口でも無かろう思い「あっ、やっぱもらっときまーす」などと見当違いな返事をして財布の中にしまい込んだ。

     表情を変えなかった受付嬢も、続けて映画のチケットを渡すときには我慢しきれなかったのか、ボクの顔を見てぶぶっと吹き出した。

     沈まぬ太陽のように燦々と輝く美少年に見間違われたのもつかの間、ただの所帯じみた半ボケおやじへと落ちたボク。

     ま、いつものパターンではあるけれど、となんだか太陽が沈んじまったような気分になってテコテコと館内の暗闇へと消えていったのであります
    むっ





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