若い頃、海の仕事に配属され
そこで特殊船舶の船員さんたちと知り合いました。
船員さんたちは皆厳つい年配者ばかりで最初はビビリましたが
話をするうちにやがて打ち解けて若い私は息子のように可愛がってもらいました。
ある時、船員さんたちから昼飯に呼ばれます。
乗船して食堂に行くと鮮やかに盛り付けた刺身が並んでいました。
「おいっ、鯛の刺身や食え」
と船長から勧められます。
周囲の船員さんたちはなぜかざわざわ苦笑です。
私は丼飯を持ってわさび醤油でパクリとやりました。
うん、美味い!
私の反応に皆がどっと沸きます。
白身にやや赤みが差した柔らかい身は適度な甘さを伴って口の中でとろけていきました。
私はその日から何度かその昼食に呼ばれて鯛の刺身に舌鼓を打ちます。
あるとき本事務所からデスクの先輩が訪れたのでその鯛の刺身の話をしました。
先輩はブーっと吹き出すと
「お前その刺身食べとったら背骨が曲がるぞ」
と私の顔を覗き込みます。
なんでですか?
と訝しげに先輩の顔を見ると、着いてこいとばかりに外に出て私を船着き場に連れて行きました。
「お前が食べさせてもらってたのはこれやで」
と岸壁から吊るしてある網を引き揚げました。
そこには目を剥くほど大きな魚が何匹も入ってギラギラ跳ねています。
「なんすかこれ?」
当時まだ海の魚の事を全然知らなかった私が訊くと
「ボラやがなボラぁ~」
先輩はまた腹を抱えて笑いました。
その時はまだ紀の川の河口部は水質も悪く油が浮いたりしていました。
その黒い船着き場で釣りあげたボラを飼って船員さんたちはお昼に食べていたのです。
思い返せば季節は寒い冬。
寒ボラは私の背骨を曲げることもなく
船員さんたちとの楽しい思い出として私の記憶に残り続けているのです(*´ω`)
その頃、桟橋をモンローウォークしていた
事務員のM本さんは今どこでどうしているのでしょうかね(^^ゞ
