ある春の日。
気持ちの良い天気なのでサッシを全開にしたら、庭のモクレンに黒いものがついている。
なんだろうと目を凝らせたら蝶だった。
大きくて真っ黒な蝶。
さっそくデジカメを持ってきてシャッターを近づけた。驚かせないように慎重にやったが、気づかれて羽をバタバタし始めた。が、それだけで飛ぶことはない。
孵化したばかりなのだろうか。蝶はぎこちなく羽を閉じたり広げたりするだけだ。紋白蝶のように花の周りをひらひら飛ぶのはかわいいが、この大きな蝶は綺麗というよりかはむしろ妖しく不気味に思えた。
ボクは、この手の蝶が苦手だ。
と、そこまで文章を打ったとき外から家内が帰ってきた。
仕上がったクリーニングを束ねて下げている。
「あんたのカッターシャツ、ひとつだめになったで」
とさりげなく家内。
「なっなんで」
ボクは憮然と見返した。
家内が含み笑いのままそのカッターシャツをしなりと置く。
その含み笑いは、家内が圧倒的な優位性を得たときに見せる仕草だと気づいたとき、矢のような言葉が飛んできた。
「口紅が、肩のところについててとれないんやて」
「ぬわっ・・・・・・」
ボクは生唾をごくりと飲んでマウスから手を離した。
どうしようもない事態だ。
「ど、どこで。あっ、そっかこの前スナックで無理矢理ダンス踊らされた時・・・の・・かなゃ」
と舌がもつれるボク
「それってどんなダンスよっ」
空気が裂けるような一言炸裂。
小さいけど鋭い、ビックバン直前のような閃光が家内の瞳に走る。
「い、いや、ほらぁ、こんな・・・・・・こんな感じの、ほ、ほら、こんな」
ボクはすくっと立ち上がると、左手を伸ばしつま先でワンツぅ~ワンツぅ~とステップをとって後ろ向きにリビングから消えていった。
カッターシャツにとまったのは夜の蝶にちがいない。
ボクは、この手の蝶が苦手だ。
・・・・・・嫌いではないが苦手だ。
ポチッと応援ヨロシク

超燃える鮎友釣り もヨロシク
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孵化したばかりなのだろうか。蝶はぎこちなく羽を閉じたり広げたりするだけだ。紋白蝶のように花の周りをひらひら飛ぶのはかわいいが、この大きな蝶は綺麗というよりかはむしろ妖しく不気味に思えた。
ボクは、この手の蝶が苦手だ。
と、そこまで文章を打ったとき外から家内が帰ってきた。
仕上がったクリーニングを束ねて下げている。
「あんたのカッターシャツ、ひとつだめになったで」
とさりげなく家内。
「なっなんで」
ボクは憮然と見返した。
家内が含み笑いのままそのカッターシャツをしなりと置く。
その含み笑いは、家内が圧倒的な優位性を得たときに見せる仕草だと気づいたとき、矢のような言葉が飛んできた。
「口紅が、肩のところについててとれないんやて」
「ぬわっ・・・・・・」

ボクは生唾をごくりと飲んでマウスから手を離した。
どうしようもない事態だ。
「ど、どこで。あっ、そっかこの前スナックで無理矢理ダンス踊らされた時・・・の・・かなゃ」
と舌がもつれるボク

「それってどんなダンスよっ」
空気が裂けるような一言炸裂。
小さいけど鋭い、ビックバン直前のような閃光が家内の瞳に走る。
「い、いや、ほらぁ、こんな・・・・・・こんな感じの、ほ、ほら、こんな」
ボクはすくっと立ち上がると、左手を伸ばしつま先でワンツぅ~ワンツぅ~とステップをとって後ろ向きにリビングから消えていった。
カッターシャツにとまったのは夜の蝶にちがいない。
ボクは、この手の蝶が苦手だ。
・・・・・・嫌いではないが苦手だ。
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