これは柿の木である。
私の実家の前にある。
枯れているように見えるが、これでも秋には枝葉を伸ばし実をつける。
いつからあったのかはわからないが、父に訊いたら私の生まれるずっと前からあったと言うので相当前だろう。
柿の木は病気にかからなければ300年ぐらい生きるらしい。
小さい頃はこの柿の木に登って、しょっちゅう柿の実を食べながら通行人を見下ろしていた。
その様を見て近所からは「中川の小猿」というあだ名を付けられていた。
この柿の木の所有者は判然としない。
だから、誰に怒られることもなかった。
隣の小屋は近所のおじさんが軽トラの駐車場に作ったものだ。
おじさんは10年ほど前に癌で亡くなった。
カブしか乗ら ないおじさんで、私もそのカブに乗せてもらって川にウグイを釣りに連れて行ってもらったりした。
おじさんの娘は私の五歳ぐらい下で、いつもカブの後ろに乗っていた。
ある時、海岸線の町まで行く途中、娘がカブの後ろで眠ってしまい転げ落ちた。
命に別状はなかったが、これを機におじさんはカブをやめ自動車の免許を取って軽トラを買った。
その時はこの車庫も新築で、眩しく置かれた軽トラの荷台で、娘がいつもひとりままごとをしていた。
私たち近所の悪ガキはその娘を姫と呼んで、柿の実を取っては一番甘そうなのを与えたりしていた。
ちょうど私が自転車の補助輪を外す頃だった。
ついに補助輪なしで走る日がやって来た。
母や近所の悪ガキ、その娘 らが見守る前で、親分格の私は大丈夫大丈夫とぎこちなくペダルを踏みながらぐんぐんスピードを上げた。
が、急にハンドルがふらつきはじめ制御不能に陥り悲鳴と共にこの柿の木に正面衝突した。
ガンッ! と当たった拍子に私の小さな体はハンドルを持ったまま股開きで宙に浮き、そのまま落下してサドルにキン○マを強打した。
転倒と共に股間を押さえて悶絶すると、皆から一斉に笑いが起こった。
私は悔しさのあまり涙が出た。
無事を確認した母にまで腹を抱えて笑われ、穴があったら入りたいぐらいの心境だった。
この柿の木も笑ったのではないか?
そんなことを思い出しながら眺めたら、なんだかこの柿の木も人間のような生き物に見えてくるではないか。
そう、普遍たる枯れっぽさが神々しくも思えてくる。
お柿さま、ひとつ長生きの秘訣をこのガバチャに教えてもらえないでしょうか。
と、あやかりたい一心で思い出の柿の木の写真をしげしげと眺めたのでした。



















と、人だかりに突進


、ガッツポーズのまま今度こそと隣のブックオフに

















