「網入れが始まってしばらくすると、杉野原あたりの浅場で網がベトベトになるぐらい産卵のメスとオスが獲れます。毎年、遠井のキャンプ場あたりでは相当の産卵がされているんとちゃいますか」
 と柴崎さん。

「二川ダムからの天然遡上はないのですか?」


「確証はないけど放流前に小さい鮎を確認したとかの話もあるので、皆無ではないかと思います」





 ガバチャが思うのは2007年に全国的なニュースで話題となった高知県の鏡川だ。
 前年にダムでふ化した鮎が大量に遡上した。

 へたくそなうちのおやじらもキャンプを張って7月の解禁日を迎えた。
 おやじにして友釣りで50匹である。
 しかも20センチ近くのデカいやつばかり。

 私の貸していたダイワの竿を折ってしまいそこで釣りを終えたらしいが、釣り続けたらまだまだ釣れていたのだろう。全国から鮎釣り師が訪れ三桁釣り続出だったという。

 私も8月に行ってみたが
 もう釣られて相当少なくなったと言われた状況でも70匹超の釣果があった。


 確か新聞には、この年は雨が異常に少なくダムの水温が上がった。
 それで稚アユの餌となるプランクトンが増殖し、大量遡上につながったと表されていた。

 地元の人たちは、川でうじゃこらコケをはむ鮎を見て、まるでダムができる前に戻ったようだと言ったそうだ。


 果たして、人為的にこの状況は作れないものだろうか?

 毎年放流した鮎を一回性の資源として4トンもリセットしている有田川ダム上の現状は、スゴクもったいないと思うのだが。
 鮎自らが再生産をして、翌年に遡上する。
 それは今のように池で飼った養殖鮎を、大挙してドボドボ川に放流するのとはずいぶん違う鮎になるはずだ。

 実は近畿でも古座川のダムや奈良の方のダムでは毎年ダムからの遡上が確認されている河川がある。
 また、ネットで調べると中部の方だったか、ダムからの遡上鮎を友釣りで楽しんでいる川もある。(ダム湖産の放流も)


 これらのダムを調べて比較すれば何か原因がわかりそうな気もするが。
 それはダムだけではなくて、そこにつながる川も、山もだ。
 そう、流域全体の自然環境を把握することが必要となるだろう。


「森は海の恋人」の取り組みを続ける、宮城県は気仙沼の畠山重篤さん。
 海のカキが育たなくなったのは山が荒廃したからだとして、三十年ほども前から漁師を募って植林を始めた。

 また、大阪の淀川ではウナギを増やそうと「ウナギの森」として、大阪市製材業組合が落葉広葉樹を高槻の山に植林している。
 どちらも、同じ理屈である。

 川や海の生態系が壊れたのは、山の荒廃に大きな原因のひとつがある。
 落葉広葉樹であるナラやブナから得られるフルボ酸鉄が、川や海の生き物にとって欠かせない働きをすることになるのだ。
 高度成長期に損なわれた自然界の仕組みを、植林によって復活させて、カキやウナギを増やそうというのである。

 そんな話を知ると鮎もしかりで、現状から脱するにはこのような広い視点と長い目で見た取り組みが必要なのだと思う。


「二川ダムは水温が低いですからね」
 と柴崎さん苦笑い。

 海の論法でいくと
 水温を人の手でどうにかするのはいかんともしがたいことなのだが。

 確かに、それがダムで稚鮎を生き延びさせない直接あるいは間接的な原因なのかもしれない。
「ダムに浅いところを作ればもう少しはましになるんじゃないでしょうかね。水量のキャパシティに影響ないように浅くしたら他の場所を深くするとか」
 実現性はゼロではないと思う。

「海は高水温に悩まされ、ダムは低水温に悩まされる。うまくいきまへんな」
「確かに稚鮎には適温が必要なのでしょうね」

 きっと放流される鮎は思っていることでしょう。
「おいおい、こんな時期にこんな場所に急に放すなよ。オレたちのこと何にもわかってくれちゃいないんだな」
 と鮎も人間も、互いに毎年ビクビク冷水病におびえている。

 残念ながら人間と鮎はコミュニケーションがとれない。
 どうしたら鮎のためになるのか。


 自治体も漁協もいろいろなことは考えておられるのでしょうが、ダム上についてはこれまでどおりのことだけではなく何か新しいことにトライしてほしいと思う。

 当然、お金も時間も理解も労力もいるのでしょうが、そこはできる範囲で小さく試して、失敗は次に生かして順応的に物事を進めていってほしいと思います。

 とにかく、ガバチャは まともな 鮎の友釣り がしたいのデスわ!

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