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<title>鮎釣り師ガバチャのひとり言 - ガバチャの小説</title>
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<description>釣りあげた鮎で仲間と酒を飲む
　　これ人生のユートピア！
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<title>貴志川</title>
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<description>　一人暮らしの敦子に宅急便が届いた。冷凍の鮎だ。きれいな文字で差出人に中平祐二と書かれてある。明らかに父の字ではない。宅急便の受付女性にでも書いてもらったのだろう。鮎は見事な大きさで、三十匹ほど入っていた。　敦子は父に電話することをためらった。父は耳が遠...</description>
<dc:creator>gabacha123</dc:creator>
<dc:date>2024-09-04T05:32:24+09:00</dc:date>
<dc:subject>ガバチャの小説</dc:subject>
<content:encoded><![CDATA[<b>　一人暮らしの敦子に宅急便が届いた。冷凍の鮎だ。きれいな文字で差出人に中平祐二と書かれてある。明らかに父の字ではない。宅急便の受付女性にでも書いてもらったのだろう。鮎は見事な大きさで、三十匹ほど入っていた。</b><br /><br /><div>　<b>敦子は父に電話することをためらった。父は耳が遠く話が正確に通じないことが多い。また何か行き違いでもあってヘソを曲げられたらやっかいだ。敦子は、和歌山の実家を飛び出してもう十五年にもなるのかと、口を結んで頬杖をついた。</b></div><br /><div>　<b>生まれ故郷は和歌山の高野山麓にある山村だ。山間を縫うように貴志川という小さな川が流れている。ダムのない清流で、上流部は渓谷の様相だ。ここに中学まで居た。高校は和歌山市内の商業高校に行き親戚の家に下宿した。父との衝突は十八の時に起こった。</b></div><br /><div>　<b>七歳も年上の男と駆け落ちをした。</b></div><div><b><br /></b></div><div><b>「もうお前は俺の娘やない。どこなと行ってひとりで暮らせ」</b></div>　<b>父は震えながら背中を向けた。敦子はひるまなかった。時間が経てば分かってくれるだろうとたかをくくっていた。男は和歌山市内にあるスポーツ店の息子で、働きもせずスポーツカーを乗り回していた。プロポーズをされたのは卒業式をひかえた未だ寒い日のことだった。父は男に対し烈火のごとく怒りをぶつけた。幼い頃に母を亡くした敦子に、父との仲を取り持つ者は誰もいなかった。</b><br /><br /><div>　<b>和歌山市のマンションでの同棲は半年と続かなかった。その男は女子高生をラブホテルに連れ込み、帰り道で警察の検問に引っかかった。敦子は村に帰ることもできず、親戚の叔母の家を頼りにしばらく世話になった。</b></div><b>「お父ちゃんに謝って家に帰りなさいって」</b><br />　<b>叔母は何度もそう言った。</b><br /><b>「うち、もう子供やない。スーパーで働いた金で自分一人でも生活できていけるわ」</b><br />　<b>敦子は自分自身を励ますように我を通した。最愛の男に裏切られたという心の傷はそう簡単には癒えない。いくらだらしのない男だったとはいえ、なかなかあきらめきれなかった。心のどこかに、よりを戻せないかという気持ちが残っていたのは確かだ。</b><br /><br /><div>　<b>ある日のこと、大阪に就職した同級生から電話があった。</b></div><b>「あっちゃん話聞いたわよ。あんな男と別れて正解よ。私らの一年下のハルナともつきあっていたらしいわよ」</b><br />　<b>男は、最低でも三人と同時に交際をしていたらしい。</b><br /><b>「ところで、私の勤めている化粧品会社が、簿記の出来る人を探しているけど来ない」</b><br />　<b>うつろな返事を繰り返していた敦子は、前向きに考えてみると返事をした。会社の方で宿舎も用意してくれるという。仲の良かった同級生と一緒に働けるというのも心強い。どこか遠くに行きたいという気持ちも重なって、大阪に行くことを決めた。叔母には迷惑をかけると思ったが、書き置きだけして飛び出した。相談すると父も巻き込んでまた一悶着が起こる。</b><br /><br /><div>　<b>数日後、叔母から勤め先の会社に電話があった。父が敦子に渡せと言って、叔母に百万円を預けたという。親子の縁を切る意味かもしれない、とその時は思った。今だにその金は手つかずのまま口座に眠っている。</b></div><br /><div>　<b>その後、敦子が帰郷したのは十五年のうちに、四、五回と記憶する。父が足を骨折した時と、叔母が亡くなった時、後はよく覚えていない。さすがに、父とのわだかまりは歳月とともに少しずつ溶解したように思う。が、確実にあの一件以来父は極端に口数が少なくなったし、自分に対する接し方も、何かよそよそしい。もっとも父と娘の関係は、大人になるとこのような雰囲気になるのがどこの家庭においても普通なのかもしれないが。</b></div><br /><div>　<b>敦子は今、お得意先で知り合った丸山直弘とつきあっている。直弘が偶然にも和歌山の海南市出身ということもあり、急速に仲を深めた。</b></div><b>「貴志川の鮎が届いたって」</b><br />　<b>電話の向こうで、直弘の声が弾む。</b><br /><b>「父が送ってきたのよ」</b><br /><b>「へー、お父さんって鮎を釣るのか。すごいな」</b><br />　<b>直弘は早速その晩、敦子のアパートを訪れた。</b><br /><b>「貴志川かぁ。久しぶりやな」</b><br />　<b>直弘は言い終わるが早いか、焼きたての鮎にかぶりついた。</b><br /><b>「うめえ、最高だよこれ」</b><br />　<b>貴志川の鮎は、白身で淡泊なうえにほんのりとした甘みがある。</b><br /><b>「あたしは夏になるとおかずは鮎やったから。いつもカレーライスやシチューが食べたいって、よく父を困らせたわ」</b><br />　<b>敦子は頬を緩めて箸を動かした。</b><br /><b>「夏になるとよく送ってきていたのかい？」</b><br />　<b>敦子はそっけなく首を振った。</b><br />　<b>直弘は、フーンと言いながら忙しく鮎をほおばっている。</b><br /><b>「あたし、父とは未だ完全に仲直りできていないと思うのよ。高校出るときにケンカしちゃったままね」</b><br />　<b>敦子は短く舌をペロッと出した。</b><br /><b>「帰ってこいっていうサインじゃないのか。仲直りしたくってさ。久しぶりに帰ってあげなよ」</b><br /><b>「何もないのに帰るなんてありえないわ。うちの父ってものすごい頑固者なんよ。あたしの事なんて一生許してなんかくれないわ」</b><br />　<b>言いながらも敦子の気持ちは揺らいでいる。最後に帰ったのはいつだったろう。やがて、直弘とのことを父に話さないといけない時期は来る。その時、父はどのような反応を示すのだろうか。</b><br /><b>「確か二週間後の七月二十日が海の日で三連休だったわね」</b><br />　<b>敦子はカレンダーに目をやった。</b><br /><b>「そこちょうど俺もあいてるよ。一緒に行こうか」</b><br /><b>「だめだめ。うちのお父さんは難しい人なのよ。いきなり行ったら追い返されるにきまっているわ」</b><br /><b>「じゃあ電話で前もって伝えたらどうかな」</b><br /><b>「耳が病気で遠いのよ。込み入った話なんかはすぐにいき違って混乱するわ。怒鳴られて終わりよ」</b><br />　<b>敦子の慌てぶりに、直弘は苦笑いをした。</b><br /><b>「じゃあ、久しぶりに三連休に帰ってみるわ」</b><br />　<b>敦子は細めた目を直弘に合わせた。</b><br /><br /><div>　<b>海南駅からは路線バスに乗って帰郷することにした。つづら折りの山道を抜けて最寄りのバス停を降りると、貴志川には数人の釣り人が並んでいた。ひょっとしたらと思ったが、父らしき釣り人を見つけることはできなかった。敦子はゆっくりとした足取りで、実家へと続く小道を土産物を下げて歩いた。どこからか声がする。畑を探すと頬被りの女性が手を振った。近所の清子おばさんだ。</b></div><b>「帰ってきたんかのし」</b><br />　<b>清子おばさんは腰を伸ばして相好を崩した。</b><br /><b>「ええ、父がいつもお世話になってます。お元気でしたか」</b><br />　<b>大人びた挨拶を返した。</b><br /><b>「敦子ちゃん、えろうべっぴんさんになって。すっかり垢ぬけて女優さんかと思うたやして」</b><br />　<b>清子おばさんは真っ白な歯を覗かせた。若い頃は村人に会うのが嫌でたまらなかった。駆け落ちをした自分が、村人から何を言われどのような目で見られるのかが怖かった。十五年の歳月はそんな気持ちを薄め霧散させているようだ。むしろ、懐かしい人と会って話をしてみたいという気持ちにさえなっていた。</b><br /><b>「そうそう、今うちには誰もおらんのやして。お父さんは朝早うから鮎釣りに行きよったんで、まあ昼には戻ってくると思うけど」</b><br />　<b>そう言うと、清子おばさんはまた畑にしゃがみ込んだ。</b><br /><br /><div>　<b>家に着くと父の軽トラがなかった。田舎の家には鍵を掛ける習慣がない。敦子は真っ先に仏壇の母に手を合わせた。懐かしい家のにおいがする。男の一人暮らしにしてはよく片付いている。洗濯物もちゃんとたたまれているし、台所も整頓されている。もっとも父は昔っから几帳面ではあった。それにしても、花瓶に花まで生けてあるのが少し女々しい気もした。</b></div>　<b>敦子は庭の一角にあるプレハブの小屋に向かった。中学生の時、父にねだって作ってもらった自分の部屋だ。扉に手を掛けると鍵がかかっていた。窓の隙間から覗くと、やはり家を飛び出した頃のままで何も変わっていない。壁に貼ったあこがれのタレントのポスターがじっとこちらを睨んでいる。ダーツの矢が何本か壁に刺さったままだった。　</b><br />　<b>同級生らと騒いだ日々が脳裏に蘇る。前に帰ってきたときもそのままにしてあった。父から「自分で片付けろ」とだけ言われたのを思い出す。父にすれば娘の散らかった部屋をどう片付けていいのか分からないのだろう。まるで聖域のように時間が止まったままの空間に、敦子の胸は懐かしさと同時にどこか締め付けられるような思いがした。</b><br />　<b>ふと見るとプランターの横に見慣れぬものが転がっている。近寄ると大きな鹿の角らしかった。角は先端が一カ所、のこぎりか何かで切り取られている。何のためのものかは分からないが、父が何かに使ったのだろう。</b><br />　<b>ほのかに安堵感が漂った。父は楽しく暮らしているようだ。夏は鮎釣りに興じ、冬は鹿狩りに奔走しているのだろう。家を出て良かったとさえ思えた。お互い、一人のほうが何の気兼ねもなく自由な時間を過ごせる。いざとなったら半日で会いに帰って来られるのだ。なまじ自分がそばに居ると、やれ部屋を散らかすなとか、女らしくきれいな服を着ろだとか、しまいには早く結婚しろとせき立てられるのが目に見えている。</b><br /><div><b><br /></b></div><div><b>「あっちゃん、帰ってきたんかい」</b></div>　<b>軽トラが止まって聞き覚えのある声が響いた。同級生の拓也が鮎釣りの格好をして顔を覗かせる。</b><br /><b>「あら、たくぼう。全然変わらんねえ」</b><br /><b>「なんでや。ここ、あがったやろ」</b><br />　<b>拓也は帽子を取ると、額をピシャリと叩いて笑った。</b><br /><b>「おやじさん、ダルマ岩の上手で釣りよったで」</b><br />　<b>拓也は忘れ物を取りに帰って来たらしい。敦子は拓也に頼んで、父が釣っている場所に案内してもらうことにした。ダルマ岩は車で二十分ほど上流に上ったところだ。地元の釣り人以外はあまり竿を出す場所ではない。</b><br /><b>「あそこの鮎は格別にうまいんや」</b><br />　<b>拓也は忙しくハンドルを切った。</b><br /><b>「この前、おやじさんが三十匹ほど大きいのを釣ったんやしょ」</b><br />　<b>拓也の言う鮎は、この前送られてきた鮎に違いない。ダルマ岩が見え始めた。川の真ん中に大きな岩が居座っている。その上手に微かに釣り人の姿が見えた。鮎竿を前傾姿勢で操っている。車はダルマ温泉の駐車場の端に停まった。</b><br /><div><b><br /></b></div><div><b>「釣れてまっかーっ」</b></div>　<b>拓也の大声が響く。気づいた父が竿を構えたまま振り向く。ダメだという手振りで一瞥すると、また背中を向けて竿を構えた。</b><br /><b>「あっちゃんには気がついてないみたいやしょ。おやじさんだいぶん耳が遠くなったからかなり大声じゃないと聞こえんで」</b><br />　<b>拓也はさらに上流に行くという。</b><br /><br /><div>　<b>敦子は軽トラから降りると、拓也に礼を言って河原への小道を慎重に下った。父は釣りに没頭している。河原は、一抱えもある石で無造作に敷き詰められていた。その石に乗っては飛び越え、父にそっと近づいた。傍らまで来ても父は気がつかない。</b></div><b>「お父さーん」</b><br />　<b>敦子はありったけの声を出した。振り向いた父は目を剥いて動きを止めた。笑顔はない。頬がこけて体が一回り小さくなったような気がする。頑固親父という迫力が、いささか和らいで見えた。</b><br /><b>「いつ帰っとったんな」</b><br />　<b>太いかすれ声が返ってきた。父が釣り竿を肩に担ぎこちらに寄ってくる。</b><br /><b>「さっき帰ったの」</b><br />　<b>敦子は目を細めながら答えた。</b><br /><b>「帰るときは連絡ぐらいよこさんか」</b><br />　<b>父の顔は、目玉の白いところ以外は真っ黒だ。</b><br /><b>「拓也に乗せてきてもろうたんか」</b><br />　<b>父は上の道路にあごをしゃくった。うん、と言って敦子は石の上に座り込むと靴を脱ぎ始める。</b><br /><b>「水、冷たいの？」</b><br /><b>「九月に入って冷えたんや」</b><br />　<b>敦子は石の上からそっとつま先を浸した。</b><br /><b>「わあ、冷たい」</b><br />　<b>足の芯までしびれるようだ。目を凝らすと、透き通った川の中に無数のメダカが泳いでいた。</b><br /><b>「お父さん、アミ貸して」</b><br />　<b>言うが早いか、敦子は父の腰にあったタモ網を奪った。タモ網の柄の端に鹿の角が取り付けられている。その角を握ってメダカを追い回した。</b><br /><b>「敦子。雨がくるぞ」</b><br />　<b>父は空を仰ぐと竿をたたみ始めた。確かに、怪しい雲が狭い空全体を覆い尽くそうとしている。帰る途中、激しい雷雨に遭った。軽トラのワイパーがきかないほど大粒の雨にたたきつけられた。</b><br /><br /><div>　<b>鮎は六匹釣れていた。</b></div><b>「敦子。七輪に火をおこせ」</b><br />　<b>父は釣ったばかりの鮎に串を刺している。敦子は倉庫に行って七輪と炭を取り出した。子供の頃からずっと使われている七輪で、置き場所も全然変わっていない。昼食は鮎の塩焼きと、敦子の作った味噌汁だけだった。父は満足げに一升瓶を手にした。</b><br /><b>「昼間っから酒飲むの」</b><br />　<b>父は何も聞こえていない風に一升瓶を傾ける。これが退職者の気楽さというものなのか。昼間っから酒を飲んでふて寝しようが、何の制約もない自由人なのだ。父は湯飲みで酒をあおると目を閉じて短く喉を鳴らした。</b><br /><b>「そうじゃ。冷蔵庫にうるかがあったいしょ」</b><br />　<b>うるかとは鮎のはらわたの塩からである。独特の苦みがあり父の大好物だ。敦子は卵と一緒に炒めたものなら食べたが、生のままのうるかにはいつも鼻をつまんで顔を背けていた。取り出してみると子供の頃のような抵抗感はなかった。イカの塩辛だって最近美味しいと思うようになった。敦子は温飯に生のままのうるかをもぶりこんだ。</b><br /><b>「けっこういけるわ」<br />　敦子の様子に父は初めて口元を少し緩めた。</b><br /><b>「仕事は忙しいんか？」</b><br /><b>「まあまあね。もうすっかり慣れて部下もいるわ」</b><br />　<b>久しぶりに会った父は意外に口数が多かった。</b><br />　<b>敦子が中学生の頃、父は突発性難聴という病気になった。右の耳はわずかしか聞こえていない。左の耳も聴力がかなり落ちている。話をすると、とんでもない見当違いの返答をすることがあり、相手から馬鹿と思われるのが嫌だと嘆いたことがあった。一時期、補聴器をしていたがノイズがうるさいとすぐに取りやめた。慣れたら静かな世界の方が良いんや、と潔く言い切る父を見て、本人の言うとおりかもしれないと思った。自分たちは、聞こえすぎて気持ちの沈んだり嫌になったりすることも多くある。聞こえないから気持ち良くいられる、というのはあり得ることかもしれない。そう思って、敦子は放っておいた。</b><br />　<b>その静かな世界を、突如乱したのが自分の駆け落ち騒動だった。以来、父はすこぶる会話の乏しい男になる。当然といえば当然のことなのだが。敦子は思いだすたびに胸の内がチリチリと痛む。今自分ができることは、なるだけ明るく元気に振る舞うことだろうと思った。</b><br /><br /><div>　<b>食事を終え、敦子が洗い物をしようとしたときである。</b></div><b>「ちょっと見せてみろ」</b><br />　<b>父はやおら立ち上がると敦子の手を取った。腕まくりした敦子の白い腕がまだらに赤い。よく見ると赤い斑点がある。</b><br /><b>「お前、河原でハゼの木をつかんだやろ」</b><br />　<b>河原への小道が急で、木をつかみながら降りたことを思い出した。</b><br /><b>「晩にかゆくなるぞ」</b><br /><b>「何日ぐらい続くの？」</b><br /><b>「一週間ぐらいやしょ」</b><br />　<b>九月に入ったので、職場では長袖で通せばいい。</b><br /><b>「お前はお母に似んでもええところまで似てしもうたんやして」</b><br />　<b>母もこのような体質だったのだろうか。</b><br /><b>「お化け杉のヤニでも取ってきちゃるか」</b><br /><b>「なにそれ？」</b><br /><b>「巻の谷にある樹齢八百年の大杉じゃ」</b><br />　<b>中学の時、先生からその話を聞いたことを思い出した。遠足で生徒たちに行かせたいが、道が険しく中学生でも無理だと言っていた。拓也から男子数人で行ったことを自慢されたこともある。その杉のヤニが効くというのか。迷信だとは思うが、なにより、そのお化け杉とやらが一目見たいと言う気持ちに駆られた。</b><br /><b>「それって効くの？」</b><br /><b>「お母はそれを塗るとすぐに治った」</b><br /><b>「じゃあ、あたしもそこに連れてって」</b><br /><b>「巻の谷を越えんといかんぞ」</b><br />　<b>父は敦子の体を頭から足先まで計るように見た。</b><br /><b>「あたし、とっくにお父さんより背が高いんやで」</b><br />　<b>力こぶのポーズを見せると、父は口の端だけを僅かに緩めた。巻の谷は、昼前の雨で増水しているだろう。このまま雨が降らず、明日晴れれば行けるはずだ。</b><br /><b>「明日行けるかな？」</b><br /><b>「ああ、晴れたらやしょな」</b><br />　<b>父は俯いて白髪頭を手串でといた。</b><br /><br /><div>　<b>敦子は寝る前にスマホで杉のことを調べてみた。どうやら杉のヤニが皮膚病に効くというのはあながちでたらめではないようだ。</b></div>　<b>樹脂にはクリプトメリン酸などを含有していて、皮膚や粘膜を保護し消炎させる作用がある。幹からしみ出る樹脂を生薬名で杉脂と書いて「さんし」と呼ぶらしい。</b><br />　<b>村人に科学的な根拠は必要ない。経験的に得た効果が連綿と語り継がれてきたのだ。杉などの植物は「生き物」と呼んだ方がいいとも載っている。八百年も生きてきたのだ。人知を超えるような治癒力がなければ、生きながらえるはずがない。</b><br /><br /><div>　<b>翌朝、曇天ながらときおり薄日がさしていた。降水確率は四十パーセントだ。天気は午後から回復するらしい。敦子は弁当を作ってリュックに詰めた。念のためカッパも持った。</b></div>　<b>巻の谷は、ダルマ岩から半時間ほど上流に行ったところにある。でこぼこ道のカーブをいくつもまわると。水面に浮かぶようなコンクリート製の橋が見えてきた。沈下橋だ。はじめから増水時には沈むように設計されている。</b><br />　<b>軽トラは、手すりもない狭い沈下橋を歩くほどの速度で渡った。坂を上ると眼下に巻の谷が見える。本流と合流するところで谷幅を広げて大きな淵になっていた。風で舞い落ちた雑木の葉が、翡翠色の水面に揺れひしめいている。</b><br /><br /><div>　<b>父はリュックを背負うと「登るぞ」とだけ言って、谷沿いの小道に分け入った。敦子も続く。勾配がきつく小枝をつかんで登った。今度は軍手をしている。五分ほど登ると谷幅が急に狭くなった。一番深いところで敦子の腰ぐらいだ。三つほど大石を飛び越えれば対岸に渡れる。</b></div><b>「いけるかっ」</b><br />　<b>父は敦子を振り返った。敦子はしっかり頷くと「私が先に行くわ」と父を押しのける。最後の岸までが少し距離があったが敦子は難なく飛び越えた。父は、もって来た胴長靴を履くと最後は太ももまで浸かって渡りきった。</b><br /><br /><div>　<b>しばらく平坦な道が続く。頭上はうっそうとした雑木で、木漏れ陽が煌めいている。九月になったばかりなのに風が冷たい。登りで汗ばんだ敦子の体温は急速に冷めた。小道はまた急な登り坂になる。時に四つん這いになり、足下を滑らせながら登り切った。　　</b></div><b>　突然空が開け、眼下に草原が広がった。</b><br /><div><b><br /></b></div><div><b>「あれやしょ」</b></div>　<b>父が指をさす方に敦子は立ち上がって視線を向ける。思わず「うわっ」と声が出た。巨大な老木がこちらをジッと睨んでいる。イメージしていた杉とはかけ離れた姿だ。高さは三階建ての家ほどはあるだろう。が、高さよりかは奇怪で無造作に広がった幹や枝に圧倒される。</b><br />　<b>二人はお化け杉に近づいた。幹は、大人が手を伸ばして囲んでも五、六人ではきかない。幹の肌は朽ちてささくれ、醜い腫瘍だらけの老婆を連想させる。見上げると、途中から幹が水平方向に割れ爆ぜて、大小の枝が得体の知れぬ生物のように四方八方に伸びて空を隠していた。</b><br />　<b>敦子は見上げたまま息をのんだ。</b><br /><div><b><br /></b></div><div><b>「スプーンと瓶を出せ」</b></div>　<b>感嘆する敦子をよそに、父はヤニの採取を黙々と始めた。八百年の時間は、敦子には途方過ぎて想像し得ない。ただ、自分の生きた三十三年間が、ものすごくちっぽけで些細に思えた。父は未だ怒っているのだろうか。ひょっとしたら、わだかまりを引きずっているのは自分の方だけなのかもしれない。鼻の頭に水滴が落ちた。父が天を仰ぐ。灰色の雲がちぎれては足早に流れている。</b><br /><b>「一雨来るぞっ」</b><br />　<b>父は採取したヤニをリュックに納めると、急いでカッパを着た。引き返すと、巻の谷は予想以上に増水していた。上流部で雨がたくさん降ったのだろう。落ち下る谷の飛沫が、二人の顔に降りかかる。</b><br /><b>「無理やな」</b><br />　<b>父はため息をついた。</b><br /><b>「どうなるの？」</b><br />　<b>敦子が少し頬を引きつらせる。</b><br /><b>「かなり遠回りになるが、林鉄の道を通って帰るしかあるまい」</b><br />　<b>林鉄とは、かつて木材を運んだ森林鉄道のことだ。敦子は地理的なものが分からないので、父に従うしかなかった。来た道を引き返し、お化け杉とは反対の方向の道を降りた。雨はすっかり上がっていた。カッパに蒸れて汗が出る。</b><br /><b>「ちょっと休むぞ」</b><br />　<b>父は切り株を見つけて腰を下ろした。敦子も適当な切り株を見つけて座った。二人は、リュックから弁当を取り出して広げた。いつの間にか広大な杉林の中にいる。すらりと天に伸びる杉が空間全体を支配していた。荒い息が徐々に収まる。湿気を帯びた杉の香りが鼻の粘膜に粘り付く。ときおりピシッという乾いた音が辺りを走った。</b><br /><b>「何の音？」</b><br />　<b>敦子がおにぎりをほおばりながら訊く。</b><br /><b>「杉の成長する音やして」</b><br />　<b>父は表情を変えずに言った。</b><br /><b>「ここから二時間ほどはかかるぞ」</b><br />　<b>父は立ち上がると腰をパンパンとはらった。植林された杉林は延々と続く。一時間ほど下ったところでやっと景色が開けた。二人は車一台が通れるほどの道に出た。</b><br /><b>「林鉄の後やして」</b><br /><br /><div>　<b>よく見ると朽ちた枕木が一定間隔で並んでいる。レールはなかった。二人は、草の生えたバラスを踏んで歩いた。途中で小さな横道にそれる。近道なのだろう。父は両脇の草を手でかき分けた。時々その背中が隠れることもある。刹那、敦子に微かな記憶が閃いた。</b></div><b>「あたしはここに来たことがある」</b><br />　<b>それは敦子の一番古い記憶だった。誰かに背負われて男の人を追いかけている自分だ。それは父ではなかっただろうか。そして、背負われていたのは･･････、そう女性！　母の背中に違いない。</b><br /><b>「そんなことまで覚えとんのか」</b><br />　<b>父は立ち止まると目を丸くした。</b><br /><b>「三つの時やしょ」</b><br /><div>　<b>父は遠くを見るような目で語り始めた。</b></div><br /><div>　<b>敦子の母はかしきをしていた。かしきとは山師の飯炊きのことである。杉の木を切る男たちは十人ほどがチームになって、山小屋で半年ほど暮らす。その飯炊きとして敦子の母は働いていた。</b></div>　<b>山小屋に泊まる期間は、敦子は村の自宅で祖父母に預けられていた。三歳になった頃、敦子は「あつも山小屋に行く」と言ってだだをこねた。祖父母はしきりに止めたが、敦子が毎夜泣きじゃくってしかたない。ついに祖父は、敦子を両親の居る山小屋にまで連れて行った。母はたいそう喜んだ。忙しくなっても敦子と一緒に居られることがなによりの幸せだと笑顔を周囲に振りまいた。</b><br /><br /><div>　<b>敦子は初めて聞く父の話に耳を傾ける。</b></div><b>「母は山仕事の事故で亡くなったんでしょう。それがここなの」</b><br />　<b>父は口を結んでこっくりと頷いた。</b><br /><b>「お前はコクワの実が好きやった」</b><br /><b>「コクワ？」</b><br /><b>「ああ、山にある美味しいツルの実やしょ」</b><br />　<b>それが母の死とどう関係あるのか。敦子は父の話を神妙に待った。山風がザワザワと騒ぎ立てる。</b><br /><b>「ある日、お前は一人でコクワの実を取りにでかけたんやして」</b><br />　<b>母は血相を変えて敦子を捜し回った。どこにも見つからず思案し、ひょっとしたらこの前食べさせたコクワの実を取りに行ったのではないかと気づき、その場所に向かう。やがて母の声が敦子に届く。敦子は必死で山の斜面を滑り降りた。突然ファーファーという大きな警笛が山に響き渡る。敦子は森林鉄道の軌道にいた。機関車が呆然と立ち尽くす敦子に迫る。疾走する母の手が間一髪で敦子の腕をつかんだ。線路の脇に転がった二人は抱き合ったまま動かない。ギギーッと言う鈍い音と共に機関車が止まる。カーブに傾いた車両の揺れが止まらない。二人が機関車を見上げた時、ブチンというワイヤーの外れる音がした。母はとっさに敦子に覆い被さった。巨大な杉の丸太が次々と落下する。</b><br />　<b>異変に気づいた山の男たちが降りてきた時には、敦子の母は息絶えていた。敦子は母に覆われてかすり傷だけで済んだ。辺りにはコクワの実が散乱し、敦子は突っ伏したまま泣きじゃくるばかりだった。</b><br />　<b>父の話が終わると敦子はその場に崩れた。両手をついて嗚咽し子供のようにわめいた。</b><br /><b>「ワシのせいや。ワシがもっとワイヤーロープをしっかりと締めておけばよかったんや」</b><br />　<b>父は俯いたまま拳を握りしめた。</b><br /><br /><div>　<b>押し黙ったまま延々と軌道を歩く二人に、西陽が当たる。足下の方から川のせせらぎが聞こえた。本流に出たのだ。雑木の切れ目に沈下橋が見えた。気がつくと前を行く父が少しびっこを引いている。</b></div><b>「お父さん足大丈夫？」</b><br /><b>「ああ、大丈夫やして」</b><br />　<b>沈下橋にさしかかったところで、父はいよいよ右足の調子が悪くなった。敦子が父の前に回り込むと背中を向ける。</b><br /><b>「ほら、おぶってあげるわよ。帰り、運転もしてあげるし」</b><br /><b>「かまわんかまわん。人に見られたらみっともないやしょ」</b><br />　<b>父は抵抗した。</b><br /><b>「こんなとこ、誰もいないわよ。ほら」</b><br />　<b>敦子はしゃがみながら父の腰に手を回した。軽トラはもう見えている。父は観念したように敦子の背中に覆い被さった。</b><br /><b>「軽い。お父さん毎日ご飯食べてんの」</b><br /><b>「鮎釣りの時期は体重が落ちるんやして」</b><br />　<b>父は照れくさそうに言った。若い敦子にこのおんぶは全く負担にならない。</b><br /><b>「お父さん･･････」</b><br /><b>「なんや」</b><br />　<b>敦子は言い出そうとした言葉をいったん飲み込んだ。</b><br /><b>「私･･････、結婚しようと思うのよ」</b><br />　<b>父の反応はなかった。</b><br /><b>「今の聞こえた？」</b><br /><b>「ああ」</b><br />　<b>父はくぐもった声を返した。</b><br /><b>「大阪で働いてるけど、海南市出身の人よ。私と同い年なの」</b><br />　<b>父はしばらく間を置いた。二人をアキアカネの群れが舞い囲む。</b><br /><b>「良かったな」</b><br />　<b>初めて聞く父の柔らかな声色だった。</b><br />　<b>山鳥の羽音に敦子は顔を上げた。遠くの稜線が西陽を浴びて浮き上がる。</b><br /><b>「敦子･･････」</b><br /><b>「なん？」<br />「ワシも結婚していいか？」</b><br />　<b>敦子の足がピタリと止まった。</b><br /><b>「お、お父さん･･････いいに、いいに決まっているでしょう」</b><br />　<b>敦子は視線が定まらない。</b><br /><b>「で、あ、相手は誰なの？」</b><br /><b>「ほら、近所の清子婆や」</b><br />　<b>敦子の体は嬉しさで波打った。</b><br /><b>「母さんには申し訳ないやして」</b><br />　<b>父のかすれた声が耳元で響く。</b><br /><b>「何言ってんの、きっと母さんも喜んでくれるはずよ。私たち二人とも幸せになるんだから」</b><br /><div>　<b>敦子は目をしばたたかせながら父をしっかりと背負い直すと、草の生い茂った小道を一歩一歩踏みしめながら軽トラックへと向かって行った。</b></div><div><b><br /></b></div><div><b>　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　了</b></div><div><b><br /></b></div><div><b><br /></b></div><div><b><div>【ガバチャ・マップ】　(有田川ダム上の鮎釣り駐車場マップはこのマップの中にビルトインしました。また、Koji Ohtaさんの作った七川の釣り場マップもリンクしています。)<br /><iframe src="https://www.google.com/maps/d/u/0/embed?mid=1tCrLCg81SKT2FRWkzjdvCoSrMhtEzQU&amp;ehbc=2E312F" width="640" height="480"></iframe></div><br /><div><b>釣りガバch</b></div><br /><div><img  border="0" height="373" hspace="5" width="640" src="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/d/5/d596b712-s.png" alt="キャプチャ" class="pict"></div><br /><br /><a  title="" target="_blank" href="https://clear-cube.info/"><br /></a><div><a  href="https://gabacha123.amenityspace.co.uk/" target="_blank" title=""><div><b>釣りキチ三子のブログもよろしく(^^♪</b></div><div><img  border="0" height="345" hspace="5" width="640" class="pict" alt="キャfプチャ" src="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/3/b/3b26ca4f-s.png"></div></a><div><a  href="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/3/b/3b26ca4f.png" title="キャfプチャ" target="_blank"></a><br /><br /></div><br /><div><span  style="font-size: 150%;"><b></b></span></div><a  title="" target="_blank" href="http://livedoor.gabacha.net/"><div><span  style="font-size: 100%;"><b>柴崎おとり店ブログもよろしく(^^)/</b></span><br /></div><div><img  border="0" height="320" hspace="5" width="640" src="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/b/6/b62a4614-s.jpg" alt="25a8f854" class="pict"></div></a><div><a  target="_blank" title="25a8f854" href="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/b/6/b62a4614.jpg"></a></div><br /><br /><br /></div><br /><br /><br /><br /><br /><br /><div><a  title="" target="_blank" href="http://sabuch.schoolbus.jp/wordpress/"><div></div></a></div><br /><br /></b></div>]]>
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<title>小説「神無月の頃」を朗読でYouTubeにアップロード</title>
https://gabacha123.amenityspace.co.uk/archives/38598305.html</link>
<description>　関東出身の野原圭さんに　ガバチャが書き下ろした小説を朗読してもらいました。「神無月の頃」　圭さん、和歌山弁上手でしたよ～(*´ω｀)　朗読しながら内容に引き込まれていったとの嬉しいレビューまでいただきました。　以前ブログに載せていたので読んでいただいた方も...</description>
