職場のコピー室にシュレッダーがある。
その大型の強力なシュレッダーはぶ厚い書類も一気に引き込みちぎる。
与えられたとおり忠実に、なんの選別判断もなく鋭利な装置でバリバリワジワジと無惨に書類を引き裂いていく破壊力には一種の恐怖感すら覚える。
が、一方で二度と復活できない状態への移行が潔く自分の気持ちをもリセットしてくれるような気もして爽快だ。
忘れたい過去を投影してシュレッダーでバリバリワジワジを続けるうちに、ふと実は自分が全く冷酷無比な人格者であることをたかが機械ではあれ見透かされたのではないのかという不安に陥いる瞬間がある。
カチャリ
開くドアに心臓が跳ねた。
「あら、シュレッダーは私がやりますから」
と女性職員が駆け寄る。
「いいんだよ。取扱注意の書類だから・・・・・・それに私はシュレッダーが好きなんだ」
「えっ」
「ほら、シュレッダーしてると過去が清算されてるみたいじゃないか」
「あ、はい」
「例えば、この今からシュレッダーにかける書類にマジックで過去の仕事の失敗とか書くとなんか全てこれまでの失敗が精算されたみたいに忘れられそうだしさ」
「あ、それなんだかわかります」
「君も忘れたいことがあったらここになにか書いてみなさい」
「あ、ええ、いいんですか」
「さ、潔く書いてみなさい。誰にも言わないから」
「あ、はい」
その女性職員はマジックを取ると大きくガバチャとなぐり書きをした。
「き、君・・・・・・
」
と、あわてるボクのそばでシュレッダーにそれをつっこみ不敵な笑みを浮かべる彼女。
「あー、すっきりした。で、この前誰と二人で飲みに行ってたのかなー。ひとり言見ましたよ」
「あ、いや、駅でほら、あの前の職場で知っていた、ほら、偶然会って・・・そのぉ・・誰だっけ・・」
パシッ
アタァー
あなたは誰かにシュレッダーされたことがありますか
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その大型の強力なシュレッダーはぶ厚い書類も一気に引き込みちぎる。
与えられたとおり忠実に、なんの選別判断もなく鋭利な装置でバリバリワジワジと無惨に書類を引き裂いていく破壊力には一種の恐怖感すら覚える。
が、一方で二度と復活できない状態への移行が潔く自分の気持ちをもリセットしてくれるような気もして爽快だ。
忘れたい過去を投影してシュレッダーでバリバリワジワジを続けるうちに、ふと実は自分が全く冷酷無比な人格者であることをたかが機械ではあれ見透かされたのではないのかという不安に陥いる瞬間がある。
カチャリ
開くドアに心臓が跳ねた。
「あら、シュレッダーは私がやりますから」
と女性職員が駆け寄る。
「いいんだよ。取扱注意の書類だから・・・・・・それに私はシュレッダーが好きなんだ」
「えっ」
「ほら、シュレッダーしてると過去が清算されてるみたいじゃないか」
「あ、はい」
「例えば、この今からシュレッダーにかける書類にマジックで過去の仕事の失敗とか書くとなんか全てこれまでの失敗が精算されたみたいに忘れられそうだしさ」
「あ、それなんだかわかります」
「君も忘れたいことがあったらここになにか書いてみなさい」
「あ、ええ、いいんですか」
「さ、潔く書いてみなさい。誰にも言わないから」
「あ、はい」
その女性職員はマジックを取ると大きくガバチャとなぐり書きをした。
「き、君・・・・・・
」と、あわてるボクのそばでシュレッダーにそれをつっこみ不敵な笑みを浮かべる彼女。
「あー、すっきりした。で、この前誰と二人で飲みに行ってたのかなー。ひとり言見ましたよ」
「あ、いや、駅でほら、あの前の職場で知っていた、ほら、偶然会って・・・そのぉ・・誰だっけ・・」