<dc:creator>gabacha123</dc:creator>
<dc:date>2023-10-23T20:32:22+09:00</dc:date>
<dc:subject>ガバチャの小説</dc:subject>
<content:encoded><![CDATA[<div>　関東出身の野原圭さんに</div><div>　ガバチャが書き下ろした小説を朗読してもらいました。</div><div>「神無月の頃」</div><br /><div>　圭さん、和歌山弁上手でしたよ～(*´ω｀)<br /></div><div>　朗読しながら内容に引き込まれていったとの嬉しいレビューまでいただきました。<br /></div><br /><div>　以前ブログに載せていたので読んでいただいた方も結構いらっしゃるとは思いますが</div><div>　朗読はまた違った趣を与えてくれるものだと思います。<br /></div><br /><div>　寝る前あるいはドライブでもしながら気楽にお聴きいただけるとありがたく存じます。</div><div>　１時間もあるので気長に聴いてください。<br /></div><div>　</div><div>　理工系の私が書いたエンタメとミステリーの中間小説です。</div><div>　何卒よろしくお願いいたします(*´ω｀)</div><br /><br /><div><iframe  height="315" width="560" src="https://www.youtube.com/embed/cFzBeiqgS4I?si=wrrl4Mp61Zawk3oP" allowfullscreen="" frameborder="0" style="vertical-align:top;" allowfullscreen></iframe><br /></div><br /><br /><br /><br /><br /><br /><div><div>【鮎釣り河川状況マップ】　<br /><iframe src="https://www.google.com/maps/d/u/0/embed?mid=1tCrLCg81SKT2FRWkzjdvCoSrMhtEzQU&amp;ehbc=2E312F" width="640" height="480"></iframe></div><br /><div><b>釣りガバch</b></div><br /><div><img  border="0" height="373" hspace="5" width="640" src="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/d/5/d596b712-s.png" alt="キャプチャ" class="pict"></div><br /><br /><a  title="" target="_blank" href="https://clear-cube.info/"><br /></a><div><a  href="https://gabacha123.amenityspace.co.uk/" target="_blank" title=""><div><b>釣りキチ三子のブログもよろしく(^^♪</b></div><div><img  border="0" height="345" hspace="5" width="640" class="pict" alt="キャfプチャ" src="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/3/b/3b26ca4f-s.png"></div></a><div><a  href="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/3/b/3b26ca4f.png" title="キャfプチャ" target="_blank"></a><br /><br /></div><br /><div><span  style="font-size: 150%;"><b></b></span></div><a  title="" target="_blank" href="http://livedoor.gabacha.net/"><div><span  style="font-size: 100%;"><b>柴崎おとり店ブログもよろしく(^^)/</b></span><br /></div><div><img  border="0" height="320" hspace="5" width="640" src="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/b/6/b62a4614-s.jpg" alt="25a8f854" class="pict"></div></a><div><a  target="_blank" title="25a8f854" href="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/b/6/b62a4614.jpg"></a></div><br /><br /><br /></div><br /><br /><br /><br /><br /><br /><div><a  title="" target="_blank" href="http://sabuch.schoolbus.jp/wordpress/"><div></div></a></div><br /><br /></div>]]>
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<title>貴志川　今シーズン初釣行</title>
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<description>紀ノ川の支流貴志川も水が少なすぎてチャビチャビです。川を見ていると唯一の深場に鵜が潜っていたので運動会の鉄砲で追い払ってやりました。さて、この貴志川砂漠で鮎釣りになるものかどうか・・・・と思案していたところあたしらの造った魚道見てってよ♪と、ナナちゃんが...</description>
<dc:creator>gabacha123</dc:creator>
<dc:date>2022-06-25T21:21:33+09:00</dc:date>
<dc:subject>ガバチャの小説</dc:subject>
<content:encoded><![CDATA[紀ノ川の支流貴志川も<div>水が少なすぎてチャビチャビです。</div><div><a  href="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/0/0/0039d19c.jpg" title="PXL_20220624_235135154" target="_blank"><img  src="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/0/0/0039d19c-s.jpg" alt="PXL_20220624_235135154" class="pict" width="639" hspace="5" height="480" border="0"></a><br /></div><br /><div>川を見ていると</div><div>唯一の深場に鵜が潜っていたので運動会の鉄砲で追い払ってやりました。</div><div><a  href="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/b/9/b927d9f1.jpg" title="PXL_20220625_003851067" target="_blank"><img  src="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/b/9/b927d9f1-s.jpg" alt="PXL_20220625_003851067" class="pict" width="639" hspace="5" height="480" border="0"></a><br /></div><br /><div>さて、この貴志川砂漠で鮎釣りになるものかどうか・・・・</div><div>と思案していたところ<a  href="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/0/c/0c4d25b7.jpg" title="PXL_20220625_003956666" target="_blank"><img  src="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/0/c/0c4d25b7-s.jpg" alt="PXL_20220625_003956666" class="pict" width="639" hspace="5" height="480" border="0"></a><br /></div><br /><div>あたしらの造った魚道見てってよ♪</div><div>と、ナナちゃんが言うので</div><br /><div>支度して一緒に河原に降りました(*´ω｀)</div><div><a  href="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/7/7/77a6c550.jpg" title="PXL_20220625_013046086" target="_blank"><img  src="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/7/7/77a6c550-s.jpg" alt="PXL_20220625_013046086" class="pict" width="639" hspace="5" height="480" border="0"></a><br /></div><br /><div>この魚道</div><div>いろいろ鮎が登りやすいようにと考えて造ったとのこと。</div><div><a  target="_blank" title="PXL_20220625_013316656" href="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/2/a/2abd6861.jpg"><img  class="pict" alt="PXL_20220625_013316656" src="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/2/a/2abd6861-s.jpg" width="639" hspace="5" height="480" border="0"></a><br /><br /></div>て、おいおい魚道で遊ぶなぁぁぁ～( *´艸｀)<a  href="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/3/c/3ccfdca2.jpg" title="PXL_20220625_013151751" target="_blank"><img  src="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/3/c/3ccfdca2-s.jpg" alt="PXL_20220625_013151751" class="pict" width="639" hspace="5" height="480" border="0"></a><br /><br /><div>えっ！</div><div>おいらが一番遊んでたぁぁあ～( *´艸｀)</div><div><a  href="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/4/2/42ddb0ca.jpg" title="PXL_20220625_013219412" target="_blank"><img  src="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/4/2/42ddb0ca-s.jpg" alt="PXL_20220625_013219412" class="pict" width="639" hspace="5" height="480" border="0"></a><br /></div><br /><div>ナナちゃん、子供みたいに遊び疲れたみたいやな( *´艸｀)</div><div><a  target="_blank" title="PXL_20220625_015346596" href="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/7/8/78754eae.jpg"><img  class="pict" alt="PXL_20220625_015346596" src="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/7/8/78754eae-s.jpg" width="639" hspace="5" height="480" border="0"></a><br /></div><br /><div>せっかく来たんで</div><div>おいら、鮎釣りしまっせー(^^)/</div><div><a  target="_blank" title="PXL_20220625_022207825" href="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/3/a/3a113cae.jpg"><img  class="pict" alt="PXL_20220625_022207825" src="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/3/a/3a113cae-s.jpg" width="639" hspace="5" height="480" border="0"></a><br /></div><br /><br /><div>て</div><div>鮎はうようよいるけれど・・・いっちょもハリに乗ってけーへんの。</div><div>よー見ると、ちゃんとソーシャルディスタンスとって泳いでますね～( ﾟДﾟ)</div><br /><div>たまにドカンピュ</div><div>て、ひったくられるようなアタリがあるとまぁまぁな型が出たりします。</div><div><a  target="_blank" title="PXL_20220625_024830608" href="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/7/1/7116b45a.jpg"><img  class="pict" alt="PXL_20220625_024830608" src="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/7/1/7116b45a-s.jpg" width="639" hspace="5" height="480" border="0"></a><br /></div><br /><div>結局薬局放送局</div><div>雷のピカゴロリンがとどろきデベソ隠して退散でーす( ﾟДﾟ)</div><br /><div>時計を見ると１６時</div><div>数えてみると１６匹掛けていました。</div><div><a  target="_blank" title="PXL_20220625_073031783" href="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/2/3/23688c8b.jpg"><img  class="pict" alt="PXL_20220625_073031783" src="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/2/3/23688c8b-s.jpg" width="361" hspace="5" height="480" border="0"></a><br /></div><br /><div>ナナちゃん、唐揚げにしなさい。</div><div>と、持って行ってアイスコーヒーなど頂きました(*´ω｀)</div><br /><div>貴志川は鮎はぎょーさんいるので</div><div>増水したら水中から火花がスパークするほどのケンカ祭りが始まることでしょう。</div><br /><div>その時は、覚悟しておけよ～。</div><div>おいらのリベンジはハンパねえぜぇええー！</div><br /><div>ナナちゃん今日は楽しかったわ。</div><div>ありがとうやデー(^^)/<br /></div><br /><div><a  target="_blank" title="Screenshot_20220625-204727" href="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/a/a/aa8603ee.jpg"><img  class="pict" alt="Screenshot_20220625-204727" src="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/a/a/aa8603ee-s.jpg" width="504" hspace="5" height="480" border="0"></a><br /><br /></div><div><a  title="" target="_blank" href="https://gabacha123.amenityspace.co.uk/"><div><b><br /></b></div><div><b><br /></b></div><div><b>釣りキチ三子のブログもよろしく(^^♪</b></div><div><img  src="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/3/b/3b26ca4f-s.png" alt="キャfプチャ" class="pict" width="640" hspace="5" height="345" border="0"></div></a><div><a  target="_blank" title="キャfプチャ" href="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/3/b/3b26ca4f.png"></a><br /><br /></div><br /><div><span  style="font-size: 150%;"><b></b></span></div><a  href="http://livedoor.gabacha.net/" target="_blank" title=""><div><span  style="font-size: 100%;"><b>柴崎おとり店ブログもよろしく(^^)/</b></span><br /></div><div><img  class="pict" alt="25a8f854" src="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/b/6/b62a4614-s.jpg" width="640" hspace="5" height="320" border="0"></div></a><div><a  href="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/b/6/b62a4614.jpg" title="25a8f854" target="_blank"></a></div><br /><br /><br /></div><br />]]>
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<title>潜水艦ヒキブネが活躍しているようですネ( ﾟДﾟ)</title>
https://gabacha123.amenityspace.co.uk/archives/26014585.html</link>
<description>以前も記事にしましたがガバチャも地球温暖化の波に押されて作ってみることにいたします。フロートを取り除いた沈むヒキブネです。ヒガポンはガマのスケルトンで自作しておりました。一見、普通のヒキブネかと思いきや・・・。押して沈めるとこんな感じで完全に沈没いたしま...</description>
<dc:creator>gabacha123</dc:creator>
<dc:date>2020-08-25T21:13:39+09:00</dc:date>
<dc:subject>ガバチャの小説</dc:subject>
<content:encoded><![CDATA[<div>以前も記事にしましたが</div><div>ガバチャも地球温暖化の波に押されて作ってみることにいたします。</div><br /><div>フロートを取り除いた沈むヒキブネです。</div><br /><div>ヒガポンはガマのスケルトンで自作しておりました。</div><div><a  target="_blank" title="IMGA0093" href="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/b/8/b842dcf8.jpg"><img  class="pict" alt="IMGA0093" src="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/b/8/b842dcf8-s.jpg" width="640" hspace="5" height="480" border="0"></a><br /></div><br /><div>一見、普通のヒキブネかと思いきや・・・。</div><div><a  target="_blank" title="IMGA0098" href="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/f/6/f67e8505.jpg"><img  class="pict" alt="IMGA0098" src="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/f/6/f67e8505-s.jpg" width="640" hspace="5" height="480" border="0"></a><br /></div><br /><div>押して沈めると</div><div><a  target="_blank" title="IMGA0100" href="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/b/6/b69c49d7.jpg"><img  class="pict" alt="IMGA0100" src="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/b/6/b69c49d7-s.jpg" width="640" hspace="5" height="480" border="0"></a><br /></div><br /><div>こんな感じで</div><div><a  target="_blank" title="IMGA0096" href="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/e/a/ea1ed25c.jpg"><img  class="pict" alt="IMGA0096" src="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/e/a/ea1ed25c-s.jpg" width="640" hspace="5" height="480" border="0"></a><br /><br /></div><br /><div>完全に沈没いたします( ﾟДﾟ)<br /><a  target="_blank" title="IMGA0101" href="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/6/f/6f62f82b.jpg"><img  class="pict" alt="IMGA0101" src="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/6/f/6f62f82b-s.jpg" width="640" hspace="5" height="480" border="0"></a><br /><br /></div><br /><div>灼熱地獄の日にはこれがいいかもですね。</div><br /><div>どっかのメーカーさんが</div><div>ワンタッチで浮いたり沈んだりするヒキブネを商品開発してくれたらよいのですがね(*´ω｀)<br /></div><div><a  target="_blank" title="IMGA0103" href="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/2/7/270a4823.jpg"><img  class="pict" alt="IMGA0103" src="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/2/7/270a4823-s.jpg" width="640" hspace="5" height="480" border="0"></a><br /></div><br /><div>石を乗っけて沈めておくとかは</div><div>なかなかバランスをとって沈めるまでが大変です。</div><br /><div>移動の度にやらにゃいかんしね。</div><div>何度も浮き上がってきちゃあ石乗っけたりで汗だくですわ。<br /></div><div><a  target="_blank" title="IMG_20200823_124305" href="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/f/3/f35dff6b.jpg"><img  class="pict" alt="IMG_20200823_124305" src="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/f/3/f35dff6b-s.jpg" width="640" hspace="5" height="480" border="0"></a><br /><br /></div><br /><div>コロコロ石が転がってきちゃってさぁ・・・<br /></div><h2  id="title">ローリングストーンズだよ～( ﾟДﾟ)</h2><br /><div  id="dispGoogle">    <div  style="padding: 10px; border: 1px solid rgb(204, 204, 204); border-image: none; width: 90%;" align="left">        <table  style="table-layout: fixed;" width="100%" cellspacing="0" cellpadding="10" border="0">            <tbody><tr>                            <td  valign="top" align="left">                    <a  href="https://nme-jp.com/news/92502/" target="_blank"><b>ローリング・ストーンズ、トランプ大統領の集会で楽曲が使われなくなったことが明らかに - http://nme.com</b></a><br />                    <a  href="https://nme-jp.com/news/92502/" target="_blank">ローリング・ストーンズ、トランプ大統領の集会で楽曲が使われなくなったことが明らかに</a>&nbsp;&nbsp;<span  style="color: rgb(111, 111, 111);">http://nme.com</span><br />                    <span  style="font-size: 9px; color: rgb(153, 153, 153);">（出典：http://nme.com）</span>                </td>            </tr>        </tbody></table>    </div>	<br /><br />	</div><div  id="dispWiki">    <div  style="padding: 10px; border: 1px solid rgb(204, 204, 204); border-image: none; width: 90%;" align="left">        <table  style="table-layout: fixed;" width="100%" cellspacing="0" cellpadding="10" border="0">            <tbody><tr>                <td  valign="top" align="left">                    <div  class="mw-search-result-heading"><a  title="ローリング・ストーンズ" href="https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%BA" target="_blank" data-serp-pos="0"><span  style="font-weight: bold;">ローリング</span>・<span  style="font-weight: bold;">ストーンズ</span></a>    </div><div  class="searchresult">ンク・ウィメン」「ブラウン・シュガー」「ダイスをころがせ」「悲しみの<span  style="font-weight: bold;">アンジー</span>」「ミス・ユー」「スタート・ミー・アップ」など、数多くのヒット曲がある。 <span  style="font-weight: bold;">ローリング</span>・<span  style="font-weight: bold;">ストーン</span>誌の「最も偉大なアーティ<span  style="font-weight: bold;">スト</span>100」にて4位。 ウォール・<span  style="font-weight: bold;">スト</span>リート・ジャーナルの「史上最も人気のある100のロックバンド」にて5位。</div> <div  class="mw-search-result-data">146キロバイト (18,545 語) - 2020年8月21日 (金) 03:41</div>                </td>            </tr>        </tbody></table>    </div>	<br /><br />	</div><div  id="dispImage">    <div  style="padding: 10px; border: 1px solid rgb(204, 204, 204); border-image: none; width: 90%;" align="left">        <table  style="table-layout: fixed;" width="100%" cellspacing="0" cellpadding="10" border="0">            <tbody><tr>                <td  valign="top" align="left">					<div>						<a  href="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/f/1/f12c3710.jpg" target="_blank"><img  style="max-width: 100%;" src="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/f/1/f12c3710.jpg" rel="https://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/f/1/f12c3710.jpg"></a><br />						<span  style="font-size: 9px; color: rgb(153, 153, 153);">（出典 tk.ismcdn.jp）</span>					</div>                </td>            </tr>        </tbody></table>    </div>	<br /><br />	</div><div  id="dispMovie">    <div  style="padding: 10px; border: 1px solid rgb(204, 204, 204); border-image: none; width: 90%;" align="left">        <table  style="table-layout: fixed;" width="100%" cellspacing="0" cellpadding="10" border="0">            <tbody><tr>                <td  valign="top" align="left">					<div>						<a  href="https://www.youtube.com/watch?v=RcZn2-bGXqQ" target="_blank"><b>The Rolling Stones - Angie - OFFICIAL PROMO (Version 1) - YouTube</b></a><br />						<iframe  src="https://www.youtube.com/embed/RcZn2-bGXqQ" style="vertical-align:top;" width="100%" height="500" frameborder="0" allowfullscreen></iframe><br /><i>（出典 Youtube）</i><br /><i></i>					</div>                </td>            </tr>        </tbody></table>    </div>	<br /><div><div><a  href="https://clear-cube.info/" target="_blank"><span  style="font-size: 200%;"><b>チャーミーアングラーの竿満月記</b></span></a></div><br /><div><span  style="font-size: 200%;"><b><a  href="http://sasurai921.livedoor.blog/" target="_blank">小説　安田川　その２９</a></b></span></div></div><br />	</div><div  id="comment"></div><br />
<a href="https://gabacha123.amenityspace.co.uk/archives/26014585.html">続きを読む</a>]]>
</content:encoded>
</item>
<item rdf:about="https://gabacha123.amenityspace.co.uk/archives/2185715.html">
<title>鮎返しの滝</title>
https://gabacha123.amenityspace.co.uk/archives/2185715.html</link>
<description>　鮎返しの滝が第三次選考を通過したとの知らせがあった。



　鮎返しの滝は、アユノスケ師匠の超燃える鮎友釣りのブログに連載させていただいた小説だ。

　連載期間は２０１０年２月２２日から１９回にわたる。

　この小説、有田川で流木民という民宿を営むワッキーさん...</description>
<dc:creator>gabacha123</dc:creator>
<dc:date>2011-10-16T07:36:36+09:00</dc:date>
<dc:subject>ガバチャの小説</dc:subject>
<content:encoded><![CDATA[　<font size="3">鮎返しの滝が第三次選考を通過したとの知らせがあった。<br>
<br>
<div align="center"><a href="http://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/a/6/a6227c81.jpg" title="a6227c81.jpg" target="_blank"><img src="http://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/a/6/a6227c81-s.jpg" width="570" height="427" border="0" alt="a6227c81.jpg" hspace="5" class="pict"  /></a><br /></div><br>
<br>
　鮎返しの滝は、アユノスケ師匠の超燃える鮎友釣りのブログに連載させていただいた小説だ。<br>
<br>
　<a href="http://ameblo.jp/hfgayu/entry-10465499483.html" target="_blank">連載期間は２０１０年２月２２日から１９回にわたる。</a><br>
<br>
　この小説、有田川で流木民という民宿を営むワッキーさんと話をしていて閃いたものだ。<br>
<br>
「四村の奥に鮎返しの滝っつーのがあるんやしょ。昔そこで入れ掛りになったことがあってな。今は砂防工事でほとんど埋まったけどよ」<br>
<br>
　その話を聞いたボクは早速車を走らせた。<br>
　<br>
　地元のおばちゃんらに訊いて場所を特定、確かに鮎返しの滝はほとんど埋まっていた。<br>
<br>
「あんた滝が見たいんやったら、金屋の次の滝に行きなあよ」<br>
　とおばちゃんたち。<br>
<br>
「次の滝？」<br>
<br>
　和歌山の熊野にある日本一の落差を誇る那智の滝。その次に大きいので次の滝と名がついたらしい。<br>
<br>
　今度は車を金屋に走らせた。<br>
<br>
　山奥に分け入りやっと次の滝が姿を現す。<br>
<br>
　唖然とした。<br>
<br>
　こんなすごい滝が近くにあったなんて。<br>
<br>
　切り株に腰をおろし、その滝を見ながら小説の構想を練った。<br>
<br>
　三日で半分書き上げて後は連載の楽しみにと書きながら考えることにした。<br>
<br>
　連載を始めてすぐに、ブログを見た方から面白いと好評をいただく。<br>
<br>
　特に前半のラーメン屋でのやり取りをあげられる方が多かった。<br>
<br>
　あれは実は日高川の竜神の道の駅にあるラーメン屋での実際の出来事である。<br>
<br>
　数年前、アユノスケ師匠とオーイカズ会長とほぼあの小説のとおりの経験をした。<br>
<br>
　そのようなリアリティが功を奏したのかもしれない。<br>
<br>
　また、この小説では初めて、自分の知り合いのみならずブログ村でコメントをいただいた方々にも何人か登場してもらった。<br>
<br>
　そんな感じで楽しみもしたが、毎日の連載はプレッシャーがかかり疲れる。<br>
<br>
　案の定、後半書き疲れで展開が急になった。<br>
<br>
　また、いつかゆっくり書き直そうと気楽に構え筆を置いた。<br>
<br>
　今年の夏ごろ、公募ガイドを見ていたら熟年の小説公募があった。<br>
<br>
　ま、せっかく書いたのでと、だめもとで応募していたら今回の知らせである。<br>
<br>
　４１１作品とあるので、一次で半分に、二次でその半分に、三次でその半分にと考えると五十作以内には入ったことになる。<br>
<br>
　これからどうなるのかわからないが、いずれにせよこの作品は後半の展開にもう少し手を加えなければならないと考えている。<br>
<br>
　それはまたシーズンオフのお楽しみにととっておこう。<br>
<br>
　って、まだオフじゃないってこと。<br>
<br>
　ええ、ガバチャ　今季まだ納竿してませんてっ。<br>
<br>
　リビングで家内のツノが２本天井を突き破ってますが・・オォ　ノォ～<img src="http://stat.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/254.gif" alt="叫び" /><br>
</font><br>
<br>
<br>
　いつの間にか、カレンダーは秋の夜長に突入していました。<br>
<div align="center"><a href="http://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/1/b/1b9fe43d.jpg" title="1b9fe43d.jpg" target="_blank"><img src="http://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/1/b/1b9fe43d-s.jpg" width="570" height="427" border="0" alt="1b9fe43d.jpg" hspace="5" class="pict"  /></a><br /></div><br>
<br>
　布団に寝っ転がって、昨日は昔読んだこんな本を読み返しました。<br>
<div align="center"><a href="http://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/0/9/09199b41.jpg" title="09199b41.jpg" target="_blank"><img src="http://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/0/9/09199b41-s.jpg" width="570" height="427" border="0" alt="09199b41.jpg" hspace="5" class="pict"  /></a><br /></div><br>
<br>
　漫画なのですが、この二人の作品は小説に通じるものがありますね。<br>
<div align="center"><a href="http://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/d/9/d976bbaf.jpg" title="d976bbaf.jpg" target="_blank"><img src="http://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/d/9/d976bbaf-s.jpg" width="570" height="427" border="0" alt="d976bbaf.jpg" hspace="5" class="pict"  /></a><br /></div><br>
<br>
<br>
　ボクの文体のバイブルはこれです。<br>
<div align="center"><a href="http://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/a/9/a90a03ae.jpg" title="a90a03ae.jpg" target="_blank"><img src="http://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/a/9/a90a03ae-s.jpg" width="570" height="427" border="0" alt="a90a03ae.jpg" hspace="5" class="pict"  /></a><br /></div><br>
<br>
<br>
<iframe width="560" height="315" src="http://www.youtube.com/embed/6a4IcSx5D3k" frameborder="0" allowfullscreen></iframe><br>
<br>
<br>
<a href="http://www.bar-henry.com/" target="_blank"></a><br>
ポチッとヨロシク<img src="http://stat.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/175.gif" alt="ダウン" /><br>
<a href="http://fishing.blogmura.com/ayuturi/"><img src="http://fishing.blogmura.com/ayuturi/img/ayuturi88_31.gif" width="88" height="31" border="0" alt="にほんブログ村 釣りブログ 鮎釣りへ" /></a><br>
<a href="http://fishing.blogmura.com/ayuturi/">にほんブログ村</a><br>
<br>
<font size="5"><font color="#FF0000"><a href="http://ameblo.jp/hfgayu/" target="_blank"><font size="6"><font color="#FF0000">超燃える鮎友釣り</font></font></a></font></font>　もヨロシク<img src="http://stat.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/187.gif" alt="グッド！" /><div align="center"><br>
]]>
</content:encoded>
</item>
<item rdf:about="https://gabacha123.amenityspace.co.uk/archives/2185690.html">
<title>ある知らせ</title>
https://gabacha123.amenityspace.co.uk/archives/2185690.html</link>
<description>　数年前のこと、親交のあった船長がガンで亡くなった。
　船長から生前に手渡されていたものがあった。