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鮎釣り界の塚原卜伝になりたい
-
- カテゴリ:
- ガバチャのアホなお話
その昔。
年老いた剣豪、塚原卜伝(ぼくでん)は山奥に隠棲していた。
そこへ血気盛んな宮本武蔵が訪れる。
若き武蔵は訪れるなり卜伝に向かって木刀を振り下ろした。
パシーンッ
。
食事の支度でいろり端に座っていた卜伝は鍋のふたで武蔵の剣を受け止めると「ふふ、まだまだ青いの」と一言。
武蔵が「先生、弟子にしてください」と土下座すると、ふすまががらりと開いた。
割烹着を着た女性が現れすまし顔で卜伝の頭をシャモジで小突く。
いてぇ
、と卜伝
あっけにとられる武蔵。
「あんた芋汁炊くのにいつまでかかってんの、またちゃんばらごっこして遊んでたんでしょう、いい加減にしなさい」
あっけにとられた武蔵は方向を変えてその女性に向かって「で、弟子にしてください」 と頭を畳にこすりつけたという。
今年の夏。
若者がボクのすぐ横に竿を構えた。
力任せに竿を繰る若者。
対照的に静の構えでゆっくりとおとり鮎を泳がせるガバチャ。
と、ガバチャの竿がバツンッと微震した。
同時に、水中糸の赤い目印が上流にぶっ飛ぶ。
竿がギイギイと折れんばかりにしなる。
腰を落として踏ん張るガバチャ。
ハリに掛かった野鮎が水中でもがく。
満身で竿を持った両手を頭上に掲げると、丸々とした巨鮎が水面を蹴散らして猛スピードで飛んできた。
素早く腰からタモ網を引き抜きキャッチの体勢。
ドス~ンッ
ものすごい勢いで掛かり鮎がタモ網の底を突いた。
とっさに駆け寄る若者。
「ガバチャさん、弟子にしてくださいっ」
と、携帯電話のエクソシストのテーマが鳴る
家内からの着信音だ
「ああたー、まだ河原ぁ
いったい何時まで釣ってんの
早よ帰ってきいや。あたし今日腰痛気味なんやから子供らに晩飯つくってあげてよね。そうそう帰りに今朝のチラシにあった安売りのタマゴと豚肉と、それから一人二本までのキッコーマンの醤油買ってきて」
「あはい」
「あぁそれから、カットフルーツとハーゲンダッツのアイスクリームのイチゴ、とオークワのクリーニング屋によって一昨日出した服とってきて。わかったぁ」
「あはい」
ブチッ。
家内の携帯から漏れる大声にきょとんと耳をすましていた若者。
「ガバチャさん、き、今日はもう納竿です、か」
「聞こえてたらわかるでしょ」
鮎釣り界の塚原卜伝(ぼくでん)もかみさんにはかなわない

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年老いた剣豪、塚原卜伝(ぼくでん)は山奥に隠棲していた。
そこへ血気盛んな宮本武蔵が訪れる。
若き武蔵は訪れるなり卜伝に向かって木刀を振り下ろした。
パシーンッ
。食事の支度でいろり端に座っていた卜伝は鍋のふたで武蔵の剣を受け止めると「ふふ、まだまだ青いの」と一言。
武蔵が「先生、弟子にしてください」と土下座すると、ふすまががらりと開いた。
割烹着を着た女性が現れすまし顔で卜伝の頭をシャモジで小突く。
いてぇ
、と卜伝
あっけにとられる武蔵。
「あんた芋汁炊くのにいつまでかかってんの、またちゃんばらごっこして遊んでたんでしょう、いい加減にしなさい」
あっけにとられた武蔵は方向を変えてその女性に向かって「で、弟子にしてください」 と頭を畳にこすりつけたという。
今年の夏。
若者がボクのすぐ横に竿を構えた。
力任せに竿を繰る若者。
対照的に静の構えでゆっくりとおとり鮎を泳がせるガバチャ。
と、ガバチャの竿がバツンッと微震した。
同時に、水中糸の赤い目印が上流にぶっ飛ぶ。
竿がギイギイと折れんばかりにしなる。
腰を落として踏ん張るガバチャ。
ハリに掛かった野鮎が水中でもがく。
満身で竿を持った両手を頭上に掲げると、丸々とした巨鮎が水面を蹴散らして猛スピードで飛んできた。
素早く腰からタモ網を引き抜きキャッチの体勢。
ドス~ンッ

ものすごい勢いで掛かり鮎がタモ網の底を突いた。
とっさに駆け寄る若者。
「ガバチャさん、弟子にしてくださいっ」
と、携帯電話のエクソシストのテーマが鳴る

家内からの着信音だ

「ああたー、まだ河原ぁ
いったい何時まで釣ってんの
早よ帰ってきいや。あたし今日腰痛気味なんやから子供らに晩飯つくってあげてよね。そうそう帰りに今朝のチラシにあった安売りのタマゴと豚肉と、それから一人二本までのキッコーマンの醤油買ってきて」「あはい」

「あぁそれから、カットフルーツとハーゲンダッツのアイスクリームのイチゴ、とオークワのクリーニング屋によって一昨日出した服とってきて。わかったぁ」
「あはい」

ブチッ。
家内の携帯から漏れる大声にきょとんと耳をすましていた若者。
「ガバチャさん、き、今日はもう納竿です、か」
「聞こえてたらわかるでしょ」

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