　小説のネタを書いた便せんである。
　船長から、自らの船舶経験を小説に書いて欲しいと頼まれていた。

　突然逝ってしまった船長に約束を果たせなかった後悔から、...</description>
<dc:creator>gabacha123</dc:creator>
<dc:date>2011-05-25T20:26:57+09:00</dc:date>
<dc:subject>ガバチャの小説</dc:subject>
<content:encoded><![CDATA[　<font size="3">数年前のこと、親交のあった船長がガンで亡くなった。<br>
　船長から生前に手渡されていたものがあった。<br>
<br>
　小説のネタを書いた便せんである。<br>
　船長から、自らの船舶経験を小説に書いて欲しいと頼まれていた。<br>
<br>
　突然逝ってしまった船長に約束を果たせなかった後悔から、急いで書き上げた。<br>
　葬式の三日後、船長の奥さんにだけ原稿を手渡した。<br>
<br>
　船長からは「書くときには妻の星子を主人公にしてください」と言われていた。<br>
　星子さんにそのことを告げると「読ませていただきます」と目を潤ませた。<br>
<br>
　星子と書いてそのままホシコと読む。<br>
　最近になってせっかく書いたので、と日本文学館のコンテストに応募してみた。<br>
<br>
　そしたら先週「審査員特別賞」に選ばれたと通知があった。<br>
　嬉しい。少しでも報われたような気がして嬉しい。<br>
<br>
「船長、やりましたよ」<br>
　ボクは心の中で小さく言ってガッツポーズをつくった。</font><br>
<br>
<div align="center"><a href="http://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/6/e/6ee6646d.jpg" title="6ee6646d.jpg" target="_blank"><img src="http://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/6/e/6ee6646d-s.jpg" width="570" height="427" border="0" alt="6ee6646d.jpg" hspace="5" class="pict"  /></a><br /></div><br>
<br>
<div align="center"><a href="http://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/b/8/b86984da.jpg" title="b86984da.jpg" target="_blank"><img src="http://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/b/8/b86984da-s.jpg" width="570" height="427" border="0" alt="b86984da.jpg" hspace="5" class="pict"  /></a><br /></div><br>
<br>
　船長の十八番。<br>
　スナックで飲んでて船長がこの曲を歌い始める頃には、たいがいボクは酔っててお気に入りの女の子とダンスを踊ってました。<br>
　船長、歌が上手だったんだよな。<br>
<object width="425" height="344"><param name="movie" value="http://www.youtube.com/v/tGhx6PF8wXw?fs=1&hl=ja_JP"></param><param name="allowFullScreen" value="true"></param><param name="allowscriptaccess" value="always"></param><embed wmode="opaque" src="http://www.youtube.com/v/tGhx6PF8wXw?fs=1&hl=ja_JP" type="application/x-shockwave-flash" width="425" height="344" allowscriptaccess="always" allowfullscreen="true"></embed><param name="wmode" value="opaque" /><param name="wmode" value="opaque" /></object><br>
<br>
<br>
　その頃、ガバチャの歌っていた曲。<br>
<object width="480" height="295"><param name="movie" value="http://www.youtube.com/v/Ej_wkBzIPvE?fs=1&hl=ja_JP"></param><param name="allowFullScreen" value="true"></param><param name="allowscriptaccess" value="always"></param><embed wmode="opaque" src="http://www.youtube.com/v/Ej_wkBzIPvE?fs=1&hl=ja_JP" type="application/x-shockwave-flash" width="480" height="295" allowscriptaccess="always" allowfullscreen="true"></embed><param name="wmode" value="opaque" /></object><br>
<br>
　一緒にダンスをしたナオミちゃんが歌ってくれた曲。<br>
<object width="425" height="344"><param name="movie" value="http://www.youtube.com/v/9Mcmkfy8fVE?fs=1&hl=ja_JP"></param><param name="allowFullScreen" value="true"></param><param name="allowscriptaccess" value="always"></param><embed wmode="opaque" src="http://www.youtube.com/v/9Mcmkfy8fVE?fs=1&hl=ja_JP" type="application/x-shockwave-flash" width="425" height="344" allowscriptaccess="always" allowfullscreen="true"></embed></object><br>
<br>
<br>
<br>
ポチッとヨロシク<img src="http://stat.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/175.gif" alt="ダウン" /><br>
<a href="http://fishing.blogmura.com/ayuturi/"><img src="http://fishing.blogmura.com/ayuturi/img/ayuturi88_31.gif" width="88" height="31" border="0" alt="にほんブログ村 釣りブログ 鮎釣りへ" /></a><br>
<a href="http://fishing.blogmura.com/ayuturi/">にほんブログ村</a><br>
<br>
<font size="5"><font color="#FF0000"><a href="http://ameblo.jp/hfgayu/" target="_blank"><font size="6"><font color="#FF0000">超燃える鮎友釣り</font></font></a></font></font>　もヨロシク<img src="http://stat.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/187.gif" alt="グッド！" /><div align="center"><br>
]]>
</content:encoded>
</item>
<item rdf:about="https://gabacha123.amenityspace.co.uk/archives/2185677.html">
<title>小説「神無月の頃」　最終回</title>
https://gabacha123.amenityspace.co.uk/archives/2185677.html</link>
<description>　無言の勇一が船上に引き上げられた。
　丸窓の中の勇一は目を閉じたままだ。リエが半泣きでヘルメットを外すと、勇一の目がゆっくり開いた。リエが勇一の鼻血をタオルで拭った。勇一はうつろな目でリエと浩也を交互に見た。

「つむじ風剛右衛門の呪いやしょ」
　と勇一は...</description>
<dc:creator>gabacha123</dc:creator>
<dc:date>2011-04-24T13:18:24+09:00</dc:date>
<dc:subject>ガバチャの小説</dc:subject>
<content:encoded><![CDATA[<font size="3">　無言の勇一が船上に引き上げられた。<br>
　丸窓の中の勇一は目を閉じたままだ。リエが半泣きでヘルメットを外すと、勇一の目がゆっくり開いた。リエが勇一の鼻血をタオルで拭った。勇一はうつろな目でリエと浩也を交互に見た。<br>
<br>
「つむじ風剛右衛門の呪いやしょ」<br>
　と勇一は精一杯の笑みをつくった。<br>
　リエがしゃくり上げる。とにかく病院に急がなければならない。西脇漁港までは全速力でも半時間以上はかかる。<br>
<br>
「救急車を呼びましょうか」<br>
　浩也の言葉に勇一は、「大げさなことすんな」と力を入れた。<br>
　浩也に介抱を頼んでリエはウインチを全力で巻いた。錨を上げると操船室に駆け込みエンジンをかけた。隆栄丸のエンジン音が上がる。浩也は、勇一の顔にかかる飛沫を遮るように背中をかがめた。<br>
<br>
　十分ほど走った所で、勇一の顔色が心なしか戻ってきたように感じた。勇一が無言で上半身を起こした。操船室のリエが「寝ときなさい」と叫ぶ。勇一は薄笑いをつくって言うことを聞かない。<br>
<br>
「もう、大丈夫やしょ。ちょっと気い失うてただけやしょ」<br>
　心配そうな浩也の手を勇一は振り払った。頭を左右に何度か振ると自立しようとしたが、直ぐに尻餅をついた。隆栄丸はゆっくりとカーブしながら西脇漁港に入った。まだ、朝の漁が終わっていないのか漁港はがら空きだ。<br>
<br>
　隆栄丸が着岸するのとほぼ同時に、白の乗用車が目の前に止まった。<br>
　リエは船を着岸させると舫を取るため、小走りした。岸壁にロープを投げると、乗用車のドアが開いて二人の男が現れた。<br>
<br>
　二人とも野球帽をかぶってサングラスをしている。一人の男がロープを拾い上げて急いで船を係船金具に結わえ付けた。もう一人は辺りを窺いながらピストルをつきだしている。<br>
<br>
「騒いだら撃つで。本物やからな」<br>
　ドスの利いた声ではなかった。細く高い声で語尾が震えていた。<br>
<br>
　船上の三人の動きはピタリと止まった。ピストルを持った男が顎で指図すると、もう一人の男が船に飛び乗ってきて木箱を車へと運び出した。トランクには収まらず後部座席にも積み込んだ。<br>
<br>
　ピストルを持った男は、腰をひいた体勢で銃口を代わる代わる三人の方に向けている。大声でも上げようものなら本当に撃ち殺されるだろう。浩也は、まだ潜水服を着て身動きの取れない勇一の傍らで身動きひとつ出来なかった。<br>
<br>
　男らは全部積み込むとタイヤを鳴らして走り去った。<br>
　あっという間の出来事だった。<br>
<br>
　浩也はふと昨夜のヨットの連中ではないのかと思った。勇一が船床を叩いて悔しがった。呆然としていたリエが気付いたように勇一のもとへ駆け寄った。浩也と二人がかりで勇一を車に乗せると病院へと直行した。<br>
<br>
<br>
　西庄から大阪の岬町へと抜ける山道に猿坂峠という人気のない場所がある。<br>
　その峠のため池の横で白いの乗用車が発見されたのが翌朝のことだった。<br>
<br>
　地元の老人会が朝のウォーキングで偶々脇道に逸れて発見したらしい。<br>
　不審に思って通りざま覗き込んでみると二人の男が寝ていたと言う。<br>
<br>
　ナンバーは和泉ナンバーであった。老人会は、バス釣りで溜め池にでも訪れたのかとそのままやり過ごしたらしい。が、次の日の朝もそのままの状態でその車はあった。<br>
<br>
　老人会が警察に連絡したが、二人は既に死んでいた。一人は、大阪市内の有名進学高校に勤める国語の教師、もう一人は、和歌山市木本で歯科医院を営んでいる者だった。<br>
<br>
「あ、親父の行ってた歯医者やんか」<br>
　勇一があんぐりと口を開けた。<br>
<br>
「なんと木箱の中身は、旧日本軍の毒ガスでした」<br>
　ワイドショーのキャスターが興奮気味に伝える。<br>
<br>
「ど、毒ガス！」<br>
　三人は絶句した。浩也は勇一の見舞い訪れていた。リエと三人で休憩室のテレビに釘付けになった。番組は解説を加え詳しく報道をした。<br>
<br>
　車内では、木箱が二つ開けられており、栓の開いたビール瓶が二つ転がっていた。分析の結果、瓶の中身はホスゲンという旧日本軍の毒ガスだった。<br>
<br>
　平成六年、世間を騒がせた宗教団体が女性ジャーナリストのアパートにまいた物と同じだ。吸入すると体内の水分と反応し、肺の中で塩酸が生成される。呼吸困難で死に至るほどの猛毒だ。<br>
<br>
　昭和二十年八月十五日、日本の敗戦が知らされると、軍事裁判での処刑を恐れ全国各地で砲弾や毒ガスの隠蔽工作が始まった。和歌山でも、進駐軍が和歌山港に到着するまでの一ヶ月間、多くの砲弾が処理されたことが記録に残っている。<br>
<br>
　砲弾の手っ取り早い処分方法は海洋投棄だ。船で運んで投げ捨てるだけの労力の軽さは陸上埋設の比ではない。現在でも、日本の海には回収し切れていない旧日本軍の砲弾が多数残存していると言われている。また、米軍から投下された不発弾も多く眠っている。<br>
<br>
　昭和四十七年には、新潟港で港湾工事中の浚渫船海麟丸が不発弾によって爆沈し、死亡事故まで起きているほどだ。毒ガスもどこに埋まっていても不思議ではない。<br>
<br>
　毒ガス製造は罪が重たく裁判にかかればまず処刑になる。そのことから、開発製造も敗戦後の処理も極秘裏に行われた。<br>
<br>
　現在、政府も調査中だが実態はほとんどわからない状態だ。<br>
　と、番組は最近九州の苅田港で三十九発の毒ガス弾が出て港湾工事が中止になったことを図表を使って説明した。<br>
<br>
「あっ、あのヨット」<br>
　勇一が声を上げた。浩也も目を丸くした。テレビは歯医者の贅沢な私生活に焦点を当てていた。<br>
<br>
「こんなんでまだ金が欲しいってか」<br>
　勇一が言うと、傍に座っていた老患者が相槌を打って笑った。ニュースは次の事件へと移った。<br>
<br>
　三人は病院の中庭に出た。<br>
　おそらく、亡くなった歯医者は隆三から相談を持ちかけられ、古文に詳しい知り合いの高校教師に頼ったのだろう。二人は解読をすると隆三らに伝え、後は･･････、浩也はそれ以上想像することを止めた。<br>
<br>
「ワイもあの木箱は、お宝なんかやなしに米軍の捨てた何かやないかと思うたんやけど、まさか毒ガスや何て思いもよらなんだわしょ」<br>
　勇一は淡々と語った。<br>
<br>
　終戦後間もなく、和歌山港に進駐軍が到着した際、アメリカ兵達は沢山の物資を海に投げ捨てた。長旅で古くなった食料品やゴミを、船の上から投げ捨てたのだ。<br>
<br>
　漁師達は船上からその様子を見ていた。日本は、食料も物資も枯渇した時代である。進駐軍が大阪に向かっていなくなったのを見計らって、潜水士たちは海中に潜ってそれを拾い上げた。物資は、コンビーフの缶詰やビールの詰まった木箱だった。<br>
<br>
　勇一は、そんな話を親父や潜水士仲間の年配者からよく聞かされていた。だからそのたぐいの物資ではないのかと、海底で最後の木箱にロープを結わえる時に思いついたと言うことだ。<br>
<br>
　上船したら、そのことを言って中身を確認するつもりでいたらしい。が、その後に捨て石の直撃を食らって気を失ってしまった。<br>
<br>
　後は、勇一の捨て石直撃騒動でみんなの関心がすっかり木箱から遠のいた。<br>
　勇一の捨て石直撃がなかったら、もっと別の展開になっていただろう。下手をすると自分たちが同じ目に遭っていた可能性だってある。<br>
<br>
　浩也は勇一が気が付いた時、「つむじ風剛右衛門の呪いやしょ」と言ったことを思い出した。そして、捨て石が飛んできたから良かったのではないのかと思い始めた。<br>
<br>
　あれは、剛右衛門の呪いではなく、まっとうな人生を遅れという忠告ではないのか。恐らく剛右衛門は財宝を隠したのではなく捨てたのだ。浩也はその時の状況を想像した。<br>
<br>
　表の顔は廻船問屋、裏の顔は海賊の親分として悪事の限りを尽くしてきたつむじ風剛右衛門。<br>
<br>
　表の世界も裏の世界も、結局世の中は金による世界で人間関係が成り立っている。それは金を奪おうとしての、ドロドロとしただまし合いや殺し合いの世界だ。<br>
<br>
　つむじ風剛右衛門の時代も、今の時代も大金を前にして生じる人間模様に変わりはない。<br>
<br>
　浩也は、時代こそ違え未だに変わりのない人間の心にやるせなさを感じた。死期を悟った剛右衛門は自らの人生を顧みて、莫大な財宝をめぐる親族の末路を憂えたのではないだろうか。こんなものは誰にもわからないところに捨てたほうがよい。人間は汗水垂らして働いて、自分が生きていけるだけの糧があればよいのだ。そう考えたにちがいない。<br>
<br>
　だとしたら、あの山立ては剛右衛門には必要なかった。剛右衛門と財宝を乗せた船に必要だったのは、行き帰りの見通しだけ、つまり狐の出会う友が島への行き帰りの目印だけでよかった。<br>
<br>
　神無月と和歌山城を山立てたのは、その船を漕いだ地元の漁師だろう。やはり、財宝の欲に目がくらんだのだ。<br>
<br>
　漁師は、真っ暗な海で櫓を漕ぎながらもう一線を決めるための二つの明かりを探した。目に入ったのは、神無月と和歌山城だ。漁師は、友が島のかがり火を一致させながら、神無月が和歌山城の真上に来るまで櫓をこぎ続けた。<br>
<br>
「剛右衛門さま、この辺りが潮も速く紀ノ川の土砂も埋まりやすいところでございます」<br>
　漁師はそう言って、神無月が和歌山城の真上に差し掛かった所で船を泊めた。<br>
　そして、それを誰かに言って書き留めてもらった。それが、あの古文書ではないのか。<br>
<br>
「ワイは石に当たって良かったんやしょ」<br>
　リエが怪訝そうな顔で勇一を見上げる。<br>
<br>
「そんなもん見つける暇があったら働けって。親父も天国でわかったんやしょ」<br>
　勇一はガラにもなく目を潤ませた。<br>
<br>
「馬鹿な親父を許いちゃってくれえや」<br>
　勇一は浩也に頭を下げた。<br>
<br>
「やっ止めてください。誘ったのは私の母の方なんですから」<br>
　浩也が言うと、リエが二人の間を割るように進んでベンチに腰を下ろした。<br>
　浩也と勇一がリエに目を移す。リエは中庭の色づいた楓を見上げていた。<br>
<br>
「四十九日に行く？」<br>
　リエが独り言のように言った。<br>
<br>
「行きましょう」<br>
　浩也が言うと勇一も頷いた。<br>
<br>
　隆三の四十九日の法要が行われた後、三人は再び隆栄丸に乗り込んだ。<br>
　リエの手には花束が持たれている。浩也は手慣れた様子で舫ロープを外すと船に飛び乗った。<br>
<br>
　隆栄丸は心地よいエンジン音を立ててゆっくりと離岸した。<br>
　澄み切った高い夜空に、上弦の月が浮かんでいる。浩也は揺れる船に身を任せて空ばかり眺めていた。隣に座ったリエも膝を抱えて同じように空ばかり見ている。<br>
<br>
　港外に出ると、隆栄丸は大きく船体を傾け雑賀崎に舳先を振った。<br>
　リエの体が遠心力に押されて浩也に寄り添う。<br>
　船が傾きを取り戻し直進体勢に入っても、リエは浩也に寄り添ったままだ。<br>
<br>
　リエはゆっくりと浩也の肩に顔をもたれかけた。リエの細い髪の毛が浩也の頬を撫でる。浩也は刹那母の匂いを思い出しリエの方を向いた。気付いたリエがゆっくりと顔を上げる。<br>
<br>
　三人を乗せた隆栄丸は、一定の隆起を繰り返しながら山立ての場所へと向かっていく。<br>
<br>
　それは前進するというよりかは、むしろ水平線の向こうに浮かぶ夥しい星空に向かって登っているようでもあった。</font><br>
<br>
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　<br>
<br>
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　<font size="3">了</font><br>
<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
ガバチャのひとり言<br>
<br>
　チャイムが鳴るので出たら隣のＫちゃんと母親が立っていた。<br>
　Ｋちゃんとは隣の小学生の女の子。<br>
<br>
「あのぉ、レモン少しいただいてもいいですか」と母親。<br>
「どうぞどうぞ好きなだけ取ってください」とボク。<br>
<br>
　言うが早いか、Ｋちゃんは我が家の庭にあるレモンの木に登り始めた。<br>
　あらら、と母親が傘を持って追いかける。<br>
　<br>
　Ｋちゃんは雨など関係ないと言った感じで手をのばしてレモンをちぎりはじめた。<br>
　ボクも高切りばさみを持って加勢する。<br>
　<br>
　高いところの丸々としたレモンをいくつも切り落とした。<br>
　キャッキャと喜ぶＫちゃん。<br>
　<br>
　いくつもの枝付きレモンを抱えたＫちゃんが礼を言う。<br>
　訊くと、薄い輪切りにして砂糖水で漬け込むらしい。<br>
<br>
「おいしいのできたらおっちゃんにもあげるからねー」<br>
　と笑顔のＫちゃん。<br>
<br>
　はは、嬉しい。嬉しいよー。<br>
　久しぶりに心がスッと晴れた。<br>
<br>
　見ると雨が上がって雲の切れ間に青空が開いていた。<br>
　レモンの葉がきらりと光る。<br>
　春はやはりやってきた。<br>
　<br>
　子供の笑顔ほど素晴らしいものはない。<br>
　辛いことが多いけど、ボクらも少しずつ笑顔になろう。<br>
<br>
<br>
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<br>
<br>
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</content:encoded>
</item>
<item rdf:about="https://gabacha123.amenityspace.co.uk/archives/2185676.html">
<title>小説「神無月の頃」　その１７</title>
https://gabacha123.amenityspace.co.uk/archives/2185676.html</link>
<description>　翌日、海は少し時化ていた。

「潜れますか」
「こんくらいやったら大丈夫やしょ」
　勇一は、肩に掛けていたタオルの両端を持ってねじると頭に巻き付けた。

　三人を乗せた隆栄丸は西脇漁港を出航した。
　ポイントはＧＰＳが覚えている。淡路島の方にまとまった漁船群が...</description>
<dc:creator>gabacha123</dc:creator>
<dc:date>2011-04-21T20:26:04+09:00</dc:date>
<dc:subject>ガバチャの小説</dc:subject>
<content:encoded><![CDATA[<font size="3">　翌日、海は少し時化ていた。<br>
<br>
「潜れますか」<br>
「こんくらいやったら大丈夫やしょ」<br>
　勇一は、肩に掛けていたタオルの両端を持ってねじると頭に巻き付けた。<br>
<br>
　三人を乗せた隆栄丸は西脇漁港を出航した。<br>
　ポイントはＧＰＳが覚えている。淡路島の方にまとまった漁船群があり、近くには釣り遊びのプレジャーボートが点々と浮いていた。<br>
　がそれも、ポイントに近づくにつれ殆どいなくなった。<br>
<br>
　目の前を南海フェリーが通り過ぎていく。その航跡波を、隆栄丸は大きく上下しながら乗り切った。　隆栄丸の速度が落ちる。ポイント付近に到着したのだ。<br>
<br>
　ポイントは昼間見ると思っている以上に陸寄りだった。この時期の透明度は高い。だが、目を凝らしてみても海中で笹竹は確認できない。意外に深いようだ。<br>
<br>
「こんなとこやったっけなー」<br>
　勇一がまぶたの絆創膏をさすりながら独り言のように言う。<br>
<br>
　隆栄丸は、船を固定するために前後にアンカーを張る作業にはいった。隆栄丸はポイントから一端南に五十メートルほど離れた。<br>
<br>
「アンカーデッコウ」<br>
　勇一の声が飛ぶとリエが重たいアンカーに手をかけた。<br>
<br>
　要領を得ずに所在なく見ていた浩也が慌ててリエに駆けつける。が、リエは細い腕で大きなアンカーを引きずるように持ち上げると、船縁を擦りながら海上に押し投げた。<br>
<br>
　アンカーは繋がれたロープを強引に引き込みながら一挙に海中に消えた。アンカーが固定されたのを確認すると、隆栄丸は今度は北に進み、ポイントを五十メートルほど過ぎた辺りで泊まった。勇一の合図を待って、今度は浩也がアンカーを投げ入れる。<br>
<br>
　勇一がウインチを巻き上げると、隆栄丸は南北に張られたロープの緊張に従って斜め横に動いた。そして、ついには船位を固定した。<br>
　船上で勇一の潜水準備が始まった。勇一は、体にぴったりと張り付くような毛糸製のつなぎを着ると腰を下ろした。<br>
<br>
「これがカブトやしょ」<br>
　勇一は宇宙遊泳で見るような潜水服を広げた。<br>
<br>
　潜水服は煤けたオレンジ色で、首の所に頑丈そうな金具がついていた。リエが潜水服を着せ始めた。勇一は、時折にこやかな顔をしながら窮屈そうに潜水服の足から体を入れていった。<br>
　潜水服の中にすっぽりと収まった勇一の顔をリエがタオルで拭き、そのタオルを折って頭にかぶせた。リエは、真鍮製のヘルメットを抱きかかえると勇一の頭に慎重にかぶせた。ヘルメットが勇一の顔にすっぽりとはまり潜水服の首の輪っかに着座すると、リエはきゅっとヘルメットをひねって固定した。<br>
<br>
　勇一は宇宙遊泳の姿になった。立っていられないほど船は揺れている。<br>
　リエが腰を落として勇一の脇を支える。浩也も見真似て反対側の脇を支えた。勇一はゆっくりと立ち上がると、リエに手を添えられて船縁の梯子までたどり着いた。<br>
<br>
　潜水服の靴底に張り付いたオモリがコツコツと船床に響く。勇一は向きを変えると梯子を下り始めた。梯子の下半分は海中に没している。勇一は海底に首だけ出た状態になると、ヘルメットの丸窓からリエと浩也を交互に見た。勇一は視線を上空に移すと、一気に泡を出して海中に消えていった。<br>
　暫くして交信が始まった。ザーッとスピーカーの音が鳴る。<br>
<br>
「こちらリエです。視界はどうですか。どうぞ」<br>
「ああ、暗いけどなんとか見えてます。どうぞ」<br>
　リエは手慣れた様子だ。<br>
<br>
　浩也は真一文字に口を結んだまま、勇一のはき出す泡を見つめていた。<br>
　勇一の見つけようとしている笹竹は、自分たちのものと母達が入れたものとの二本あるはずだ。<br>
<br>
　浩也は昨日は勇一に対し絶対に潜って欲しいと頼んでおきながら、今更怯んできた。何度考えてもこうするより仕方なかったと思いながらも怖かった。<br>
　最悪の事態に耐えうる自信など全くないのだ。想像するだけで背筋をぞっとしたものがはい上がってきて気がどうにかなりそうだった。<br>
<br>
　母がこんなところにいるはずはない、と浩也は祈りながら揺れる海面を見つめた。<br>
　勇一が海底の状況を伝えた。海底は浮泥の場所で、一歩歩くたびに舞い上がって視界を塞ぐ。勇一は暫く濁りの収まるのを待つとのことだった。<br>
<br>
「目印の竹は発見されましたか。どうぞ」<br>
「まだ見えません。どうぞ」<br>
　雑音混じりだが、勇一の声ははっきりと聞き取れた。<br>
<br>
「ロープが見つかったら連絡を下さい。どうぞ」<br>
「了解しました。どうぞ」<br>
　海面上に沸き上がる泡が勇一の位置を示している。泡は、まっすぐ進んだり戻ってきたり斜めに移動したりと動き回わると、やがて一カ所に止まった。<br>
<br>
「見つかりましたかどうぞ」<br>
　リエが訊くと暫く間を置いて返事が返ってきた。<br>
<br>
「見つかりました。どうぞ」<br>
　リエが浩也に振り向いた。浩也の顔が曇る。勇一からの報告を待つしかなかった。スピーカーがガーガーと鳴る。<br>
<br>
「自分たちの入れた竹ではなかったです。どうぞ」<br>
　リエは絶句して返事を返せなかった。<br>
<br>
「竹だけが沈んでます。どうぞ」<br>
　立て続けに届いた勇一の言葉に、浩也は大きなため息をついた。<br>
<br>
「自分たちの竹を探します。どうぞ」<br>
「了解です。どうぞ」<br>
　勇一の泡がゆらゆらと蛇行して行ったり来たりする。勇一からの連絡はなかなかなかった。リエはマイクをおくと浩也に近寄った。<br>
<br>
「もう、引き返す？」<br>
　リエがしんみりと言う。<br>
<br>
「いえ、せっかく潜ってもらったんですから」<br>
　浩也は船床に腰を下ろした。<br>
<br>
「あたしねえ、お父ちゃんがほんまに欲しかったんは宝もんやないと思うの。お父ちゃんは宝物を見つけるということにがむしゃらになっていたんじゃ無いと思うのよ。正直誰だってお金は欲しいわ。でも結局お金って何かを得るための手段にしか過ぎないでしょう。今朝勇一に、あんたのお母さんの手がかりが得られなかったら止めましょうって言ったの。そしたら勇一は、親父は宝物を手に入れたらワイやお母ちゃんやお姉ちゃん、そしてあんたのお母さんつまりはあんたのために使うはずやったんやから、それを探してやるんが親父の供養になるんやないかって言うのよ」<br>
　浩也はリエの顔を見上げた。<br>
　その遙か上空にカモメの群れが流れていく。ガーガーとスピーカーが鳴った。リエはマイクのところに引き返した。<br>
<br>
「自分たちの竹を発見しました。どうぞ」<br>
　リエはちらりと浩也の方を見た。<br>
<br>
「それでは、半径五メートル以内の探索をお願いします。どうぞ」<br>
「了解しました。どうぞ」<br>
　勇一は潜る時三メートルほどの突き棒を持っていた。<br>
　リエの話では、埋没物を探す時には、その突き棒を海底面にゆっくりと差し込みながら探すのだという。経験を積めば、突き棒の感触で埋没物の材質までわかるとのことだ。<br>
　<br>
　勇一は、丹念に突き棒を使って半時間ほど探査したが、五メートル半径内にはそれらしきものはなかった。<br>
<br>
「目的物らしきものはないです。どうぞ」<br>
「了解。続いて十メートルまでをお願いします。どうぞ」<br>
<br>
「了解。そやけど、船が流されてないか。どうぞ」<br>
「了解。ちょっと見てみます。どうぞ」<br>
　リエは和歌山側と加太岬の方を遠望した。<br>
　陸上の目標物で山立てをしていたのだ。船に乗り慣れた人間は常に自分の位置を確認するために陸を見る。勇一の言うとおり、隆栄丸は紀ノ川の流水の影響なのか潮の加減なのかはわからないが、西に流されていた。リエが、アンカーを引っ張る機械の前に座りエンジンをかけた。リエは、歯車の横から二本突き出ているレバーを握って倒した。<br>
<br>
「はずれてるわ」<br>
　リエはエンジンを切って、またマイクを取った。<br>
<br>
「北のアンカーがはずれてます。どうぞ」<br>
「了解。暫く待って下さい。どうぞ」<br>
　三人は暫し勇一からの連絡を待つこととなった。勇一の吐き出す泡は北の方に移動して、右往左往した。<br>
<br>
「底が緩すぎてアンカーがききません。どうぞ」<br>
　海底面が浮泥で緩く、アンカーが引っかからないのだ。<br>
　アンカーを打ち直すことになった。が、何度か打ち直しても北側だけがどうしても海底面に刺さらない。船が固定できなければ潜水作業は出来ない。<br>
<br>
「少し東の方に捨て石があるのでそれに結わえます。どうぞ」<br>
「それは危険ではないですか。どうぞ」<br>
　勇一の、アンカーの一方を捨て石に結わえる提案にリエは反対した。<br>
　勇一は捨て石の所まで移動すると状態を報告した。捨て石とは、港湾工事に使用する大きな石のことだ。隆栄丸の東側に伸びた防波堤の基礎石が、先端付近で崩れたものらしい。<br>
<br>
　捨て石は数十個ほど転がっていて大きなものは畳ほどの大きさがあるとのことだ。長年の放置でどれも半分は埋まっているという。その内の、四方の石にかみ合った冷蔵庫ほどの大きさの石にロープを結わえ付けるとのことだ。<br>
<br>
「他にやりかたはないです。どうぞ」<br>
　勇一は口調を強めた。<br>
<br>
「了解です。どうぞ」<br>
　リエは仕方ないといった感じだ。捨て石付近で泡が出続けた。<br>
　作業終了の勇一からの連絡を待って、リエは慎重にウインチを巻いた。<br>
<br>
「全然大丈夫です。どうぞ」<br>
　勇一が、捨て石のビクともしないことを伝える。リエが不安な表情でレバーを少しずつ倒した。ワイヤーロープが軋む。沖に流されていた隆栄丸が、ポイントのほうへと徐々に移動した。浩也は見えもしない捨て石のあろう方向をじっと睨んだ。やがて隆栄丸はポイント上に船位を固定した。<br>
<br>
「再開します。どうぞ」<br>
「了解しました。どうぞ」<br>
　リエは大きく息をはき出した。<br>
　勇一は、ゴミをかき分けこまめに探査を繰り返しているようだ。突き棒がそれらしきものをなかなか捉えることが出来ないのか、暫し連絡が途絶えた。半時間ほど経った時スピーカーが鳴った。<br>
<br>
「何かの木箱がいっぱいあります。どうぞ」<br>
　リエは目を丸くした。<br>
<br>
「いったん上がります。どうぞ」<br>
　勇一は状況報告に上がることになった。<br>
　泡がはしごに近づき勇一がゆっくりと上がってきた。リエと浩也が手を貸す。リエは船床に椅子を置いた。温泉などにある木製の椅子より大きめのものだ。勇一はそれに腰を下ろした。<br>
<br>
　リエがヘルメットのネジを緩めゆっくりと脱がした。現れた勇一の顔は汗だくで息も荒い。リエが勇一の顔をタオルで丁寧に拭く。勇一は息を整えると口を開いた。<br>
<br>
　突然、穴ぼこにがくっと体が落ち込んだらしい。慌てて浮力を確保するために船上に伝えようとしたら、握ったまま埋まった突棒の先にこつこつという感触があった。そのままの状態で突棒を何度も突いた。間違いなく木箱の感触だという。<br>
<br>
「最低でも五個はあるっしょ」<br>
　勇一は真顔で言った。<br>
<br>
「お姉ちゃん、エアリフトの用意してくれんか」<br>
「よっしゃ」<br>
　リエは、畳半畳ほどの船床の板を取り除いた。<br>
　中から、身の丈ほどもある直径二十センチ程の黒い塩化ビニールのパイプや、ロープを取り出した。エアリフトとは、大きな管に空気を送り込み、その空気の吐き出る力で海底に穴を掘る装置だった。リエは要領よくエアリフトを組み立てた。<br>
<br>
　勇一はエアリフトを持つと再び潜水した。<br>
　箱は、現地盤から三メートルも下に埋まっているとのことだ。コンプレッサーのエンジンがかかった。空気を送るパイプが振動する。直ぐに音吉丸から少し離れた海面に、黒い泥が濛々と沸き上がった。よく見ると、ビニール袋などのゴミも一緒に沸き上がっている。海底に穴が掘られているのだ。<br>
<br>
「エアリフトを止めて下さい。どうぞ」<br>
　五分ほど経つと海底の勇一から、エアリフト作業の終了が告げられた。<br>
　リエがエアリフトを船上に引き上げようとするのを、浩也が加勢した。二人は、泥にまみれたホースを海水で洗い落としながら船上に引き上げた。<br>
<br>
　やっと引き上げ終わって額の汗を拭う広也の目が沖の一点に釘付けになった。黒い帆のヨットが浮かんでいる。隆栄丸からかなり沖の方に離れてたところをゆっくりと南進しているようだ。<br>
<br>
　横のリエは声も上げずに呆然とそのヨットの動きを見守っている。黒い帆が異様に聳えて、隆栄丸を威嚇しているようにも、また監視しているようにも見える。ヨットは何事もないように等速で南進を続け、やがて雑賀崎の岬に消えていった。<br>
<br>
「あの夜のヨットに違いありません」<br>
　浩也がそう言うと、リエは訝しそうな目で振り向いた。<br>
<br>
「ただのヨットなんやろか。マリーナシティの方に行ったみたいやけど」<br>
　リエはヨットの消えた雑賀崎の岬を睨み付けていた。<br>
<br>
「そうでしょう。でもあんな黒いヨットがあるんですね」<br>
　浩也は大きく息を吐いた。<br>
<br>
「私もあんなヨット初めて見たわ」<br>
　リエは雑賀崎の岬を睨んだままだ。スピーカーがガーガーと鳴った。<br>
<br>
「木箱は全部で七つです。ロープを降ろしてください。どうぞ」<br>
　リエが慌ててマイクを握る。<br>
<br>
「了解です。どうぞ」<br>
　海面の泥の濁りはすっかり拡散していた。<br>
　リエはアンカーを緩めて、木箱のポイントへと船位を移動した。浩也が、錘を付けたロープを海底に降ろす。<br>
<br>
「それでは上げて下さい。どうぞ」<br>
　浩也は、そろりそろりとロープを手繰った。水面近くに古い木箱が姿を現せた。ビールのケースほどの大きさだ。浩也に体を寄せてリエもロープを掴んだ。木箱は結構重たい。何とか水面を切って木箱は船上に上がった。二人はまじまじとその木箱を眺めた。。<br>
<br>
　木箱は古いがしっかりした作りだ。リエが木箱を開けようとした。が、蓋が頑丈に固定されていて空かない。リエは立ち上がると浩也の肩に自分の顔が当たったのも気にせず、蓋を開けるための道具を操舵室に探しに行こうとした。<br>
<br>
「ロープを下ろして下さい。どうぞ」<br>
　勇一からの連絡があり、リエははっとした顔で引き返してマイクを取った。<br>
<br>
「ハイわかりました。どうぞ」<br>
　リエは早口で答えた。<br>
<br>
　木箱の中身が本当に時価数十億円もの財宝だったら大変なことになる、と浩也は唇をかんだ。<br>
　木箱は順次引き上げられた。全く同じ大きさの木箱で七つある。<br>
<br>
「もう木箱はありません。最後に、ポイントの竹を撤収するので、船を移動してください。どうぞ」<br>
「了解、船を動かします。どうぞ」<br>
　リエはマイクをきっちりとスピーカーの横に掛けもせず、小走りでウインチのところに駆け寄った。<br>
<br>
　浩也は落ちたマイクを拾うとスピーカーの横に掛けた。リエは慌ててウインチのレバーを握ると、手前に倒した。隆栄丸がギシギシと音を立てて徐々に移動し始めた。　舳先が少し斜めに沈んだ様な気がした時だった。<br>
<br>
「巻き過ぎてるっしょ止めー」<br>
　勇一の叫び声がスピーカーから聞こえた。<br>
<br>
　リエが両手でレバーを握って全体重をかける。が、ウインチの巻き上げは急には止まらない。<br>
　船体が海中に引き込まれるようにぐぐっと沈んだ。と思ったら、今度は一転して船体がドーンと言う音と共に跳ね上がった。リエが悲鳴と共に跳ねとばされた。浩也も船縁に体をたたきつけられ転がった。<br>
<br>
「はずれたぁ」<br>
　リエは呻きながら小さくそう言った。ウインチがゆっくりと止まった。<br>
<br>
　浩也にも状況は想像できた。ウインチに巻かれすぎ、耐えきれなくなったアンカー代わりの捨て石が、周囲のかみ合わせの石を蹴散らし外れたのだ。アンカーロープに繋がれた捨て石は、ウインチに巻かれながら海中を切り裂くように移動しているはず。冷蔵庫ほどの石にぶつかったらと思うと、浩也は体が震えた。<br>
<br>
　浩也は祈るような気持ちで船縁にしがみついて、泡を凝視した。その泡は見たこともない早さで船の方に近づいている。強制的な力で動かされている不自然な等速運動だった。<br>
<br>
　泡は、浩也の目前まで来るとあっさりと船底を横切った。浩也は顔をしかめて立ち上がった。同時に、リエの絶叫が響いた。<br>
<br>
「ゆ、勇一ィー」<br>
　パンパンにふくれあがった潜水服が船縁の傍に浮いていた。浩也は無我夢中で服を脱ぐと飛び込んだ。<br>
　リエが狂ったようにケンツキを伸ばす。</font><br>
<br>
<br>
<br>
　ガバチャのひとり言<br>
<br>
　地震の日からよく眠れない日が続いた。<br>
　「あんた・・」と家内に起こされる。<br>
　虚空をつかみあがく夢の途中が思い出せない。<br>
<br>
　地震直後に映し出されたテレビ映像が頭に焼き付いている。<br>
　地を這う黒い津波を嘘だと思いたかった。<br>
<br>
　現地の被害を知るたびに、胸が締め付けられる。<br>
　神様を恨みたい。<br>
<br>
　現実があるだけで、観念から発達した営造物のほとんどは瓦解した。<br>
　さいころのように転がった防波堤。<br>
　鉄筋の基礎から引きちぎられた建物。<br>
　ボクらはいったい何を了知していたと言えるのだろう。<br>
<br>
　歴史は繰り返す。<br>
　その試練を乗り越えて紡ぎあげられた理性が今の文明だと思いたい。<br>
　だからボクらはまたやれる。<br>
<br>
　地震や津波の怖さを忘れずに前を向いていこう。<br>
　助けあい支えあう人の優しさに希望を持っていこう。<br>
<br>
　復興のまだほんのとば口に立ったばかりで、傷心していた自分にそう言い聞かせた。<br>
<br>
　みんなで力を合わせて、がんばれ東北！　がんばれ日本！<br>
<br>
　<br>
<br>
　　　　　　　　　　　　 <font size="2">被災に遭われた皆様に心からお見舞い申し上げます。</font><br>
<br>
<br>
<br>
ポチッとヨロシク<img src="http://stat.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/175.gif" alt="ダウン" /><br>
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<br>
<br>
<font size="5"><font color="#FF0000"><a href="http://ameblo.jp/hfgayu/" target="_blank"><font size="6"><font color="#FF0000">超燃える鮎友釣り</font></font></a></font></font>　もヨロシク<img src="http://stat.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/187.gif" alt="グッド！" /><div align="center"><br>
]]>
</content:encoded>
</item>
<item rdf:about="https://gabacha123.amenityspace.co.uk/archives/2185675.html">
<title>小説「神無月の頃」　その１６</title>
https://gabacha123.amenityspace.co.uk/archives/2185675.html</link>
<description>「血が止まるまで横になっといたほうがいいわ」
　リエは散らかっていた小道具を隅の方に寄せた。

　暫くすると勇一の血は止まった。

　なにやらゴーという低音が耳に入る。
　浩也は暗闇の中を見渡した。その音の方向に規則的に並んだ大きなライトが幾つも見えた。

「向...</description>
<dc:creator>gabacha123</dc:creator>
<dc:date>2011-03-08T08:05:14+09:00</dc:date>
<dc:subject>ガバチャの小説</dc:subject>
<content:encoded><![CDATA[<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「血が止まるまで横になっといたほうがいいわ」<br>
　リエは散らかっていた小道具を隅の方に寄せた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　暫くすると勇一の血は止まった。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　なにやらゴーという低音が耳に入る。<br>
　浩也は暗闇の中を見渡した。その音の方向に規則的に並んだ大きなライトが幾つも見えた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「向こうからでっかい貨物船やしょ」<br>
　勇一が顎をしゃくる。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　隆栄丸は和歌山港の航路の近くにいた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　隆栄丸の北側には、防波堤と護岸がへの字型に配置されている。隆栄丸は壁に背を向けるように、への字のくぼみの中央付近に停泊していた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　勇一が立ち上がってエンジンをかける。隆栄丸を先に進めて貨物船をかわすつもりだ。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　隆栄丸は勢いよく進んだ。二、三分エンジン音が高鳴りした後、隆栄丸はまたエンジン音を下げた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「もう大丈夫やしょ」<br>
　貨物船が隆栄丸の前方をゆっくり通り過ぎていく。<br>
　と直後、隆栄丸が空中に浮いた感じがした。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「あかん、三角波やぁ！」<br>
　勇一の声が早いか、浩也は一瞬で海に放り投げられた。方向感覚が全くない。気が付いたら冷たい海の中にいた。大きな力で体が押し上げられる。<br>
　顔が水面に出た。大きく傾いた隆栄丸が見える。今度は海中に引きずり込まれるほど降下した。浩也の体が冷たい海に翻弄される。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　やがて上下の感覚を掴んだ浩也は、頭だけ何とか水面に出した。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　勇一が何か叫んでいる。塩辛い水が鼻に入って咳き込んだ。が、何とか息は出来ている。<br>
　ザッバーンと大きな音がした。二、三度大波に没した後、髪の毛を後ろから鷲掴みにされた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「じっとせい」<br>
　耳元で勇一の声が響いた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「息溜めて上向け」<br>
　浩也は言われるとおりにした。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　何度も何度も息を吸って仰向けになろうとした。が、下半身が沈んでいく。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　徐々に波はにおさまってきた。<br>
　勇一は、浩也のベルトの所を掴んだまま立ち泳ぎをしていた。勇一の荒い息が耳元で聞こえる。二人の体は上下しながらも隆栄丸に近づいていた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　ごん！　と頭に固いものが当たった。隆栄丸だった。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　勇一が隆栄丸についた車のタイヤにしっかりと手をかけていた。リエの細い手が伸びる。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「も、もう大丈夫やしょ」<br>
　切れ切れの息で勇一が言った。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　二人は何とか隆栄丸に這い上がると、死んだように仰向けになった。荒く早い息が交錯する。時折、リエのしゃくりあげる泣き声が聞こえた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　暫く全くしゃべれなかった。<br>
　不思議なことに寒さも感じない。<br>
　どれだけ時間が過ぎただろう。　</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「おい、生きてるか」<br>
　やっと勇一が言葉を発した。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　浩也はか細い声で「はい」とだけ答えたあと、激しく咳き込んだ。リエが寄り添って背中をさする。<br>
　見上げた星空がグラリと揺らいだ。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「これやったんかっしょ、ワイの親父とお前のおかん」<br>
　勇一の言うとおりかもしれない。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　さっきと同じような状態で母が海に落ち、隆三が助けに入った。船になれていない母や自分が、高波でバランスを失って海に投げ出されるのは当たり前だ。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　生死を分けたのは若さだろう。五十才を過ぎた隆三に、助けるほどの体力は無い。隆三自身も、夜の冷たい海に入ればどうなるかはわかっていただろう。<br>
　命も省みず母を助けようと飛び込んだ隆三。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「あんながいな三角波はじめてやしょ」<br>
　勇一がポツリと言った。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　浩也は三角波を知らなかった。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　三角波とは、大きな船が進む時に出来る航跡波と、その波が防波堤にあたって跳ね返ってくる波とが重なった波のことだ。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　二つの波が重なるため倍以上の高さになる。隆栄丸のいた場所は、漁師仲間でもよく知られる三角波の発生場所だった。勇一も知ってはいたが、山立てに夢中になってそのことを忘れていた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「剛右衛門の呪いってほんまにあるんとちやうか。さっき笹竹沈める時もワイの足にロープが絡まって海中に引きずり込まれるところやったんやしょ。はずれんかったら今頃ワイは海の底で沈んだままやしょ」<br>
　そこまで言って勇一は何かに気づいたように血相を変えた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　まさか･･････。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　勇一の話では、隆三と母が出航する時にもオモリのついた同じ笹竹が積み込まれていた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　浩也は、起き上がると船縁にしがみついて真っ暗な海面に視線を落とした。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　勇一もリエも言葉を失った。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「貴志さん、明日潜ってください」<br>
　浩也の絞り出すような声に、勇一は「おぅ、わかった」とだけ答えた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　その晩、浩也は勇一にすすめられて貴志家に泊まることになった。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　貴志家は祖母と勇一の二人暮らしで、今はリエが夕食の手伝いなどに通っている状態だ。<br>
　リエは、今夜は母の家に帰り明日の朝出てくるとのことだ。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　時計を見ると十時を回っている。祖母は既に床についていた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　勇一と浩也は順番に風呂に入った。風呂から上がると広い和室に布団が並べられ、勇一があぐらをかいて煙草を吸っていた。<br>
　勇一のまぶたには絆創膏が貼られている。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「喉渇いたら冷蔵庫にジュースあるから飲んどけや」<br>
　と勇一が振り向いた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「ありがとうございます」<br>
　浩也は濡れた髪をタオルで丁寧に拭いた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　床の間の横に豪華な額縁が掲げられている。人命救助の感謝状だった。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「まあ、凄い親父やったわ」<br>
&nbsp; 感謝状を見る浩也の視線に気付いた勇一が口を開いた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　四年ほど前、和歌山港で貨物船のスクリューにロープが絡みついて動かなくなった。ロープを取り除くため、近くで潜水作業の待機をしていた隆栄丸に声がかかった。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　貨物船の船尾で準備をしていると、前方の方からけたたましい声が上がった。<br>
　人が落ちたと叫んでいる。<br>
　どうやら貨物船と岸壁の隙間に釣り人が落ち込んだらしい。隙間は防舷材の幅の一メートル程しかない。とてつもなく大きな貨物船は防舷材を軋ませて揺れている。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　落ちた釣り人は、井戸の中に落ち込んだようなもので掴まるところがない。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　未だ潜水服を着ていなかった隆三は、そのまま飛び込むと素潜りで貨物船の船底をかいくぐり釣り人に到達した。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　もがく釣り人を背後から捉えると落ち着かせ、ロープの投げられるのを待った。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「船底に消えた親父が浮いて来ないんやないかと、ワイは足が震えたっしょ」<br>
　と、勇一は煙草を灰皿に押しつけて話を続けた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「上がってきた親父は、あんぐらいの素潜りやったら神崎一門なら誰でもやらあって、豪快に笑い飛ばしてな」</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「神崎一門？」<br>
　浩也が訊く。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「ああ潜水士集団のことや。親父はもともと徳島の人間なんやしょ」<br>
　勇一は浩也を見上げた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　隆三は、徳島県南部にある伊島と言う小さな島の出身だった。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　伊島は外洋に面し、アワビやサザエ、海鼠などの海産物が豊富に取れる。このため、島の住人は男女問わず潜水作業に長けていた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　高度経済成長期に入ると港湾開発が始まり、伊島の男たちは給料の高い港湾開発の潜水士として近畿の各地に出て行った。<br>
　潜水に長けた伊島の強者たちは瞬く間に一大勢力を結成し、いつの頃からか神崎一門と港湾関係者の間から呼ばれるようになった。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　隆三は神崎一門に属し、独身の頃は大阪港で働いていたが、やがて和歌山港に居着いてしまった。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　その潜水方法は、浩也の全く知らないカブト式と呼ばれるものだ。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　カブト式は、小さな丸窓のついた真鍮製のヘルメットを潜水服と連結し、空気をゴムホースで船上から送り込む潜水方式だ。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　空気は、ヘルメットと連結した潜水服の中にも入るため大きな浮力が生じる。このため、総重量九十キロにも及ぶ鉛靴や鉛ベルトなどが装着された。この状態で一個数百キロもの大石を、畳を敷いたように海底に積んでいく。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　この防波堤の基礎づくりが隆三の得意の仕事だった。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「親父はワイに後を継がせようとしてな、厳しかったで小さい頃から船に乗せられてよ。お姉ちゃんも大変やったわ」<br>
　と、勇一は頭をポリポリとかいた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「船に弱かったんですね」<br>
　浩也はリエから聞かされた話を思い出した。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「ああワイも最初は吐いて吐いて、でも直ぐに慣れよったわ。お姉ちゃんは全然強うならんでかわいそうなぐらい弱かったんやしょ。ほんで船なんか乗れへん言うて中学の時家出て行きおってな。ワイはそん時はこんな親父なんかおらん方がましやって思うた。明けてもくれても海の話ばっかしでとにかく潜水士になる事以外は許してくれんかった。まあそんな親父が海で死ぬやなんて、ほんまに親父らしい最期かもしれんけどな」</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「実は、僕のお父さんも海で死んだんです」<br>
　言って浩也はうつむいた。<br>
「･･････」<br>
　勇一は浩也を凝視するとごくりと息を飲んだ。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「僕が二歳の頃なので、お父さんの記憶は全然ありませんけど」<br>
「おまんの親父、漁師やったんかしょ」<br>
「いえ違います」<br>
　勇一は下唇を噛んで視線を泳がせるとそれ以上は訊かなかった。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　浩也が精一杯会話に応じているという雰囲気をくみ取ったのだろう。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「疲れたからもう寝るか」<br>
　勇一は浩也の返事も待たずに電気を消して床についた。</span></p><br>
<br>
<br>
<br>
<font color="#EE82EE">ガバチャのひとり言<br>
<br>
　小説の中の隆三と勇一の仕事がこれです。<br>
　今では数少ないカブト式潜水士。<br>
　数年前にガバチャが撮影しました。<br>
　ガバチャの仕事って・・・秘密秘密<img src="http://stat.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/139.gif" alt="ニコニコ" /></font><br>
<br>
<iframe title="YouTube video player" width="480" height="390" src="http://www.youtube.com/embed/zkXOlt2PoQY" frameborder="0" allowfullscreen></iframe><br>
<br>
ポチッとヨロシク<img src="http://stat.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/175.gif" alt="ダウン" /><br>
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<br>
<br>
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]]>
</content:encoded>
</item>
<item rdf:about="https://gabacha123.amenityspace.co.uk/archives/2185674.html">
<title>小説「神無月の頃」　その１５</title>
https://gabacha123.amenityspace.co.uk/archives/2185674.html</link>
<description>「そんなあほな、あのかがり火が隠れるっちゅうたら何百トン、いや何千トンもあるほどのよっぽどでかい船やないと隠れんどぉ。だいたい音が全然きこえんやっしょ」
　勇一がリエにくってかかる。

　リエも勇一も言っていることは正しい。
　かがり火の点滅はそれ意外に説明...</description>
<dc:creator>gabacha123</dc:creator>
<dc:date>2011-03-07T07:23:08+09:00</dc:date>
<dc:subject>ガバチャの小説</dc:subject>
<content:encoded><![CDATA[<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「そんなあほな、あのかがり火が隠れるっちゅうたら何百トン、いや何千トンもあるほどのよっぽどでかい船やないと隠れんどぉ。だいたい音が全然きこえんやっしょ」<br>
　勇一がリエにくってかかる。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　リエも勇一も言っていることは正しい。<br>
　かがり火の点滅はそれ意外に説明がつかない。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　だが、二人の話を両立させる巨大な船が明かりもつけずに夜航行などするはずはない。　密漁目的にしても船が大きすぎる。<br>
　一体なんなんだ？</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　神無月から暗雲が流れて切れた。うっすらと海上が煌めく。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「きゃーっ」<br>
　リエが悲鳴を上げて浩也にしがみついた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　リエは、ただ小刻みに身体を震わせ言葉を発しない。浩也は辺りを見回した。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　えっ。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　縦に伸びる細い一本の線がくっきりと見える。<br>
　それは電信柱が暗い海の中で建って揺らいでいるようだ。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「な、なんなんやっしょあれ。ば、化けもんかっ」<br>
　勇一が慌てて足下を探り始めた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「ハッカーどこいったハッカー」<br>
　勇一が狼狽える。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「確か艫に」<br>
　リエにしがみつかれ動きの取れない浩也が言う。勇一は素早く船尾に移動すると長い竹のハッカーを槍のように持ち構えた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「の、呪いなんかあるはずねえんじゃ」<br>
　勇一は大きく息を吐いた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　電信柱のようなものは、揺らぎながらこちらに近づいてくる。音は全く聞こえない。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　浩也は気がどうにかなりそうだった。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　と、再び暗雲が神無月を覆った。漆黒の闇が再び周囲を覆う。電信柱のような化け物の姿が消えた。隆栄丸はひたすら姿を隠すように静まり続ける。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　エンジンをかけた瞬間、見つかって一飲みされるのではないのか。あらぬ想像で浩也の恐怖心はつのるばかりだ。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　勇一も同様なのかエンジンをかけて逃げることをしない。リエはただしゃがんで震えているだけだ。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「親父の敵うったる」<br>
　押し殺した声で勇一が言った時、暗闇の向こうでヒューッと風を切る音がした。<br>
　それは上空の方から聞こえたようだった。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">&nbsp; 隆栄丸を今までにはない大きな波が押し上げる。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　近くに何かがいる。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　規則的な押し波で二、三度船が隆起した時、浩也の目前に見上げるほどの白い鉄柱が降りかかってきた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「うぉーっ」<br>
　勇一が悲鳴を上げて転んだ。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　隆栄丸が軋みながら大きく傾く。浩也はバランスを崩しながらも、しっかりとその巨大な物体を凝視した。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　ヨット！　馬鹿でかいヨットだ。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　そびえる鉄柱に張り付く三角形の黒帆。船尾に二人の人影が見える。その一人が綱を持って大きく仰け反った。目出し帽から白目がぎょろりとこちらをにらむ。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　浩也は腰が抜けたように動けなかった。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　ヨットは隆栄丸を掠めるとそのまま通り過ぎてしまった。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　勇一がコトンとハッカーを手放す。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　暗闇の向こうからドルルルというエンジン音が鳴った。ヨットにエンジンがかかったのだ。照明のついたヨットが遠ざかっていく。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「ヨットのくそ野郎！」<br>
　勇一が慌ててエンジンをかけた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「やめてー」<br>
　リエが声を張り上げる。勇一が船を進めるのを止めた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　やがてヨットの明かりは小さくなって、エンジン音も聞こえなくなった。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　勇一の荒い息が聞こえる。リエはひれ伏したまま動かなかった。船の揺れが徐々に収まっていく。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　三人は暫く押し黙ったままだった。海のざわめきだけが隆栄丸を包む。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「ただの夜航海？」<br>
　半泣きのリエの声。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「ただの夜航海が電気を全部消すかぁ。どっちにしたって、ぶつかっとったら大事故やったいしょ」<br>
　勇一が語気を荒げる。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　浩也の目に目出し帽の姿が焼き付いていた。あのヨットの動きは不自然きわまりない。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　ヨットの明かりは雑賀崎の沖を掠め見えなくなった。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　勇一が天を仰ぐ。浩也とリエも月を望んだ。ちぎれ雲の去った高い夜空に、神無月が浮いている。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「山立てや、山立てぇ」<br>
　勇一は乱暴に言い放つと舵を握った。浩也とリエも所定の位置に戻った。<br>
　三人はまた山立てを再開した。　</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「もう少しやわ」<br>
　勢いのないリエの声。<br>
　じわりと和歌山城の上に神無月が迫ってきた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「かがり火は出会ってます」<br>
　艫で浩也が繰り返す。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　隆栄丸はエンジン音を小刻みに上げ下げして、位置の微調整に入った。短い周期の揺れが身体を震わせる。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「今よ」<br>
「かがり火も出会ってます」<br>
　浩也とリエが同時に叫んだ。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　勇一は傍らに置いたブロックを結わえたロープを瞬時に掴むと、一回後ろに反動をつけて海中に投げ入れた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　ドッボン！　と言う音の直後、勇一の短い悲鳴が上がった。笹竹が海中に強引に引き込まれる時、その笹竹が立ち上がって勇一の顔を叩き上げたようだ。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　リエが慌てて駆け寄る。勇一は左眼を押さえたままうずくまった。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　その手からどす黒い血がトロリと落ちた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「きゃぁ」<br>
　リエが悲鳴を上げる。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「眼ですか？」<br>
　浩也が慌てて近寄った。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「眼やない。まぶたやと思うっしょ」<br>
　勇一は片手で押さえたまましっかり答えた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　浩也が勇一を照明のところに連れて行った。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　勇一の顔を覗き込んだリエは、今度はさっきより大きな悲鳴を上げた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　勇一の左まぶたの上が真横にざっくり割れていた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「へへ、剛右衛門の呪いやしょ」<br>
　勇一はタオルを取り出し眼を押さえた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　勇一はリエを安心させるための冗談だったのだろうが、暗闇でぼんやりと照らしだされた勇一の姿は妙に不気味だった。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　何故か一瞬、勇一が勇一でないような気がして、浩也はブルルと背筋が震えた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　勇一は血で染まっていくタオルを何度も押しつけ直した。</span></p><br>
<br>
<br>
<div align="center"><a id="i11095233083" class="detailOn" href="http://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/2/a/2aa574f8.jpg"><img src="http://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/2/a/2aa574f8.jpg"  alt="鮎釣り師のひとり言" border="0" /></a></div><br>
<br>
<br>
ポチッとヨロシク<img src="http://stat.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/175.gif" alt="ダウン" /><br>
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<br>
<br>
<font size="5"><font color="#FF0000"><a href="http://ameblo.jp/hfgayu/" target="_blank"><font size="6"><font color="#FF0000">超燃える鮎友釣り</font></font></a></font></font>　もヨロシク<img src="http://stat.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/187.gif" alt="グッド！" /><div align="center"><br>
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</content:encoded>
</item>
<item rdf:about="https://gabacha123.amenityspace.co.uk/archives/2185673.html">
<title>小説「神無月の頃」　その１４</title>
https://gabacha123.amenityspace.co.uk/archives/2185673.html</link>
<description>　浩也は今日の天気を何日も前から願っていた。

　和泉山脈から黒いちぎれ雲が流れているものの、空全体からはたいした量ではない。　天気予報では夜半前から下り坂らしいが、黄金色の満月は見事なまでに夜空をスッパリと切り抜いている。
　あの日の月と同じだ。

「すげー...</description>
<dc:creator>gabacha123</dc:creator>
<dc:date>2011-03-03T07:13:28+09:00</dc:date>
<dc:subject>ガバチャの小説</dc:subject>
<content:encoded><![CDATA[<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　浩也は今日の天気を何日も前から願っていた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　和泉山脈から黒いちぎれ雲が流れているものの、空全体からはたいした量ではない。　天気予報では夜半前から下り坂らしいが、黄金色の満月は見事なまでに夜空をスッパリと切り抜いている。<br>
　あの日の月と同じだ。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「すげー満月やしょ」<br>
　勇一の声が弾む。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「星もすごいわ」<br>
　リエの声に、浩也は見上げた。満天下の星が眼に落ちてくる。刹那、隆栄丸が宇宙船になっておびただしい星の中を遊泳しているように思えた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「おい、星やなしにかがり火もちゃんとみとけよ」<br>
　躁船室の明かりに勇一の横顔が浮かぶ。<br>
　かがり火は、真っ暗闇の海にくっきりと浮かんでいた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　あれ？　浩也の目にかがり火の色とは違う明かりが見えた。それは沖の島の南側で揺れて直ぐに消えた。勇一に告げようと振り返るとリエと視線があった。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「見た？」<br>
　リエは少し眉を吊り上げている。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「何の明かりです」<br>
　浩也が問う。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「船の明かりやと思うわ」<br>
　リエは舵を握る勇一に近寄ってそのことを告げた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「どうせチヌの夜釣りやしょ」<br>
　勇一は薄笑って動じない。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「ここは禁漁区よ」<br>
「密漁やっしょ」<br>
「まさか･･････」<br>
　リエは怯えた表情で浩也に振り返った。浩也もとっさに思いついたが、口には出さなかった。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「つけられてるんじゃないの」<br>
　リエの語尾が震える。勇一は目を丸くしてリエを見返すと、首を左右に振って辺りを見回した。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「どういうことやぁ」<br>
　勇一がリエに振り向く。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「他にも同じ事をしようとしている人がいるんやないの」<br>
「お、脅かすなって」<br>
　勇一が吐き捨てる。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「あり得るわ」<br>
　リエは辺りを見回した。<br>
　今日同じ事をしようとしている者が他にもいるのなら、それは母や隆三に手をかけた者の可能性が高い。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　大金は人間を一瞬で邪悪な魔物に変える。漆黒の闇の中で言いようのない不安が隆栄丸を包む。突然手が伸びてきて海中に引きずり込まれるようなあらぬ恐怖、それはやがて入れ替わるように、巨大な憎悪となって浩也の身体に満ちてきた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「やったらあこいやっ」<br>
　勇一の怒声が鳴った。驚いたリエが首をすくめる。<br>
　自分が想像しているところまで、勇一の想像も膨らんだのだろう。本当にそんな相手がいるのなら、掴みかかって殴り倒してやる。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　浩也の中で、ぶつけようのない怒りが焦点の定まらないまま膨張を続けた。</span></p><br>
<br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　だが、その明かりは二度とは見えなかった。勇一の言うとおり密漁船だったのかもしれない。<br>
　かがり火が隆栄丸の東進によって徐々に接近する。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「どないやしょ」<br>
　勇一が大声で振り向く。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「あと少しです」<br>
　浩也は立ち上がって答えた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　かがり火はいよいよ接近した。もう少しだ。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「もうちょっと、もうちょっと･･････はい、出会ったぁ！」<br>
　浩也が叫ぶ。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　勇一が慌てて舵をきった。<br>
　隆栄丸は左に大きく船体を傾け舳先を南に振った。<br>
　勇一が、かがり火を縦に重ねて見ながら南進の速度を上げる。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　やがて前方に、加太から連なる和歌山の夜景が見え始めた。<br>
　星が降り積もったような夜景。その上には見事なまでの神無月が浮かんでいる。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　二百年前につむじ風剛右衛門(かぜのこうえもん)が見た月も、今浮かんでいる月も変わりない。時間と共に移り変わっていくのは、人間が住む地表だけだ。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　隆栄丸が住友金属の高炉の南側に差し掛かった。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「おぉ見てみい、城が光ってらっしょ」<br>
　勇一が言った。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　遠くに白光する和歌山城が浮かびあがった。<br>
　和歌山城は観光シーズン中はライトアップを行っている。浩也はそんなことも計算済みだ。南進と共に神無月が徐々に城の上空に近づく。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「僕は艫でかがり火を見ます」<br>
　と浩也。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「私は神無月と城を見るわ」<br>
　とリエ。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「よっしゃ、一致したらワイが竹落とすっしょ！」<br>
　勇一は片手で舵を握ったまましゃがむと、笹竹についたロープを確認した。ロープの先にはおもりのブロックが二ついている。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「かがり火は出会ったままです」<br>
　浩也が繰り返す。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「後ちょっとよ」<br>
　リエの甲高い声が上がる。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　えっ？　<br>
　と浩也の絶句。<br>
　視界からかがり火が忽然と消えてしまった。そんな馬鹿な。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「二つともかがり火が消えました」<br>
「なっ、なんやてっ」<br>
　勇一が船を減速する。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「ちゃんと見えてるやないかあ」<br>
　勇一の言うとおり、振り返るとかがり火は二つとも見えていた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「すいません見間違えました」<br>
　浩也は見間違いはないと思ったがとりあえずそう言った。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「あっ、消えた」<br>
　今度はリエが言った。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「なんてよぉ」<br>
　勇一は上げたエンジンをまた下げた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「勇一、エンジン切って」<br>
　リエが駆け寄って早口で言うと、勇一は素直にエンジンを切った。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　隆栄丸から一切の照明が消える。<br>
　タイミングを合わせたように黒いちぎれ雲が神無月を覆った。漆黒の闇。ザワザワと波の音だけが騒ぐ。右手に伸びる和歌山の夜景、その左手は暗闇で微かに淡路側の灯が点在するだけだ。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　浩也は、不規則に揺らぐ船底を這い蹲って躁船室までたどり着いた。<br>
　三人は躁船室で寄り添うようにしてかがり火の方を見た。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　かがり火はひとつになったり二つになったり、全部消えたりしている。<br>
　時折船底を突き上げる小さな揺れが恐怖心をあおり立てた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「なっなんなんやしょこれぇ」<br>
　勇一の声が裏返える。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「船よ、船が近づいてるんやわ」<br>
　リエが震えた声で言いながら、浩也のフリースを掴んだ。</span></p><br>
<br>
<br>
<div align="center"><a id="i11086372365" class="detailOn" href="http://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/c/0/c0c7b049.jpg"><img src="http://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/c/0/c0c7b049.jpg"  alt="鮎釣り師のひとり言" border="0" /></a></div><br>
<br>
<br>
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<br>
<br>
<font size="5"><font color="#FF0000"><a href="http://ameblo.jp/hfgayu/" target="_blank"><font size="6"><font color="#FF0000">超燃える鮎友釣り</font></font></a></font></font>　もヨロシク<img src="http://stat.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/187.gif" alt="グッド！" /><div align="center"><br>
]]>
</content:encoded>
</item>
<item rdf:about="https://gabacha123.amenityspace.co.uk/archives/2185672.html">
<title>小説「神無月の頃」　その１３</title>
https://gabacha123.amenityspace.co.uk/archives/2185672.html</link>
<description>　いつの間にか船は速度を落として港内に入っていた。

　今年の神無月の満月は十二月五日。

「貴志さん、ありがとうございました」
　浩也は下船して丁寧に頭を下げた。

「で、十二月五日行くんか？」
「はい、お願いします！」
　深々と頭を下げる浩也の足下に、舫ロープ...</description>
<dc:creator>gabacha123</dc:creator>
<dc:date>2011-03-02T07:25:37+09:00</dc:date>
<dc:subject>ガバチャの小説</dc:subject>
<content:encoded><![CDATA[<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　いつの間にか船は速度を落として港内に入っていた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　今年の神無月の満月は十二月五日。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「貴志さん、ありがとうございました」<br>
　浩也は下船して丁寧に頭を下げた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「で、十二月五日行くんか？」<br>
「はい、お願いします！」<br>
　深々と頭を下げる浩也の足下に、舫ロープが飛んできた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「それ、結んでくれや」<br>
　勇一は浩也に指図したが、浩也は結び方を知らない。リエが教えようとすると勇一が上がってきた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「こんくらい知っといてもらわなぁ神無月の夜に足手まといにならあ」<br>
　白い歯を見せると勇一は浩也に結び方を教えた。</span></p><br>
<br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　数日後、浩也は松江から自転車に乗って、久しぶりに西ノ庄の山手にあるハーブ園に行った。母と西ノ庄のグリーン団地にいた頃に、二人でよく散歩に来たところだ。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　母はハーブが好きでここに来たのではなかった。<br>
　ここから和歌山の海を眺めるのが好きだったのだ。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　浩也の幼い頃―――。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　ハーブ園の眼下には、市街地から続く海原が広がっていた。母はしゃがむと自分の肩に手を置いて顔を寄せた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「浩也、あの船見ておっきいでぇ」<br>
　住友金属に向かう大型の貨物船だった。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「お父ちゃんなぁあそこで働いてたんやで」　<br>
　母は、市街地の中に林立する大きなタンクや煙突の方を指さした。それは住友金属だった。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「何してたん？」<br>
　浩也は小学生の低学年だった。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「鉄よ、鉄。鉄っていう大事なもんつくってたんよ」<br>
「テツ？」</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「もうちょっと大きいなったら学校で習うわ。世の中のためになる大事な仕事や。お父ちゃんはな、あの和歌山の住金で毎日一生懸命鉄をつくって、今の日本の便利な世の中をつくったんや。日本だけやない、世界中のためになったんやで。ただ、お父ちゃん働き過ぎたんや･･････」<br>
　母はそこまで言うと涙を流した。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「お母ちゃん、ぼくが大きいなったらテツいっぱいつくるわ」<br>
　浩也は、遂に母からは父の死因を聞かされずじまいだった。<br>
　親戚のおばさんから、ある日突然逝ってしまったと言うことだけ聞かされただけだ。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　浩也は、どんな死に方でも人間死んでしまえば皆同じだと思った。<br>
　眼下の和歌山の海は、いつもと変わらずただ青々とした海水をたたえているだけ。浩也は、平然となずむ和歌山の海にやりきれないもどかしさを感じた。　</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　十二月五日の夕方、西脇漁港に集まった三人は山立ての道具を隆栄丸に積み込んだ。<br>
　道具は灯油の入ったポリタンク二つと笹竹。笹竹の端にはロープで結わえられたおもりのブロックが二つついている。<br>
　リエは父への供養の花束と酒を下げていた。酒は黒江で買った黒牛だ。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「その笹竹、位置出しして沈めるんですか」<br>
「ああせっかくやからなあ」<br>
　浩也の問に勇一がにたりと答えた。</span></p><br>
<br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　笹竹は、定めたポイントの目印として沈めるためのもの。<br>
　やはり、勇一は数十億円もの財宝を探すつもりなのだ。浩也にはそこまで付き合うつもりはない。母の手がかりを得ることで頭がいっぱいだ。<br>
　<br>
　この航海で何も得られなければ諦めざるを得ない。その後、勇一が誰と財宝探しをしようと浩也の知ったことではないと思った。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　隆栄丸が薄暮の港をゆっくりと滑り出す。陽は西の海に落ちきっていた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　沖の島に着くと、浩也がポリタンクを持って船から降りた。<br>
　浩也は崖を這って鉄筋籠に達すると、流木を集めて詰め込んだ。浩也を下船させた勇一はリエと共に地の島に向かう。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　三人は、それぞれの島で暗くなるのを待った。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　浩也は沖の島を選んだ。理由は沖の島の方に母が上陸した可能性が高いからだ。それは鉄筋籠の位置が地の島より低いことと、沖の島の方には船をつなぎ止める木が近くに生えていない事。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　おそらく隆三は母を沖の島に降ろし、一人で地の島の方に行って磯の傍らに生える松の木に船をつなぎ止めた。二人はそうして紀伊水道が暗闇になるのを待ったはずだ。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　風が強い。浩也の身体は一挙に冷やされた。しゃがみ込むとフリースのフードをすっぽりとかぶって膝を抱えた。吹きさらされた岩が浩也の腰を冷やす。たまらず立ち上がって松の木にもたれた。少しだけ風が遮られる。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　西の空の夕焼けが眼球だけを温めているようだ。<br>
　それは美しいというよりかは不気味な赤さだった。水平線に墨筆を真横に引いたような雲が広がっていて、その水平な裂け目から漏れる夕日が、ちょうど火のついた炭火の芯のように赤らかと燃えている。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　母はここでどんなことを考えていたのか。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　浩也は中学二年の時、母に東京の大学に行きたいと漏らしたことがあった。<br>
　通知票の成績が良く、先生からほめられて有頂天になっていた学期末の日だった。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　母が喜んでくれると思って言ったのだが、喜びの笑みではなく真剣な顔つきになった。　どんなことをしてでも東京の大学に行かせてあげる、と母は自分の手を強く握った。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　お金のことなど考えもせずに、浩也はつい軽はずみなことを言ってしまったことを後悔した。<br>
　そのことがずっと重荷になって、高校に入ってからやはり就職したいと言い直しても母は言うことを聞かなかった。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　母が学費のことで悩んでいるのではないのかと思うと、辛かった。お金のために、本当はあまり好きでもない隆三と付き合っていたのではないのだろうか。自分を東京の大学に行かせるためにあんな男と一緒になろうと考えていたのではないのかと。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　浩也は急に居たたまれなくなって、立ち上がると大きな奇声を上げた。奇声はあっけなく潮風に消された。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　見下ろすと怖気立つほど濃い海水が、音もなく砕け散っている。<br>
　浩也は、眼下の遙か海水の奥深くに吸い込まれそうな気分になり怯んで後ずさりした。　眼下でゆっくりと同じリズムでうねり返す海水は、いつの間にか黒と白の二色になっていた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　腕時計が六時半を指している。勇一と示し合わせた時間だ。<br>
　浩也は、鉄筋籠の流木に灯油をかけた。マッチを一本すってその籠に投げ入れた。ぼわっと火がつく。浩也は全ての流木に火が回ったのを確認すると、急いで岩場を降りた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　隆栄丸の灯りが東の方から近づいている。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　浩也は海に背中を向けると這い蹲って岩場を下りきった。意外にも隆栄丸は既に岩場に着岸していた。<br>
　浩也はさっき隆栄丸だと思った船の方を見た。真っ暗な海には明かりはない。やはりさっき見たのは隆栄丸だったのだろう。暗闇なので距離感がないのかもしれない、と浩也は思い直した。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「ど、どぅや上手く火ぃついたかっしょ」<br>
　勇一がせかすように言う。<br>
「はい」<br>
　浩也は答えると隆栄丸の艫にしゃがみ込んだ。<br>
　隆栄丸が真っ暗な海を東に進み始める。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「わぁ」<br>
　浩也は東の空を仰いで思わず声を上げた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　地の島の切れ間に黄金色の満月が浮いている。</span></p><br>
<br>
<div align="center"><a href="http://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/c/7/c7ca089c.jpg" title="c7ca089c.jpg" target="_blank"><img src="http://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/c/7/c7ca089c-s.jpg" width="800" height="600" border="0" alt="c7ca089c.jpg" hspace="5" class="pict"  /></a><br /></div><br>
<br>
<br>
ポチッとヨロシク<img src="http://stat.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/175.gif" alt="ダウン" /><br>
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<br>
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<font size="5"><font color="#FF0000"><a href="http://ameblo.jp/hfgayu/" target="_blank"><font size="6"><font color="#FF0000">超燃える鮎友釣り</font></font></a></font></font>　もヨロシク<img src="http://stat.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/187.gif" alt="グッド！" /><div align="center"><br>
]]>
</content:encoded>
</item>
<item rdf:about="https://gabacha123.amenityspace.co.uk/archives/2185671.html">
<title>小説「神無月の頃」　その１２</title>
https://gabacha123.amenityspace.co.uk/archives/2185671.html</link>
<description>　勇一は、鉄筋籠をしっかり見届けると腰を落として忙しく舵をきった。
　隆栄丸が舳先を東側の地の島に向け速力を上げる。

　地の島は沖の島と向かい合う側はほとんどが岩場だ。海鳥が同じ方を向いて風に耐えている。隆栄丸が近づくと、海鳥たちは強風に煽られて紙くずのよ...</description>
<dc:creator>gabacha123</dc:creator>
<dc:date>2011-02-27T20:56:23+09:00</dc:date>
<dc:subject>ガバチャの小説</dc:subject>
<content:encoded><![CDATA[<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　勇一は、鉄筋籠をしっかり見届けると腰を落として忙しく舵をきった。<br>
　隆栄丸が舳先を東側の地の島に向け速力を上げる。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　地の島は沖の島と向かい合う側はほとんどが岩場だ。海鳥が同じ方を向いて風に耐えている。隆栄丸が近づくと、海鳥たちは強風に煽られて紙くずのように散っていった。<br>
　岩場には朽ち果てた松の残骸が枝を広げ、夥しい流木の山が積もっている。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「あ、あそこに！」<br>
　浩也が大声で指す。<br>
　こちらにも同様の鉄筋でできた籠があった。勇一が隆栄丸のエンジン音を上げる。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　古文書によると、沖の島と地の島のかがり火が出会った所が一つの見通し線となる。<br>
　その見通し線を沿って南に進み、和歌山城の真上に満月が差し掛かったところに財宝は眠っている。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　今は日中で下見。満月もなく正確な山立ては出来ないのに、浩也らは妙な緊張感に包まれていた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　隆栄丸が東進する。<br>
　徐々に、沖の島と地の島が接近してきた。浩也は沖の島の鉄筋籠と地の島の鉄筋籠を交互に見ながら縦に並ぶ地点を待った。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　中瀬戸からの強い下げ潮で船が揺れまくる。まるで大河を横切っているようだ。<br>
　三人は示し合わせもしていないのにお互いの役割がわかっていた。船の艫からじっくり友が島を眺めることの出来る浩也が、鉄筋の籠と籠が縦に並ぶところを知らせなければならない。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　勇一が、鵜の目鷹の目で岩礁を避けながら舵をきる。その間にしゃがむ伝達役のリエが、浩也と勇一を忙しく交互に見る。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「もう少しです、もう少し」<br>
　浩也がリエに向かって繰り返す。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「で、出会いましたぁ！」<br>
　二つの籠が縦に並んだと同時に船縁にしがみついた浩也が叫ぶ。すかさず立ち上がったリエが勇一に駆け寄って耳元で反復する。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　勇一が慌てて舵をきった。隆栄丸は大きく左に傾き舳先を南に振った。隆栄丸が速度を上げる。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　揺られながら、浩也は遙か太平洋へと続く紀伊水道を遠望した。<br>
　光の粒をはじく海面を眺めるうち、妙にすがすがしい気持ちになってきた。海は何もかもをいやしてくれる目に見えない粒子を発しているのかもしれない。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　母も隆三に船に乗せてもらって何度となくこの気持ちを味わったのだろう。<br>
　父が亡くなってからずっとふさぎ込みがちだった母。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　今から思うと、母が貴志隆三という男と出会ってから明るく生き生きしていたのは、この茫洋たる青海原を眺めたからなのかもしれない。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　勇一は、直ぐに山立ての要領を得た。しきりに振り返りながら鉄筋籠が縦に並ぶ見通し線上を器用に南進する。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　加太の半島を過ぎたところで、住友金属の溶鉱炉が見えた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　その遙か向こうに和歌山城が微かに見えたが、まだ山立てが出来る大きさではない。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　リエが船上に地図を広げた。<br>
</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　かがり火の見通し線は埋め立てる以前の海岸線とほぼ並行だ。船が住友金属の魚釣り公園に差し掛かる。ここまで来ると、和歌山城がはっきり見えだした。隆栄丸はエンジン音を落とした。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「この辺りから雑賀崎までやしょ」<br>
　そう言って、勇一は和歌山城の方をじっと見据えた。<br>
　浩也は手摺りを伝って、勇一の立つ躁船室の方に移動した。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「ここらは深いんですか？」<br>
「航路で深いんやしょ。掘ってないとこは埋まって浅いけどよぉ」<br>
　勇一はやたら詳しい。隆三から教わったのだろうか。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「ワイはな、学校は中学しか出てへんけど港湾のことはくわしいんや。親父について潜りやっとったからな」<br>
「潜りって？」<br>
「潜水士のことや。親父は潜ってこんな大きな石を平らに敷いたりしてたんや。ワイは親父に替わって二年前からやけどな」<br>
　勇一は両手を広げ豪快に笑った。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　てっきり漁師だと思っていたのに、と意外な顔をする浩也に勇一は話を続けた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　加太から雑賀崎までの間は紀ノ川の扇状地で、港湾開発によって大型船のための航路を掘っている。底は巨大な溝のように深い。それ以外の海底は、河川からの土砂が海に堆積して表面は浮泥だ。細かく軟らかな土で歩くこともままならない。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　勇一は、真っ暗な海底で何度も腰まで埋もれ、空気調節でなんとか脱出したが生きた心地がしなかったと言う。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　更に海底には夥しいゴミが堆積しているとのことだ。<br>
　河川は出水時に、土砂だけでなく大量のゴミも排出する。浮泥に埋もれた自転車に足を取られたり、ワイヤーロープに絡まったりと潜水士は命がけだ。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「まあ二百年以上も前やったらどんだけ埋まってるかわからんわしょ」<br>
　勇一はまた舵を握った。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　防波堤に沿って少し南進すると、南海電車の和歌山港駅に隠れ和歌山城は見えなくなった。南海電車は土手の上にある。むろん江戸時代には南海電車はないが、そこには松原が広がっていてやはり見えなかったはずだ。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　和歌山城が確認できたのは、住友金属の埋立地の西端から本港地区防波堤の北端付近までだった。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　和歌山城が見えなくなると、隆栄丸は雑賀崎の沖でＵターンした。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　リエが頭を下げて合掌するのを見て浩也も合掌した。船は一定の音量を上げながら、西脇漁港に向け一直線に進んだ。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「けっこう船に強いんやね」<br>
　リエが艫に座る浩也に近寄って声をかけた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「一応酔い止めを飲んできました。でも、ちょっと酔ってますけど」<br>
「実は私弱いのよ」<br>
　リエははにかんだ。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「なんか全然平気そうですけど」<br>
「皮肉なもんやわ。何で酔わへんのやろ」<br>
　リエはため息をついた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　浩也は座ったままリエを見上げた。リエの短い髪がパサパサと風になびく。近くで見ても、隆三に似たところはどこにも見あたらない。<br>
　きっと母親にそっくりなのだろう。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「ほんまはお父ちゃんは私を送気員として船に乗せ、勇一に潜らせて三人で潜水士船をやりたかったんやけど、私が船に弱いばっかりに何もかもが狂うてしもうたんや。それが何で今頃酔わへんようになったんやろ」<br>
　リエは唇の端を噛むと、水平線の方に視線を移した。<br>
　浩也は黙って耳を傾けた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「お父ちゃんは仕事はようしたけど毎日酒ばっかり飲んで、リエが船に弱いんはお前のせいや言うてお母ちゃんをいっつも責めたんや。小学六年の頃、私はお母ちゃんのために船酔いに強うなろう思うて友達と遊ぶのもやめて何度もお父ちゃんの船に乗った。それでも私はいつも酔って吐いてぐったりなって、帰ったらいつもお母ちゃんが介抱してくれた。私は洋服のデザイナーになるのが夢やったんや。お母ちゃんはそんな私の気持ちをようわかってくれてて、ついに耐えきれんようになって私だけを連れて家を出たんや。勇一はお父ちゃんがどうしても離さんいうて一緒に連れて行かさんかった。今はあんなに厳つい勇一が、お母ちゃんについていきたい言うて泣き続けたわ」<br>
　リエは舵を握る勇一を虚ろな目で見た。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「じゃあ今は」</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「お父ちゃんがこんな事になって、おばあちゃんがちゃんとした生活もできへんようになってるから、私がお母ちゃんの家とこちらの家を行ったり来たりしているんや。ほんまにどうしようもないお父ちゃんやった。最後は宝探しやなんて」<br>
　リエは堪えきれなくなったのか、細めた目を潤ませた。</span></p><br>
<br>
<br>
<font color="#EE82EE">ガバチャのひとり言<br>
<br>
　海に出ると何故か心が癒される。<br>
　母の胎内を満たしている羊水や人間の血液が成分的に似ているという話の通り、ボクらの祖先は海にいたのだろう。<br>
<br>
　ひとつ海に訊いてみたい。<br>
<br>
　もともとアメーバみたいなのが、ちゃっかり進化して陸に上がって二本足で立ってついには酒を飲みカラオケを歌うようになってアメブロをするなどということを予想していたのかと。<br>
　四十億年後、こんな記事を書いているガバチャというハンドルネームの人間の心を癒すなどと言うことを海の揺らぎは知っていたのかと。<br>
　・・・ウィッ！！　飲み過ぎたので寝ましゅ<img src="http://stat.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/188.gif" alt="べーっだ！" /></font><br>
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<br>
<br>
ポチッとヨロシク<img src="http://stat.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/175.gif" alt="ダウン" /><br>
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<br>
<br>
<font size="5"><font color="#FF0000"><a href="http://ameblo.jp/hfgayu/" target="_blank"><font size="6"><font color="#FF0000">超燃える鮎友釣り</font></font></a></font></font>　もヨロシク<img src="http://stat.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/187.gif" alt="グッド！" /><div align="center"><br>
]]>
</content:encoded>
</item>
<item rdf:about="https://gabacha123.amenityspace.co.uk/archives/2185670.html">
<title>小説「神無月の頃」　その１１</title>
https://gabacha123.amenityspace.co.uk/archives/2185670.html</link>
<description>　鈴木民芸品を出ると既に陽が傾いていた。

「やっぱりユウコのお父さんはすごいわ」
「あのおっさん何者やねん。ただの鑑定士やなしに学者みたいやんか」　
　勇一が助手席に身をうずくめたまま言う。

　リエの話では関東の有名国立大学で数年前まで研究員をしていたそう...</description>
<dc:creator>gabacha123</dc:creator>
<dc:date>2011-02-26T17:26:15+09:00</dc:date>
<dc:subject>ガバチャの小説</dc:subject>
<content:encoded><![CDATA[<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　鈴木民芸品を出ると既に陽が傾いていた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「やっぱりユウコのお父さんはすごいわ」<br>
「あのおっさん何者やねん。ただの鑑定士やなしに学者みたいやんか」　<br>
　勇一が助手席に身をうずくめたまま言う。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　リエの話では関東の有名国立大学で数年前まで研究員をしていたそうだ。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　車が国体道路に差し掛かかると、渋滞に巻き込まれた。<br>
</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　間違いなく母と隆三は宝探しに船を出した。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　十一月五日、加太の漁港を出航した二人は、いったん友が島に上陸してかがり火を焚いて離島し船を南進させた。<br>
　そして、和歌山城に神無月が乗ったところでエンジンを止め、錨を降ろそうとしたところで何らかのアクシデントに遭遇し海に転落した。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　予定通り事が運んでいれば、付箋にあった六日後の十一月十一日に潜水して宝を探すことになっていたのだろう。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　浩也の頭の中に、その日の情景がうっすらと浮かんできた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　浩也はとにかく母と同じ経路を辿りたいと思った。<br>
　同じ行動を取れば、母の手がかりが得られるかもしれないし、母の気持ちもわかってくるような気がした。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　母だけでなく、十五年前海に散った父の事も同様にわかるのではないのか。浩也はじっとしていられなくなった。積もっていた焦燥感が、古文書の解読によって一挙に加速した。後は船を持っている勇一に頼るしかない。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　浩也は勇一が言葉を発するのをじっと待っていた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「で、どないすんやしょ？」<br>
　勇一が振り返る。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「ぼく明日学校休みます」<br>
　浩也は待ちかまえたように答えた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「明日船出せってかよ」<br>
「昼間に下見が必要です」</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「私も行くわ」<br>
　リエが運転をしながらポツリと言った。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「アネキ、大丈夫なんか？」<br>
　勇一が身を起こして訊いた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「久しぶりやし。船に乗りたいんや」<br>
　勇一はリエの方をジッと見ると、また背中を丸めて座席に身を沈めた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「じゃあ九時やな。朝の九時に西脇漁港に来いや」<br>
<br>
<font size="3">　二週間前に父親が死に至った経路を辿るのは、複雑な心境だろう。<br>
<br>
　勇一は自分のために付き合ってくれているのだろうか。それとも、数十億円もの財宝が気に掛かったのだろうか。リエはどうなのか。<br>
<br>
　大金は人間の行動原理をあっさりと支配してしまう、といつか読んだ本を思い出した。大金のために衝動的殺人を犯してしまうことなど日常茶飯事なのだと。<br>
<br>
　父や母が大金に目がくらんだとは思いたくないが、このことが原因で不幸にあったのは事実だろう。<br>
<br>
　ふと、浩也はあることに気づいた。<br>
<br>
　まさか･･････。<br>
<br>
　隆三や母が誰かに殺められた可能性だってあるのではないか。<br>
<br>
　同じ宝を探していた者がいないとは限らない。<br>
　昨日までは自分しか知らなかった宝の地図を、今は自分以外の四人もの人間が知っている。それも自分とは顔見知りでも親しい人間でもない。<br>
<br>
　昨日今日出会った人間たちばかりだ。数十億円もの大金を前にしたらどのようなことになるのかわからない。<br>
<br>
　勇一やリエが何を考えているのか、白髪男やユウコは見たとおり善人なのか。<br>
<br>
　浩也は唇を噛んだ。<br>
<br>
<br>
　翌日、浩也は西脇漁港に向かった。<br>
<br>
　勇一は既に隆栄丸に乗り込んで出航の準備をしていた。隆栄丸は、所狭しと並ぶ漁船の中でも大きい方で定員五名とある。<br>
<br>
　船体周囲には車のタイヤが取り付けられてあり、中央からやや後方にガラス戸の付いた小さな操船室があった。<br>
<br>
　そこから船尾にかけてはテント生地が屋根のように張られている。操船室の両側から長いアンテナのようなものが数本立っており、小さな旗が巻かれていた。<br>
<br>
　浩也は、これが母が最後に乗った隆栄丸かと胸が締め付けられる思いになった。<br>
<br>
　勇一が、顎をしゃくって浩也に乗船を促す。リエが躁船室から顔を覗かせ会釈すると、忙しそうにロープをたぐり始めた。<br>
<br>
　この姉弟は小さい頃から隆三に連れられてこの船に乗っていたのであろう。<br>
<br>
　浩也は隆栄丸に飛び乗ると、船縁にしゃがみ込んで木造の船体を撫でた。木製の船縁は朽ちた表面が丸みを帯び、その上に塗られた白いペンキが塗りたてのような光沢を放っている。<br>
<br>
　隆栄丸は突如大きなエンジン音を発した。下腹に響くエンジンが体内の血液まで揺さ振ったのか、浩也の顔が紅潮する。<br>
<br>
　船はゆっくりと離岸すると、鏡のような水面に波紋を広げて滑り出した。<br>
<br>
　港を出て視界に外洋が開けたかと思うと、船は舳先を友が島に振って速力を上げた。<br>
<br>
　青い海と空の間に、島とは思えないほど大きな淡路島が居座っている。その左手へと伸びる水平線は地球の曲率をくっきりと表していた。<br>
<br>
　海原を半時間ほどつききると、隆栄丸は友が島の南側に達した。<br>
<br>
　友が島は、西側の沖の島と東側の地の島の二つの島から成り立っている。南側から北側に位置する両島を望むと、向かって左手に沖の島、右手に地の島がある。沖の島の方が少し大きい。お互いが隣接する側は、沖の島が奥の方に引っ込み地の島が前面に出っ張っている。<br>
<br>
　船の位置を右手の地の島側に進めるほど、両島が接近するように見えてくる。<br>
<br>
　隆栄丸は、スピードを緩めてまず沖の島の東端へと接近した。<br>
<br>
　目の前に、沖の島の断崖が落ちてきそうに迫り上がっている。<br>
　断崖からの返し波が隆栄丸を繰り返し突き上げる。<br>
　不気味なほど青澄んだ海水は、競り合う大岩にぶつかって轟々と白く砕けていた。<br>
<br>
　隆栄丸を塩辛い気泡が包む。もはや立っていられない。浩也は、塩辛い唇を舐めるとしゃがみ込んだ。<br>
<br>
「お、おいっ！」<br>
　勇一が目を剥いて断崖の一角を指さした。<br>
<br>
　その方向には、生い茂る樹木を突き破って巨大な岩が東に剥き出ていた。その岩にしか気付かない浩也に、勇一ほどの驚く顔は現れない。<br>
　しかし、目を細めてじっと岩を望んでいたリエまでもが、驚きの表情に変わった。<br>
<br>
「鉄筋やあっ！」<br>
　勇一の大声が風に流される。<br>
<br>
　船が波で押し上がった時、浩也の目に鉄筋でつくられた冷蔵庫ほどの箱形の物体が見えた。その中から何本かの黒い木の燃えかすのようなものが突き出ている。<br>
<br>
　三人は交互に顔を見合わせた。<br>
　これがかがり火なのか。無人島に不自然に置かれた人工物。<br>
　古文書の山立てのことを知らぬ者が見かけても、全く見当などつかないだろう。<br>
<br>
　つくったのは隆三か、それとも十五年前の自分の父なのか。火をつけたのは母なのか。<br>
　かがり火の根拠を目の当たりにして、隆三や母が宝探しをしたということがいよいよ現実味を帯びてきた。<br>
<br>
　三人は波に突き上げられながら呆然と鉄筋籠を眺めた。</font><br>
<br>
<br>
<br>
<font color="#EE82EE"><font size="1"><font size="2">ガバチャのひとり言<br>
<br>
　西脇漁港はガバチャの自宅から自転車でも行けるくらいのところです。<br>
　ちょうど今頃の季節から、たくさんの漁船が出てイカナゴ漁が行われます。<br>
<br>
　イカナゴのクギ煮は全国的な食品ブランドになりましたね。<br>
　あれでビールをやると最高なんだよな</font><img src="http://stat.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/193.gif" alt="にひひ" /></font></font><br>
<br>
<div align="center"><a href="http://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/c/0/c0cc92b2.jpg" title="c0cc92b2.jpg" target="_blank"><img src="http://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/c/0/c0cc92b2-s.jpg" width="800" height="600" border="0" alt="c0cc92b2.jpg" hspace="5" class="pict"  /></a><br /></div><br>
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ポチッとヨロシク<img src="http://stat.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/175.gif" alt="ダウン" /><br>
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<font size="5"><font color="#FF0000"><a href="http://ameblo.jp/hfgayu/" target="_blank"><font size="6"><font color="#FF0000">超燃える鮎友釣り</font></font></a></font></font>　もヨロシク<img src="http://stat.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/187.gif" alt="グッド！" /><div align="center"><br>
]]>
</content:encoded>
</item>
<item rdf:about="https://gabacha123.amenityspace.co.uk/archives/2185669.html">
<title>小説「神無月の頃」　その１０</title>
https://gabacha123.amenityspace.co.uk/archives/2185669.html</link>
<description>「火ですよ、火ぃ」
　白髪男はみんなの顔を見まわした。

「あっ」
　浩也が声を上げる。

「狐の送り火！」
　リエとユウコが顔を見合わせて言った。
　勇一がくわえ煙草を外し、口をポカンと開けた。

　思いついてみれば当たり前のことだった。古文書には、半円が接した...</description>
<dc:creator>gabacha123</dc:creator>
<dc:date>2011-02-25T07:00:25+09:00</dc:date>
<dc:subject>ガバチャの小説</dc:subject>
<content:encoded><![CDATA[<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「火ですよ、火ぃ」<br>
　白髪男はみんなの顔を見まわした。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「あっ」<br>
　浩也が声を上げる。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「狐の送り火！」<br>
　リエとユウコが顔を見合わせて言った。<br>
　勇一がくわえ煙草を外し、口をポカンと開けた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　思いついてみれば当たり前のことだった。古文書には、半円が接したところに米粒ほどの塗りつぶしが縦に並んでいた。それは間違いなく、つむじ風剛右衛門が家来に焚かせたかがり火だろう。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　暗闇の海で、友が島方面の二つのかがり火が縦に並ぶところに船を移動する。そのかがり火が縦に並んで見える状態のまま船を南進させ、和歌山城の上空に満月が乗ったところで船を止める。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　当時、和歌山城は夜中でも灯がともり明るかったのではないのか。あるいは、満月なら白光して見えたのかもしれない。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　船術に長けたつむじ風剛右衛門は、夜の海から見える四つの明るい目標物をあらかじめ想定していた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　莫大な財宝を陸に埋めようとすれば、数人の家来を要し盗掘のリスクが高まる。海ならば財宝を家来に船に積み込ませ、暗くなるまで出航を待てばよい。後は、目的地に行って海に投げ込むだけなのだ。労せずともやがて紀ノ川の土砂が埋めてくれる。こんな楽な埋蔵方法は他にない。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　ただし、この場合でもかがり火を四カ所焚いた方法での山立てだと、関わった家来によって宝の在処がわかる。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　だから、四つの目標物の内二つは、つむじ風剛右衛門自らのみ知りうるものでなければならなかった。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　つむじ風剛右衛門は江戸時代の夜に、和歌山沖からでも確認できる陸の目標物を思案した。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　それが和歌山城と満月だったのだ。</span></p><br>
<br>
<p></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　皆の推測はほぼ一致した。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「ほんまに親父はそんな事しに行ったんかいなあ」<br>
　勇一があぐらをかいて項垂れる。リエも口を真横に結んだ。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　浩也は、あの晩の目映いほどの満月をはっきり覚えていた。母と隆三があの満月を頼りに、古文書に記されている山立てをしようとしたに違いない。それに祖父から聞いた父のチャッカマン、これもかがり火に火をつけた道具に違いない。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「あのぉ、この端にも何か書かれてますよね」<br>
　リエが古文書を指さして訊いた。古文書の左端にミミズの這ったような文字が二行書かれている。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「まあ、これを書いた者が財宝が盗掘されるのを牽制するために書いたものでしょうが」<br>
&nbsp; 白髪男はそう言って少し口を歪めた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「なんて書いてあるんですか？」<br>
　浩也が訊いた。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「財宝に手をつけし者、剛右衛門の呪いにより末代まで地獄へと堕ちる」<br>
　白髪男は、カチャカチャと音を立ててコーヒーをすすった。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　浩也の眉間にしわが寄る。その後ろで勇一が舌打ちをした。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「けっ、昔の野郎がいい加減なこと書きやがってよ」<br>
　勇一は首枕をしてプイッと寝っ転がった。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　この文章の解説をしなかったのは、白髪男が自分たちの心情を気遣ってのことだろう。　重苦しい場の雰囲気に浩也らは暫し押し黙った。白髪男は、冷めたコーヒーをわざと音を立ててすすっているようだ。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「ただ･･････」<br>
　と、白髪男は何かに気付いた表情で腰を上げた。</span></p><br>
<br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　白髪男は部屋の隅の書棚を探ると小さな冊子を取り出した。<br>
　表紙には平成十七年の旧暦と書かれてある。白髪男は忙しく捲るとある頁を開いて首を小揺すりした。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「今年の神無月は十一月ではありませんよ。今年は旧暦の閏年（うるうどし）にあたります。閏文月（うるうふみつき）があり、神無月は例年より一月遅れの十二月上旬になります」<br>
　白髪男は新暦と旧暦の違いや閏年をたとえて旧暦の閏文月の説明をした。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">　が、浩也は直ぐに理解できない。リエや勇一も首を傾けて聞き流しているだけだ。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「一月ずれると場所が大きく変わるんですか」<br>
　説明が終わるのを待ちかねたように浩也が訊く。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「多少変わりますがそんなに大きな差ではありません。計算も出来ますよ」<br>
　白髪男は皆の顔を見渡しただけでその説明はしなかった。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「親父らの行った日は違う日やった言うことか」<br>
　寝ころんだまま勇一が言う。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「断定は出来ません。古文書に書かれている神無月が、今ここで私達が特定した満月とちゃんと合っているかどうかはわりません。まあ一月二月のずれはあっても、とにかく神無月の頃には違いないでしょう」<br>
　白髪男はそう締めくくった。</span></p><br>
<br>
<p><span style="color: #ffffff;font-size: 1.4em;">「神無月の頃」<br>
　と、浩也は白髪男の目をしっかりと見返した。</span></p><br>
<br>
<br>
<br>
<font color="#EE82EE">ガバチャのひとり言<br>
<br>
　つむじ風剛右衛門が考え出した「山立て」を図にすると以下のようになる。<br>
　友が島の地の島と沖の島の隣り合う場所でかがり火を焚き、それが重なるように船を南進（図では下側）させ、和歌山城の上空に神無月の満月が乗ったところで宝を海中に放す。</font><br>
<div align="center"><a href="http://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/8/a/8adea368.jpg" title="8adea368.jpg" target="_blank"><img src="http://livedoor.blogimg.jp/gabacha123/imgs/8/a/8adea368-s.jpg" width="570" height="427" border="0" alt="8adea368.jpg" hspace="5" class="pict"  /></a><br /></div><br>
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<font size="5"><font color="#FF0000"><a href="http://ameblo.jp/hfgayu/" target="_blank"><font size="6"><font color="#FF0000">超燃える鮎友釣り</font></font></a></font></font>　もヨロシク<img src="http://stat.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/187.gif" alt="グッド！" /><div align="center"><br>
]]>
</content:encoded>
</item>

</rdf:RDF>